第57話 敵のボス、街に出没
「ロニ、聞こえるか?」
オレは、端末からロニに呼びかける。
「通じない」
マリエも、ギルド公式の通信網を利用した。結果は、同じ。
『やっぱり、なにかあったみたいね』
「ああ。どうりで、なんか弱い感じがしたんだよな」
本気を出していないような。
『ええ。あたしも不安に思って、対策はしておいたわ』
「対策?」
『ミツルもここを抜けて、あっちの世界に行ってあげて』
◆ 幕間 ロニの戦い◆
ロニは、母親と食事を終えて、街を散歩していた。
「地球の生活は、どう? 不自由してない?」
「大丈夫。案外、住心地はいい」
しばらくは戦闘のことを忘れて、母と久しぶりに会話を弾ませる。
「都会の生活は、孤独になるって言うけど?」
「ミツルたちが、よくしてくれるから」
「そう。後は結婚だけかしらね?」
母から茶化されて、ロニは苦笑した。
「全然、かな? 周りは、妻帯者ばかりだし」
「そうそう、ヴェロニカ。ネコ獣人のキャトレイちゃん、覚えてる?」
「うん……」
あの子とだけは、仲良かったなと、ロニは回想する。瓶底眼鏡を掛けた、ネコ獣人の少女を。
ゴーレムとホムンクルスの技術を専攻して、学歴もロニに次いで優れていた。
専門用語ばかりが出てきて、ロニにはチンプンカンプンだったのを思い出す。同じく戦闘寄りの魔法理論をぶつけ合ったことで、仲はよかった。
知的欲求が高く、ロニのヒガンに対する思いさえ、受け止めてくれていた子だ。
キャトレイの話題を出したとき、母はどうも沈んだ様子である。
「どうしたの?」
「実は最近、悪い男の人にハマっちゃったみたいなのよ」
「キャトレイが!?」
勉強熱心で、世界平和を真剣に考えているような子だったのに。
「ウソだ。キャトレイに限って、そんな」
男っ気なんて、微塵もなかったはずだ。推し活やアイドルからはまったく程遠い、研究しか頭にないような少女だった。それが……。
「仕事場で、うまくいかなかったらしいわ。そのときから、生活が荒れてしまったって……」
唐突に、ロニは足を止めた。何者かの、気配を感じる。
恐ろしいまでの殺気が、街を覆った。
こんな街なかで、モンスターが?
ギルドの端末が、けたたましく音を鳴らす。ミツルからだろう。
端末を、取ろうとしたときだ。
「おとなしくしてな、お嬢ちゃん」
いつの間にいたのか、ネコ獣人がロニたちの前に立っている。
「お母さん、逃げて!」
ロニは、母親を逃がそうとした。
ネコ獣人は、すかさず背後に回る。
早い。
「変な気を起こすんじゃないよ、お嬢ちゃん。いうことを聞けば、母親は帰してやろうじゃないか」
「あんた、キャトレイ!」
「その名で呼ぶな! ヴェロニカ! 今のアタイは、ムルルだ!」




