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世界にダンジョンができたせいでセミリタイアに失敗した男、冒険者になって無双  作者: 椎名 富比路
第五章 FIRE失敗民、最後の戦い!?

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第57話 敵のボス、街に出没

「ロニ、聞こえるか?」


 オレは、端末からロニに呼びかける。


「通じない」


 マリエも、ギルド公式の通信網を利用した。結果は、同じ。

 

『やっぱり、なにかあったみたいね』


「ああ。どうりで、なんか弱い感じがしたんだよな」


 本気を出していないような。


『ええ。あたしも不安に思って、対策はしておいたわ』


「対策?」


『ミツルもここを抜けて、あっちの世界に行ってあげて』

 

 

◆ 幕間 ロニの戦い◆

 


 ロニは、母親と食事を終えて、街を散歩していた。


「地球の生活は、どう? 不自由してない?」


「大丈夫。案外、住心地はいい」


 しばらくは戦闘のことを忘れて、母と久しぶりに会話を弾ませる。


「都会の生活は、孤独になるって言うけど?」


「ミツルたちが、よくしてくれるから」


「そう。後は結婚だけかしらね?」


 母から茶化されて、ロニは苦笑した。


「全然、かな? 周りは、妻帯者ばかりだし」


「そうそう、ヴェロニカ。ネコ獣人のキャトレイちゃん、覚えてる?」


「うん……」


 あの子とだけは、仲良かったなと、ロニは回想する。瓶底眼鏡を掛けた、ネコ獣人の少女を。


 ゴーレムとホムンクルスの技術を専攻して、学歴もロニに次いで優れていた。

 専門用語ばかりが出てきて、ロニにはチンプンカンプンだったのを思い出す。同じく戦闘寄りの魔法理論をぶつけ合ったことで、仲はよかった。


 知的欲求が高く、ロニのヒガンに対する思いさえ、受け止めてくれていた子だ。


 キャトレイの話題を出したとき、母はどうも沈んだ様子である。

 

「どうしたの?」

 

「実は最近、悪い男の人にハマっちゃったみたいなのよ」


「キャトレイが!?」


 勉強熱心で、世界平和を真剣に考えているような子だったのに。


「ウソだ。キャトレイに限って、そんな」


 男っ気なんて、微塵もなかったはずだ。推し活やアイドルからはまったく程遠い、研究しか頭にないような少女だった。それが……。


「仕事場で、うまくいかなかったらしいわ。そのときから、生活が荒れてしまったって……」

 

 唐突に、ロニは足を止めた。何者かの、気配を感じる。


 恐ろしいまでの殺気が、街を覆った。


 こんな街なかで、モンスターが?


 ギルドの端末が、けたたましく音を鳴らす。ミツルからだろう。


 端末を、取ろうとしたときだ。

 

「おとなしくしてな、お嬢ちゃん」


 いつの間にいたのか、ネコ獣人がロニたちの前に立っている。


「お母さん、逃げて!」


 ロニは、母親を逃がそうとした。


 ネコ獣人は、すかさず背後に回る。


 早い。


「変な気を起こすんじゃないよ、お嬢ちゃん。いうことを聞けば、母親は帰してやろうじゃないか」


「あんた、キャトレイ!」



「その名で呼ぶな! ヴェロニカ! 今のアタイは、ムルルだ!」

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