第56話 ムルル撃破
「なにを余裕ぶっこいてんのさ! アンタなんか、ベリト様の足元にも及ばない!」
「だろうな。しかし、オレには仲間がいる! それに、オレ自身も強くなる」
オレは弱い。だから工夫する。
「それはそうと、爪が割れてるぜ」
「ななっ!」
ムルルが、自分の爪を確認した。頑丈だったデコレート爪が、ボロボロになっている。
「そんな!?」
「バカみたいに、頼っているからだ!」
こんな長期戦を、戦ったことがないのだろう。
オレが施した細工に、引っかかったようだ。
さっきオレが腕を蹴ったのは、爪を破壊するためだ。
ナイフで腹を刺したのも、「わざわざムルルに破壊させるため」である。爪を壊せたら、OKだったのだ。
「爪がなくたって!」
自慢の脚力で、ムルルが跳躍しようとした。
「そら!」
空いた手で、円形シールドをフリスビーのように投げ飛ばす。
投げたフリスビーが、ムルルの軸足に張り付いた。
ムルルが、派手にすっ転ぶ。
ムリに相手が体勢を整えようとしたところに、オレはロングソードで斬りかかる。
「アタイを相手に、そんなショボい武器で!」
「これで十分さ」
お前に、アラマサはもったいない。
見た目はただの上級ロングソードだが、ドワーフのシュリが限界まで鍛え上げてくれたものだ。
斬ることはできなくても、「殴る」ことはできる。
「【天啓】!」
確定クリティカルを込めた重い一発を、ムルルのこめかみに食らわせた。
ムルルの身体が、宙に浮く。
「せめて、【ヒガンの技】であの世に送ってやる! 【空斬脚】!」
オレは、後ろ回し蹴りで、ムルルの首をはねた。
ムルルの身体は、消滅する。しかし……。
「クソ……」
やっぱりか!
『ミツル、無事!? 今、キナ子をそっちに送ったわ!』
「ああ。大丈夫だ」
オレは岩場に座り込んで、キナ子を待つ。
『お待たせいたしました、ミツルさん』
「いや、待っていない。それより、調査してくれ」
ムルルの消えた場所を、キナ子に分析させた。
『電子情報が、わずかに残っていますね』
「だよなあ。やっぱりアイツ、ただのアバターだったか」
ヤツが自身をバーチャルアバターと語っている時点で、イヤな予感はしていたんだよなあ。
『ミツル、どういうこと?』
キナ子を通して、マリエがオレに聞いてきた。
「オレはアバターの方と戦っていたってわけさ」
『本体は、別にいるってことね?』
「ああ。ソイツがバーチャルの身体を使ってオレに襲いかかってきた」
つまり本体は、「異世界側」にいる。
異世界ならば、地球の制約を受けずに、暴れまわれるわけだ。
「……ムルルの狙いは、異世界の住人だ!」
『ロニちゃんね!?』




