ミレーという弟
短いです。
おらの前には目が覚めるような美少年がいる。
見てるだけでドキドキしてしまうほどの美しい顔立ちだ。
それもその筈だ、だってこれは妖精女王だった美少女が男に擬態している姿だから。
胸も膨らんでないし、肩や腰も手足も、どう見ても男の体つきなんだ。
「どうして男の姿なんだ?」
「女の姿だったら、ミッキー君が好きになってしまうだろう?
つまり僕を奥さんにしたくなったら困るからね。
僕はどんな男とも結婚できないし、子供を産む訳にはいかないんだよ」
「じゃあ、何故おらと一緒に旅をしようとするんだ?」
「僕は家族が欲しいんだ。
心が綺麗で善良で心温かい家族が欲しい。
でも、弱い家族じゃ駄目だ。
簡単に殺されるような者は駄目なんだ。
かといって戦闘狂は困る。
できれば人と争ったり殺しあったりするのを避けたがる人が良い。
だからと言って、必要なときに人を殺せないようじゃ困る。
この基準に君がピッタリなんだよ、ミッキー」
「勝手に決めるなっ」
おらはミレーの胸倉を掴んだ。
ミレーは綺麗な目でおらを見た。
「僕を殴れるかい、ミッキー?
君は僕を殴ったりしない。
そうだろ?」
その通りだ。
おらにはミレーを殴ることなんてできない。
おらの腕の力が抜けて、彼を放した。
「わかった。で、何をしたいんだ?」
「何も。ただ君と一緒に旅をして必要な時は助けたい。
何か君の為にできることは何かを見つけて、それをしてあげようと思う。
その代わり君は僕を家族のように……家族として認めて欲しい。
急にとは言わない。たとえば弟として扱って欲しい。
そうだ。恋人にはなれないけど、妹になっても良い。
でもまだ当分は弟かな?
女の子の姿はなにかと旅では厄介だからね」
おらは考えた。
ミレーは一緒に旅すれば心強い。
人間じゃないけれど、人間みたいだから邪魔にならない。
生い立ちを考えれば家族を欲しがる気持ちはよくわかるし、おらを騙したり困らせたりはしないだろう。
「分かった。一緒に行こう。
だが不思議だな」
「なにがだい、ミッキー?」
「ミレー、君は行きたいと思えば世界中どこにでも行けるだろう。
なぜ普通に旅する僕と一緒に行こうとするんだ?」
「そうだね風船って知ってるかい?」
「聞いたことあるような……なんだよそれは?」
「とっても軽くて丸いフワフワしたものさ。
風が吹くと簡単に飛んで行ってしまうんだ」
「ふうん、それがどうかしたのか?」
「だから飛んで行ってしまわないように糸をつけてしっかり先っぽを持っているんだよ」
「はあ?」
「わかんないかなあ?
つまり僕は風船で、君はそれが飛んでいかないように縛っておく糸なんだよ」
「さっぱり意味が分からない。
もうどうでも良い。行くぞ」
歩きかけておらはもう一つ聞きたいことがあったことを思い出した。
「なあ、ミレー。どうしてウェンディを妖精女王にしたんだ?」
「ああ、あの子は妖精たちを心から愛して大切にしてくれてたからさ。
実は僕が妖精女王になったのは行きがかり上のことで……妖精たちを守っていたのは義務感からなんだ。
僕が女王をやっていても幸せにはなれない。
だからウェンディの方がずっと向いてるんだよ。
彼女はきっと幸せだと思う」
「お前の言うことはなかなか分かりづらい。
でもなんとなくわかった。
でも家族ってどうすれば良い?
友達とどう違うんだ?」
「君にはサムという優しいお兄さんがいたろう?」
「ああ、よく知ってるな……ってお前にはそんなことすぐ分かってしまうんだよな」
「ごめん。で例えばサムが君にしたように僕にしてくれればそれで充分だよ。
可愛い弟だと思ってくれればいいさ」
「といっても殆ど年が変わらない気もするけどな」
「でもこれ以上幼くすると旅をする上で色々不便だよ。
だからこれで我慢してくれよ。
その代わり可愛がってもらえるように、かわいい顔にしてるんだから」
「よく言うよ。だけど気をつけろよ。あまりかわいいと女からも男からも目を付けられるからな」
「そんなときはミッキー、君が守ってくれよ」
そう言われるとドキッとしてしまう。
こいつの破壊力は恐ろしいな。
おらは顔をそむけて言った。
「行くぞ」
「うん」
続きます。




