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たくさんのおみやげ  作者: 朝山 みどり


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07 ご近所さん

山本さんの家の前を通るたび、いつも気になっていた。

数年前までは、家の庭から子どもたちの声が聞こえていた。

奥さんの笑い声も時々、塀越しに聞こえたものだった。

それが、ある日を境に、静かになった。

山本さんは口数が減り、静かに庭の手入れをしていた。

「大丈夫なんだろうか」

ご近所の誰もが、そう思っていた。

そんなある日、山本さんの家に犬がやって来た。



まだ小さな子犬だった。山本さんは庭で戯れていた。

やがて、山本さんの表情が少しずつ変わった。

散歩の途中、ご近所さんと顔を合わせると、犬の話をするようになった。

「こいつ、庭で跳ね回ってばかりでな。もう少し落ち着いてくれればいいんだが」

そう言いながらも、山本さんの顔には微笑みがあった。

「山本さん、元気になったわね」

誰かがそう言うと、透さんはふっと笑った。

「まあな。こいつがいると、話し相手ができる」

ご近所の人たちは、ほっと胸を撫で下ろした。

山本さんは、また庭で楽しそうに犬と過ごしていた。

そして、その様子を見守る誰もが、少し安心していた。


「山本さん、うちの犬も一緒に散歩しませんか?」

近所に住む佐々木さんが声をかけている。

彼も犬を飼っていて、散歩の時間がかぶることが多かった。

山本さんはふっと笑い、犬のリードを握り直した。

「そうだな。こいつ、仲間がいるともっと歩くかもな」

それから山本さんは、他の犬の飼い主たちとも自然と交流するようになった。

「最近、うちの犬が歳をとってきてな」

「温泉行ったことあるか?犬用のやつがなかなかいいぞ」

散歩の途中で交わされる、何気ない犬談義。

山本さんの表情は、数年前の暗さからすっかり変わっていた。


佐々木さんの犬が死んだ。具合が悪いと聞いて皆が心配していた所だった。

佐々木さんの家の庭が静かだ。

いつもそこにいた犬の姿がない。

日向ぼっこをしながら、穏やかに尻尾を揺らしていたあの子が、もういない。

佐々木さんは、縁側に座っていた。

慰める言葉はなかった。


山本さんが佐々木さんを慰めていた。


「死んだ者はどこにもいない。でも、思い出は残る。庭のどこにいたか、何をしていたか、それは消えないんだ」

山本さんは庭を見渡すようにしながら続ける。

「あの子は、ここで何をしてた?」

佐々木さんは、小さく息を吐いた。

「・・・いつも、あの角で昼寝してたな」

山本さんはふっと笑う。

「だったら、まだそこにいるさ」

佐々木さんは、しばらく黙っていた。

それから、ほんの少し、目を細めた。

「・・・そうかもしれないな」

風が吹く。庭の草木が、静かに揺れていた。



誤字、脱字を教えていただきありがとうございます。

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