第43話 ヒガンの力を、取り戻す
「バカな。ヒガンの攻撃が、オレサマに」
頭だけになったアンドラスの目が、光を失う。
どうやら、勝ったようだ。
「危ねえ」
ズタズタになったシールドを投げ捨て、オレはため息をつく。
オレに向けてヒガンが攻撃を放ったとき、オレはとっさに落ちていたシールドを手に、アンドラスに向けて攻撃をそらしたのだ。シールドの落下ポイントまで、ヒガンを追い込んだのである。
「すごいね。ミツルは。ホントに、強い」
「強いもんか。オレは、最善を尽くしただけだ」
最重要だったのは、オレがヒガンを倒して力を取り戻すことではない。
絶望的な局面を、切り抜けることだった。
アンドラスに苦しめられているロニたちを無視して、ヒガンを倒すことに専念することも、できただろう。
だが、オレ一人が強くなったって、守る相手がいなければ意味がない。
オレは仲間を助けたくて、強い力を求めた。
単に力がほしいだけなら、ソロ狩りで経験値を稼ぐさ。ロニたちコンパニオンを雇うなんてマネはしなかった。
「あーあ。ヒガンも、呆れちまったようだ」
アンドラスの死体を見ながら、ヒガンは立ち尽くしている。
「オレは、落第だろうな。相手の力を利用して勝つようなやつは、失格だ」
「ミツル、そうとも限らんのとちゃうか?」
オーゼも、ヒガンを見ながら呆然としていた。
「んだよ、オーゼ……んっ?」
光の粒子となって、ヒガンが消えていく。
ヒガンの粒子が、オレの方へ流れてきた。
「わわわ、なんだ?」
オレの体内に、ヒガンだったものが入り込んでくる。
[過去の自分との戦い:達成しました。【ノーマルモード】時代のヒガンのステータス
や所持品が、手元に帰ってきます]
ホントだ。ノーマルモードのスタッシュ……倉庫用の宝箱まで、戻ってきやがった。当時に売りそびれたアイテムとか、そのままだ。
使うか売るか迷って、倉庫に寝かせていたんだよなぁ。
「素材アイテムとかも、そのまんまだな」
おいおい、うれしいねえ。クリアした実感なんて、全然ないのによぉ。
「どういうこった?」
『おそらくですが、あなたの機転を利かせた行為が、ヒガンにとってベストだと判断されたのでしょう』
ヒガンの力を利用して、敵を倒したことが、か?
『ただ自分を倒すことだけが、ヒガンの希望ではなかったのでしょう。もし、あなたが仲間を見殺しにして、自身の強化を優先するような人間だったら、ヒガンも力を与えようとはしなかったのかもしれません』
「そう言い切れるかい、キナ子?」
『ワタクシがヒガンなら、そう判断いたしますよ』
なるほどね。
それはそうと。
「伝説の刀ってのは? それを探すために、このダンジョンに入ったはずだぜ」
素材は大量に、手に入った。ヒガンがドロップしたスタッシュを含めて、かなりの大収穫である。
だが、お目当てのアイテムはどれだ?
「私のスキルと、ヒガンのことなんじゃないかな?」
「たしかにな。攻撃力だけで言ったら、かなりのパワーアップだ」
なんせオレは、もう一人分のステータスを得ている。サブジョブがひとつ、完成したようなもんだ。
「ヒガンが伝説の刃だ」というなら、信じるかも。
『ミツルさん、その武器なのでは?』
「ん、これか?」
オレは、地面に突き刺さっている、ボロボロの刀を引き抜いた。
「これが伝説の刀、なのかねえ?」




