第50話 穏やかなひととき
オレは、富裕層を相手にダンジョンを巡る。
とはいえ、あくまでも付き添いだ。オレは一切、手を出さない。
ダンジョン探索では、いわゆる「パワーレベリング」は禁止されている。強い冒険者とパーティを組んで、高レベル帯のダンジョンを巡って、自分はなにもせずに経験値だけをもらう行為だ。
これでは危険性を知らないまま、ダンジョンを探索することとなる。いざというときに、臨機応変な対応ができない。
どんなに優れた装備を持っていても、初級ダンジョンからというのが決まりだ。
「ミツルさん! ゴブリンを、やっつけました!」
少年が、ナイフを掲げた。
「いいぞ。よくがんばったな」
家族連れ富裕層を相手に、オレはナビゲートする。
ベリトとの戦いまで、オレたちはダンジョンを満喫しようとなったのだ。
本格的にベリトと戦うことになったら、ダンジョンを楽しむ余裕なんてない。
ロニは久々に、帰省した。
オーゼも、家族サービスをしているという。
途中で、キャンプを行った。というか、これが旅の目的である。
「こんな開けた場所で、誰にも気をかけることなく焚き火をするのが、夢だったんですよ」
冒険者のリーダーである中年男性が、火をおこした。
「今の時代、どこでも焚き火は難しいですからね」
家でやろうものなら、苦情が来てしまう。
かといってキャンプ場は、混んでいるし。キャンプブームで、まだまだ人が多い。
「ここは場所さえ選べば、子どもを連れてキャンプができますからね」
「オレも、よくキャンプをしますよ。もっぱら、食いつなぐためですけど」
ダンジョンの現地で魔物の肉を食えば、税関に引っかからない。
それが原因で、かつては食用目当てで、魔物が乱獲されたこともある。
食い方がまだ確立されていなくて、みんな食用を断念したが。
「ジビエのようなもんですが、まだちょっとした知識が必要なんですよ」
「そうなんですね」
「オレも、最近知ったんですけど」
ロニから教わった、ちゃんとした魔物の下処理を、中年男性にも指導した。
「手に火属性の魔法を施して、肉の表面を軽く焼くんです。肉の表面に着いている、魔素を取り除かないと」
魔物の肉は、魔素のせいで食感が悪いのだ。
現地の人はそれを知っているため、魔法を使って火をおこして焼くのである。
「バーナーで、魔素は取れません。手でしっかりと、焼いてあげてください」
魔素は、魔素でなければ除去できない。
ロニに会わなければ、こんなこともわからなかったな。
「さあどうぞ」
少年に、ウルフの肉を差し出す。
「おいしいです。もっと、クセがあると思った」
「そうだろ? ダンジョンだって、バカにできないんだ」
純粋な子どもは、いいなあ。
どんなことにでも、興味を持ってくれて。
どうしてこんな子どもが成長すると、闇バイトとかに手を出してしまうかねえ?
帰宅後、オレはマリエを呼びつけた。
「どうしたのよ、ミツル?」
「マリエ。ベリトとの戦いが終わったらな。妊活しよう」
「!”#$%&’()=~!?」




