回復
それに、飲み終えたペットボトルがデスクの上に十本くらい乱雑に置かれている。
今まで何度もシュンの家を訪れているがこんな状態は初めてだった。
スーッと、シュンの寝息が聞こえたのはその数分後だった。
俺は皆の元に戻った。
「秒で寝たわ。シュン」
***
その後、シュンを除く四人で、シュンの話を元にヒカリという女について話し合った。
「シュンの精神状態がおかしくなって・・ヒカリっていう妄想を抱いてしまったとか?」
結果、ヒカリという女は、存在しないシュンの妄想だったのだ、という結論に至った。
**
数分前の出来事を回想しながら、俺は自転車を走らせる。
シュンのやせ細った姿。
首に包丁を当てた姿。
泣き出す姿。
包丁を止めることができて良かった。
あと、数日、数時間。数分、数秒遅かったら・・。
シュンはヒカリという女に殺されていた。
というより、シュンは自分を、自分で、殺していた。
そう思うとゾッとして、寒気がした。
**
俺は家に着き、マイに電話をかける。
『電波の届かないところにおられるか、電源がはいっていないため
お繋ぎできません。』
大丈夫か?。シュンの姿が浮かんだ。
まさかマイも・・。
そう思った瞬間にライン通話の着信が鳴った。
スマホの画面には【マイ】と表示されてる。
「マイ?」
俺は素早く通話ボタンを押した。
「ユウスケ?ごめん!連絡できなくて。実家にスマホ忘れちゃってて」
「なんだよ。心配したよ」
俺は涙が出そうになっていた。
マイの存在を、マイのいる生活を俺はこんなにも必要としていたんだな。
「ごめんごめん。私もスマホ無くしたと思って本当焦った。見つかって良かったー」
***
その日から四人でシュンをサポートしようということになり、俺はシュンとランニングをしたり、山を登りに行ったりと、運動を共にするようになった。
シュンの顔色は日に日に良くなり、最近、栄養価の高い食事を心がけているそうだ。
一緒にランニングをしている時は数週間前のシュンが自殺しようとしていたなんて信じられないくらい、健康的な顔つきになった。
俺はそんなシュンを見て本当に良かったな、と心の中でシュンに語りかける。
「よし、後三週するか」
シュンはそう言って俺の前を走って行った。




