2章 4話 リフォーム開始
ニコールとのお店のコンセプトを詰めた。
地下の居酒屋はお綺麗な貴族が好きなコンセプトから反対方向の『ドワーフ居酒屋』というコンセプトに決めた。
ワイワイ仲間と騒いで飲める肩肘張らないくつろげるスペース。
しかし、客層は金持ち、いわゆる上級冒険者、騎士、文官、領地持ちの領民との関わりの多い貴族にする。
そこそこ品があり、味と酒で勝負する店。
次に一階だ。
スイーツショップ。
いわゆるケーキ屋さんだ。
客層は付近一等地の貴族や商人、高給取りのお嬢様、奥様方、あとは観光客。
不思議なアリスの世界にでも来たかのような可愛らしい空間。こちらの世界の人は不思議のアリスなんて知らないけど。
そして、厨房はあえて見せる。清潔さと安全性の演出だ。珍しさも相まって、それだけで話題になる。
その次、2階。
カフェ。
一階の生菓子と共に、コーヒーや紅茶を提供する。内装は王都とは切り離された南国のリゾート風。ここにいるだけで、どこか遠い場所へ来たような錯覚を与える。
夜にはバーにし、コーヒーリキュールを使ったアルコールなどを出させる。
そして、屋上。
カフェのテラス席。
2階のカフェのコンセプトのままにテラスを作る。
パラソルは設置しない代わりに席の上にルーフを設置する。
外周には安全確保のために胸までの高さの手すり。
そして、1番の目玉の勇者の斬撃跡の残る壁。これを補強し、周囲の壁をマーブルで黒い御影石様にデザインで囲う。
これらのコンセプトの元、俺たちの仕事は始まった。
それからの数日は、地獄のように忙しかった。
四階はすでに削り済み、三階の床と一部の壁をのこす。もちろん、俺が昔作った棘は消し去り、なだらかにする。二階と一階は木材でできた壁、フローリングを取り外す。木材は骨組みだけしか残らない。石材などの土から作れる物はいくら残しても大丈夫。俺の魔力が足りればなんとでもなる。
地下一階は、これは本当に俺だけの力技。
うっかり土を先にどかしたら建物は倒壊する。
それに基礎も既にある物件だ。
魔力を注ぎ、基礎をそのまま地中に伸ばしていく。
見えないものに魔力を注ぐから、力が安定しないし魔力も多く使う。基礎とその土を同化させながら基礎を伸ばす。力を間違えると基礎が脆くなってしまう。丁寧さを求められるけれど魔力は一気に放出される。基礎が深くなればなるほど、難易度が上がる。
その作業中、ゴンザレスは一階の作業を進めていく。メンヘル、いやメルヘンな空間なので、タイルよりもフローリングが似合うだろう。2階、3階は南国リゾートだからもっと木材が必要だ。かなりの木材が使われるな、とお金の計算が瞬時に始まる。だいたい、13万ゼニーくらいだろうか。
ばきり
地面の奥から嫌な音が聞こえたような気がした。急いで修正をかける。
今は金のことは忘れて、基礎を伸ばすことに集中しよう。
ほんの少しの狂いもなく、己のできる最高の頑丈な基礎に作り上げる。
基礎を伸ばす作業は数日かかった。
後は比較的に簡単だ。土を抜いて空間を作り、外周の土を石材の壁に作り替える。
ドラゴンブレスすら通さない頑丈な硬さに変え、見た目もミステリアスな洞窟っぽい色合いの黒に近い藍色に変える。
ふとそこで、この地下一階の図面は用意されていないことに気がついた。
そこで昔に行ったことのあるカウンター席のある日本料理店風居酒屋の構造を思い出し、石壁で作っていく。
「居酒屋といえば……掘りごたつだよな」
掘りごたつを石壁を組み立てて作り上げ、
「足元、あったかいといいのに……そっか、前みたいに魔法陣を刻めばいいのか」
夏場は25度、冬なら30度くらいになるように、文面を考えて刻んでいく。
一週間後、ニーナが顔を出してきた。
「地下の居酒屋の完成予想図を描いてきたわ」
「えっ、完成予想図あるの?」
俺は冷や汗が出てきた。
「ちょっと遅れたけれどね。とりあえず、地下の空間はできたのでしょう? そこに行って直接見せるわ」
「いや、ここでいいんじゃないかな?」
「もしかして……リファ……とんでもない破壊をした?」
ニーナはさーっと血の気の引いた顔色になる。
「ま、まあ、そんなところだ。でも、魔力を注げばすぐに直せる。完成予想図だけ置いていってくれたら、あとは土魔法で作れるものは作っとくよ」
「リファ……あなた……何かとんでもないこと隠しているでしょ」
ズカズカとニーナが歩みを進めて地下へ通づる階段を進む。
「ち、違うんだ。その、勘違いしていたんだ。俺にドワーフ居酒屋というコンセプトで作って欲しいということだろうと思って、勝手に……」
ニーナの振り返る顔が、本気で引いている。
「えっ……じゃあ作っちゃったの!?」
デザイナーの案を無視して作ったなんて、とんでもないミスだ。
「ま、まあ、そういうこともあるわよね。でも、全部土魔法で作ったやつでしょ?」
「ああ」
「なら、なんとでもなるわよ」
階段を降り切って、ニーナの一言は……
「うわー。酷いセンスね」
そう言われると思った。自分がやってないデザインには容赦ないのだ。
「なんていうか、形は凄くいいのにチグハグ。この空間なら石素材の床じゃなくてフローリング、木製のカウンターテーブル。使う木材はチークより黒っぽい、ブラックウォルナットがいいわね。
それに壁は藍色一色よりも黒い漆喰の方がいいかな。藍色は……青色系は気持ちを冷静にさせ、食欲を落としちゃうのよ。お客さんがお金を落とさなくなるわ」
はっきりと言われると意気消沈する。
力がごっそり抜けて肩から力が抜ける気がした。
「完全に全部が悪いわけではないわ。もったいないのよ。色をなんとかして、東洋風に内装を整えれば十分いけるわ」
そう言いながらツカツカと室内を歩き個室の前で立ち止まり、壁や床、天井を順に確かめるように視線を走らせてもの珍しそうに見つめた。
「ところで、この個室の座席はなに?」
「掘りごたつだよ。見たことないか? こういう席、すごく落ち着くし、靴も脱ぐから足も楽。足元には保温の魔法陣、夏は25度、冬は30度に設定して刻み込んだ」
「初めて見るわ……こういう視点が低くて足元が温かいのはいいわね。ドワーフ……洞窟っぽい。ニコールに提案してみましょう」
俺は浮かび上がる嬉しさを抑えるため拳を強く握り、なんでもないような感じで、
「じゃあ、頼むよ」
とだけ答え、ニーナのアドバイスどおりの施工を開始する。
追加木材 ブラックウォルナット材 8万ゼニー分
ここまでの費用等
物件購入費用
41万ゼニー
資材購入費用
チーク材 13万4000ゼニー
ブラックウォルナット材 8万ゼニー
合計費用
62万4000ゼニー
販売予定価格
130万ゼニー
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