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モノガリのユディ  作者: ササユリ ナツナ
第三章 ろくにん
102/137

21調達屋のラルフ

 夜にはキャンプを張り、野営をする頃になると、ラルファシアンはすっかりユディたちに懐いていた。

 騎乗鳥のジュニは、疲れていたのか、足を畳むようにして既に眠りについている。


「なーなーユディっちーリコっちー、もういっそ旅人なんてやめて、俺っちと一緒に調達屋やろうぜー。あてどなくさすらうよりも、目標あった方がやり甲斐も出るしさー」


 ユディは申し訳なさそうに首を振る。


「ごめんラルフ。実は僕、旅人じゃなくってさ、…モノガリってわかる?」


「おおっ?」


 ラルファシアンは、一瞬目を丸くすると、すぐに頷いた。


「あーあー、なるほどなー! 知ってる知ってる、最近になって結構話題に上るようになってきたんだってなー?」


「…えっ、そうなんだ?」


 今度はユディが目を丸くした。

 リコリネは、枯れ枝を折って火にくべながら、静かに二人の話を聞いている。


「んん、ここ十年くらいでちょこちょこと目撃例があるっつーか、都市伝説みてーな? ほら、あれと一緒だ、聖女が率いる希望のキャラバンとか、圧殺鎧鬼ってヤツとか。特に圧殺鎧鬼なんて、一撃で海賊船をやっつけただの、かなり尾ひれ背びれがついてるじゃん? 本当に居るかどうかも怪しいさー」


「……なるほど、ついに本格的な都市伝説になりましたか……」


 リコリネが、フルフェイスの中で遠い目をして呟いている。

 その小さな呟きには気づかずに、ラルファシアンは話を続けた。


「俺っちが聞いた話だと、モノガリって、最近はこのこうの大陸でも存在を聞くようになったとか。つっても、俺っちがいっちゃん最初に聞いたのは、母ちゃんからなんさー。母ちゃんも、むかーしに一回会ったことあるとかって言ってたから、他のヤツよりかは存在を信じてるさー」


 ラルファシアンの言葉に、リコリネが納得するように頷いた。


「なるほど。私が会ったモノガリは主だけですが、考えてみれば、主が里を出る前にも、何人ものモノガリが外の世界に出ていたのでしょうからね。そう思えば、特におかしな話でもありません」


「あ…そっか。なんとなく、自分一人だと思ってたよ」


 ユディは思案気に顔を伏せながら、ラルファシアンの話を聞き続ける。


「なんにせよ、レアな職業だって話にゃ変わりねーってことだろー。いいよなー、俺っちも調達屋のライバルとか、特に必要ねーのに!」


「ふふ、今や人気の職業ですからね。しかしラルフ殿、裏を返せば、その中でナンバーワンになるということは、相当な腕前であるとの証明にもなります。腕の見せ所ですよ」


「うおお、マジだ、リコっちはやる気出させるんが上手いよなー。母ちゃんはケツ蹴っ飛ばしてやる気出させるタイプだから、リコっちみてーなのは新鮮さー」


「ありがとうございます、私もそのような褒め方をされるのは新鮮です。ところでラルフ殿、モノガリを知っているならば話は早い。調達屋の情報網で、何か変わった話や妙な噂をご存じではありませんか?」


「おおっ? そうさなー。…シゼネントパレイって集落は知ってっかい?」


 ラルファシアンは、間髪入れずに話し出す。

 ユディがリコリネを窺うと、リコリネは頷いて説明を始める。


「シゼネントパレイは、墓石に適した石材を産出する岩山を有した集落です。集落は、初めに集落を作り上げた代表者の名前がそのまま使われます。その性質上、かつては死人の国に通じる扉があると信じられており、墓守の一族が、その扉を守っているとか」


「そう、そこそこ! 俺っち、いわゆる『流し』だから、前にそこで調達の仕事を受けたんさー。そしたら墓守のおっちゃんが行方不明になったとかで、一時期騒然としてたんだけど、ある日突然戻ってきたらしいんさー。けど、口がきけなくなったとかで、結局何があったかはわからずじまい。ただ、そのおっちゃんの家族はよかったよかったって喜んでたなー。以上」


 ラルファシアンの言葉に、ユディは首をひねる。


「…? すぐにその話が出てきたってことは、ラルフはその話を妙な話だと思ってる…?」


「いんや、めでたしめでたしって思ってるさー。ただ、実はさ。前に全く同じことを聞かれた時に、必死にそれっぽい話を探して、今と同じことを言ったんさ。だからパっと出たってワケ」


「同じこと…ですか?」


 今度はリコリネが首を傾げる。


「そそ。あれは、ララ木材の調達を依頼された時かなー。ちょっとしたポカをやっちまって、崖から川に落っこちそうになったんだ。そしたら、血相変えたおっちゃんが助けてくれてさー。そのおっちゃんが、今と同じ質問をしてきたってワケ」


「おっちゃん?」


 ユディが言葉を繰り返すと、ラルファシアンは首を振る。


「いんや、実際んとこ、髪はぼさぼさで顔は見えねーしで、おっちゃんかどうかは知らねーんだ。けど少なくとも俺っちよりは年上だったから、おっちゃんって呼んでんだ。名前も教えてくれなかったしさ。俺っちが礼をさせて欲しいって言ったら、その情報だけでいいって、さっさと去っていったんさー」


「なんでしょう…気になるような、些細な出来事のような」


「うーん。リコリネ、シゼネントパレイは、通り道?」


「ああ、はい。そうですね、多少は回り道になりますが、酵母の村に行く途中にあります」


「じゃあ、とりあえず近くまで行ってみようか。ってことで、今日の所はいいんじゃないかな」


「さすがです主、情報の取捨選択がお上手ですね」


「ほらリコリネ、また大袈裟になってる…」


「いいなーユディっち、俺っちもリコっちみてーな、何でも褒めてくれる部下とか持てるようになりてーさー!」


「ラルフ、リコリネは部下とかじゃないから!」


「はい、手下です」


「リコリネ!?」


「冗句です、冗句ですよ、主」


「ぎゃっはっは!」


 腹を抱えて笑うラルファシアンに釣られるように、結局リコリネもユディも笑ってしまった。



-------------------------------------------



「ハアアアアアアッ!!」


   ドゴオオオンッ!!


 林の中で、リコリネが金棒を一振りすると、木食巳モクバミという蛇が一撃のもとに星になっていく。

 とげ付きの金棒の形にへこんだ皮膚が、大変痛そうだ。


「うおおおおおっ、すげーさー…!! 香木採取で、木食いのモクバミは一番の大敵だってーのに…!」


 ラルファシアンが、感動しながら蛇の行く末を見送った。


「リコっち、あんがとなー、昨日の夜は黒虎も倒してもらったし、もう護衛代を払うべきなんじゃねーかって思えてきたさー」


「いえいえ、この程度、手弱女たをやめの嗜みですからね。お気になさらず」


「そっか、タオヤメってすげーんだなー!」


「リコリネ、適当言ってラルフが間違って覚えたらどうするんだよ!?」


 ユディは他所様の子の教養を大事にしている。

 ラルファシアンは、残念そうに騎乗鳥の羽毛を撫でた。


「あーあ、林を抜けたら職人の街かー。やっぱリコっちたちとここでお別れはキチーさー。ジュニのためにも、安全に旅ができるのはかなりありがてーってのに。でも仕方ねーよな、ユディっちには使命ってのがあんだから…」


 ユディたちは、また林を進みだしながら、話を続ける。


「ラルフ、普段はどうしてるの?」


「そりゃ逃げる一択さー。対応しようと思えばできっけど、調達したブツを抱えてちゃ、なかなかなー。ま、俺っちにはジュニが居るから、まだマシな方だとは思うさー」


「そっか…。何かアドバイスできればいいんだけど、やっぱり本職のお母さんに比べたら、僕らで言えることなんてなかなかないんだろうなあ…」


「ユディっちは生真面目さー、他人の愚痴なんて流すくらいの気持ちで聞いておかねーと、そのうちへばっちゃうさー?」


「…ふふ、主、逆にラルフ殿にアドバイスをいただいてしまいましたね」


「うぐぐ…!」


 リコリネのまとめに、ユディは悔しげに唸って、ラルファシアンはまた腹を抱えて笑いだす。

 そんなこんなで、職人の街に辿り着いた。


「おっ、ラルフか、その顔だと、収穫は上々ってとこか?」


「ういうい、上々過ぎてそれなりに疲れてんよー、ちょっぱやで通してくれっと助かるさー」


 どうやら門番とは顔見知りらしく、にこやかに話が進んでいく。

 門番は、ユディたちの方に目を向けた。


「後ろの二人は…」


「俺っちの護衛に雇ったんさ、安全は保障するから、な、な、いいだろ? 俺っち早く白乳が飲みたくって溜まらねーんさー! もうバケツ一杯あっても足りねー!」


「はっはっは、坊やは白乳を卒業できねーってか、まあいいか、通ってくれよ! 依頼達成、おめっとさん!」


 ラルファシアンは可愛がられているらしく、門番に軽く頭を撫でられて嬉しそうにしている。

 そのままユディたちは、軽く会釈をしながら職人の街の中へと入った。

 しばらく歩くと、ラルファシアンは、騎乗鳥の手綱を握りしめ、色々な思いを振り切るように、勢い良く振り返った。


「じゃーな、ユディっち、リコっち! 俺っちはこれから依頼主んトコ行くさー。名残惜しいけど……」


「ラルフ、少しの間だったけど、ここまで来るのがあっという間に感じるくらい楽しかったよ。応援しかできないけど、調達屋の仕事、無理せずに頑張ってね」


「ラルフ殿。ジュニ殿は、ラルフ殿のような主が得られて、きっと幸せです。お二人の活躍が聞こえてくる日を、楽しみにしていますね」


「……ッ、……っ」


 ラルファシアンは、瞳を潤ませて、ユディとリコリネにしがみつくように抱き着いてきた。

 ユディもリコリネも、よしよしと、駆け出しの少年を元気づけるように撫でていく。

 人懐っこいのは、親元を出たばかりのせいもあったのかもしれない。

 そう思うと、ユディはちょっと、もらい泣きしそうになった。


 やがてラルファシアンは、パっと顔を上げ、笑顔を見せてくる。


「あんがとな、元気出たさ! 見てろよ、第二次調達屋ブームだか何だか知らねーけど、駆け抜けてやっからさー!」


 ユディは、驚いたように瞬きをする。

 ラルファシアンは、そのまま手を振って駆け出した。


「ユディっち、リコっち、元気でなー!!」


「あ、うん…!」


 急いでユディは手を振り返す。

 リコリネも、万感の思いを込めて見送っている。


 ラルファシアンの姿が見えなくなると、ユディは首を傾げた。

 リコリネが、心配そうに覗き込む。


「主、どうかされましたか?」


「あ、いや。さっき一瞬、何かが引っ掛かったような気がしたんだけど、何だったっけって思ってて…?」


「なるほど。思い出せないという話であれば、きっと大したことではないのでしょう。我々も宿を取って、今後の予定を詰めねばなりません。そうしている間に思い出せるかもしれませんよ」


「ああ、そうだね。ひとまず宿でリルハープを解放してあげないと、おおっぴらに喋れなくてイライラしてるだろうからなあ」


「まったくです~~。ですが、リルちゃんはラルフのこと、嫌いじゃありませんでしたよ~~!」


 胸ポケットから、小さな返事が返ってくる。

 ユディはよしよしと胸ポケットを優しく撫でてから、街の案内板の方に歩き出す。


 一度だけ、少年が去った方を振り返った。



-------------------------------------------



 翌日は、観光だ。

 リコリネはちょっと張り切っていて、率先してユディを案内している。

 ユディは、そんなリコリネが珍しく、思わず微笑みながら後ろをついていった。


「へええ、ガラス工芸って、香りの村にあった工房とはまた違うんだね?」


「はい。あちらは香水瓶などの実用品専門のようですが、こちらでは、小物やアクセサリなどのお土産品を主だって作っていますね。観光客向けに見学できるシステムもあるのですよ。ただ、あまりおススメはできません」


「えっ、なぜ?」


「物凄く熱いからです。ガラス工芸は、高熱と切っては切り離せませんからね。作りの甘い布程度なら、近づいただけで燃え上がります」


「ああ、それはダメだなあ、リルハープもリコリネも、熱いのに弱いし」


「む……。否定はできませんが、そのように弱点めかして言われてしまうと、反抗したくなりますね」


「ほらほら、無駄に負けん気を出さない。…あっ、あれは? 仮面だって!」


 ユディは通りの反対側に目を向ける。

 店頭には、色々な種類の仮面が陳列されていた。


「あれは、この街のイベントに仮面舞踏会というものがありまして、それで使ったりする仮面ですね。普通にお土産としても売っています。近くで見ると、意外に繊細な装飾がされているのですよ」


「へええ、面白いなあ! リコリネなんてその舞踏会に出放題じゃないか」


「さすがに全身鎧は入れないと思います。主に似合う仮面でも探してみましょうか」


 二人で仮面を見ながら、ワイワイと盛り上がる。


「硬の大陸って、あんまり観光のイメージがなかったなあ」


「そうですね、わりと近年になって、こちらの方面に力を入れた感じです。それまでは、武器、宝石や鉱石類、顔料などの産出で有名なくらいでしたね。最近は奴隷解放がありましたから、働き手も潤沢にありますので、今一番勢いがある大陸と言えるでしょう」


「あ、そっか…。治安とか、悪くなってないみたいでよかった」


「はい。ガッディーロはそこにかなり力を入れましたからね。霊樹の村という、ちょうど過疎化していた村もありましたし、相当駆けまわって受け皿を探しましたね。まあ、駆けまわったのは私ではなく、弟ですが」


「え? ひょっとして、弟さんはもう当主になったんだ?」


「……ああ、言っていませんでしたか。まあ、そういう流れです」


 急にリコリネが言いづらそうにしたので、ユディはその辺りを追求するのはやめておいた。

 先日会った、使者のアイネクライネが、機密事項という単語を口にしていたのを思い出したからだ。

 ユディは、ぽつりと言葉をこぼす。


「……あんまり、実感として感じたことはなかったんだけど。そう聞くと、リコリネは本当に身分違いのお嬢様なんだなあ…」


「いえ、そんなことは! もはや私は放蕩の身ですから! そんな寂しいことを言わないでください!」


 リコリネが慌てたように言葉を被せてきたので、ユディはちょっとびっくりした。


「…ごめん、寂しかった?」


 リコリネは、ハっとしたように身を引いた。


「……知りません。主はやはり意地が悪い」


 怒ったように歩き出すリコリネを、ユディは慌てて追いかける。


「ごめんってリコリネ! ほらほら、飴細工の屋台だって! リルハープのお土産に買っていっていいかな!?」


 その日は一日中、拗ねたリコリネの機嫌を取り続けた。



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「本当にもう出立で大丈夫なんだね? リコリネ、体調は? 前みたいに無理するのはダメだからね?」


 出立当日の朝。

 リコリネは酵母の村へ、少し予定を変更した旅程の報告書のような手紙を送り、準備万端だ。

 ユディが念を押すように聞くと、リコリネは拳を作って応じる。


「もちろん大丈夫です、今ならば、千年亀の甲羅すら握りつぶせますよ!」


「う、うん、ほどほどに握りつぶそうね」


 まあ元気そうだなと判断する。

 街を出ながら、リコリネは思い出し笑いをした。


「ふふ、しかし白乳に特別な思い入れができてしまいましたね」


「ああ、そうだね、僕もついたくさん頼んでしまったよ。考えてみれば、シュレイザって好き嫌いがないというか、食に頓着しない方だったから、ラルフみたいに好みがハッキリしてるのって新鮮だったなあ」


「主がそれを言うのは面白いですね?」


「…あ、そういえば僕も食べれるものなら何でもよかった!」


「リルちゃんは甘いものが好きです~~!」


「私は腹に溜まるものが好きですね」


「今更改めて言われなくても知ってるよ! ただ、この中では僕が一番上手な食レポができるんじゃないかなあ。ほら、こだわりがない分、冷静に判断できるっていうか」


「む……。いいでしょう、受けて立ちます。酵母の村は酒類だけでなく、酒に合うパンやチーズも名産です。そこで食レポ勝負といきましょう!」


「リルちゃん、今から勝負の行方がわかる気がします~~…」


 わーわー言いながら、シゼネントパレイへの道を行く。

 話題は次第に、口のきけない墓守とどう接触を取るかという話になっていった。


「そもそも集落って、僕らみたいな旅人が立ち寄ったとして、警戒されたりしない?」


 ユディの問いに、リコリネは思案気だ。


「そこはやはり、その土地によりけりですね。仄聞そくぶんですが、シゼネントパレイは若干排他的ではあります。墓掘りの集落だと揶揄されてきた過去がありますからね」


「うーん、難しいなあ。精霊教の使者設定をまた使ってみるっていうのは?」


「リルちゃんはあんまりおススメできません~~」


「聞こうか」


「今までは運よく大丈夫でしたが、迂闊にそういうのを名乗った場合、ガチ勢が居た時に詰むのですよ~~! 例えばご主人サマが、『フェンネル英雄譚のファンです』と名乗ったとします~~」


「うんうん」


「ガチ勢はですね~~、『○ページの○○行目の○○っていうセリフ、最高じゃない?』みたいなことを普通に言ってくる人々です~~っ」


「うわそれキツイな! 何がつらいって、自分がニワカだと思い知らされるところがキツイ。そこまで熱中できる人は素直に尊敬できるんだけど、自分はそこまでじゃなくてスミマセンって気分になる…!」


 ユディとリルハープのやり取りに、リコリネは首を傾げた。


「精霊教のガチ勢は、どのような感じなのでしょうね? 見たことがないので全く想像できません。そもそも存在するのかどうか…。教団など作らずとも、精霊様の存在は誰もが信じ、感謝をささげていますからね。なにせ、実際に祝福を頂いているわけですし」


「そうですね~~。何か捧げましょう、試しに命を~~って言ってくるかもしれませんよ~~!」


「リルハープって結構、偏見で物を言うからなあ……。まあでも、やめとこうか。ラルフがお世話になったって言ってたし、普通にラルフの名前を出して、後は誠意を尽くそう」


「正攻法ですね。主にはその方がお似合いだと思われます。これも、偏見なのかもしれませんが」


「僕らしさかあ…。ありがとう、って言っておこうかな。なんとなくだけど、最近ちょっと、僕らしさっていうのがわかってきた気がするんだ。自分にとって負担のない選択をするのが、らしさって感じがする。まだちょっと、ぼんやりとしてるけどね。そのうち、揺るぎようがない確固たる自分とかができたりするのかなあ…」


「応用が利くという意味では、まだまだふわふわとしていてもいいような気もしますが。しなる枝は、折れにくいとも言います」


「そうかもしれないね、まだ折れるわけにはいかないから」


 なんとなく、空を見上げる。

 翡翠色の空に、様々な形の雲が浮いていた。


「モノノリュウは、あれくらいの大きさなのかな……」


 みんなで空を見上げる。

 そう口に出して、初めて、モノノリュウ自体に思いを馳せたことに気が付いた。

 何故だか今まで、それを避けていた気がする。

 なぜなのかは、そこからどう考えても、わからなかった。




 数日後。

 シゼネントパレイが見えてきた頃、ユディは前方を睨みつける。


「…居るね。モノオモイの気配だ」

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