1ミリも野球知らないけど窓ガラスを割りました
しろうとはらっぱ01。
初心者プレイヤー向けに作られた草野球フィールド。
青空、土のグラウンド、ボロいフェンス。
そして外野の向こうにはなぜか民家が並んでいる。
なんで?
危なくない?
「まずはチュートリアルからだね!」
翼が空中ウィンドウを操作する。
目の前に半透明の画面が現れた。
【VR BASEBALL ONLINEへようこそ!】
【まずは能力値を設定しましょう!】
おお、ゲームっぽい。
ちょっとテンション上がる。
【初期ボーナスポイント:100】
画面には色んな項目が並んでいた。
・筋力
・脚力
・ミート
・守備
・捕球
「多っ!?」
「だ、大丈夫だよ!たぶん!」
たぶんで済ませるな。
あたしは腕を組む。
野球は知らない。
でも、さすがにこれくらいは分かる。
「遠くに飛ばしたら偉いんだよね?」
「た、多分?」
翼が自信なさげに頷く。
だったら簡単だ。
遠くに飛ばせばいい。
遠くに飛ばすには筋力だ。
あたしは筋力の欄にポイントを全投入した。
【筋力:101】
【脚力:1】
【ミート:1】
【守備:1】
【捕球:1】
警告音が鳴る。
【警告】
【極端なステータス配分が確認されました】
【このビルドは初心者に推奨されません】
「なんか怒られたんだけど」
「だ、大丈夫大丈夫!」
翼はなぜか脚力に全部振っていた。
【筋力:1】
【脚力:101】
「翼も大概じゃない!?」
「だって走るの好きだし……」
「そんな理由!?」
だめだ、翼は頼りにならないかもしれない。
設定を終えると、二人はグラウンドに転送された。
手には木製バット。
頭にはダサい野球帽。
ユニフォームには初心者マーク。
「うわぁ……ほんとに野球場だ……」
その時だった。
【チュートリアル:ボールを打ってみましょう!】
機械音声と共に、ピッチングマシンが動き始める。
シュッ。
白球が飛んできた。
あたしは慌ててバットを振る。
ブォン!!!!
「わっ!?」
空振り。
でも風圧だけで砂が舞った。
近くにいた初心者プレイヤー達がざわつく。
「今の音なに?」
「バット振っただけ……?」
もう一球。
シュッ。
ブォン!!!!
空振り。
「当たらないんだけどこれ!!」
「百花!がんばれー!」
三球目。
シュッ。
ブォ―――――ン!!!!
ゴッッッ!!!!
一瞬だった。
ボールが消えた。
「え?」
次の瞬間。
パリーーーーン!!!!
遥か外野の向こう。
民家の窓ガラスが割れた。
グラウンドが静まり返る。
え。
え?
数秒後、けたたましい警報音が鳴り響いた。
【フィールド外への打球を確認】
【オブジェクト損壊判定】
【ユニークアクション達成】
「ユニーク?」
ウィンドウが虹色に輝く。
【称号≪ジャイアン≫を獲得しました】
【取得条件】
しろうとはらっぱ01にて場外ホームランを放ち、民家オブジェクトを破壊する
【効果】
筋力+15
威圧感+5
ガラス破壊補正+30%
「最後のやつなに!?」
「ひっ……!」
周囲の初心者プレイヤー達が一歩下がる。
「い、威圧感上がってる……」
「初心者だよねあの人……?」
「打球見えなかったんだけど……」
翼だけが目をキラキラさせていた。
「すごいよ百花!ホームランだよホームラン!」
「いやなんか家壊しちゃったんだけど!?」
その時。
【運営からのお知らせ】
【現在、民家オブジェクトの耐久値設定に不備が確認されています】
【修正までしばらくお待ちください】
「絶対あたしのせいじゃん!!」
しろうとはらっぱ01に、再び百花の絶叫が響き渡るのであった。




