第40話 過去の自分との戦い
マジか。まさか、過去の自分と戦うことになるとは。
姿形は、まさしく【ヒガン】だ。かつてオレが使っていたゲームキャラで、ロニの恩人でもある。
「おい、ミツル。たしかお前、ヒガンでもあるって言うてたな」
「そうだ。オレは昔、ヒガンという名前で、お前たちの世界で戦ったことがある」
今は、その力を失ってしまったが。
こんな形で、再会することになるとは。
相手はヒガンではあるが、意思はなさそうだ。顔こそオレに似ているが、表情がない。
『ミツル、聞こえる?』
「おお、マリエか。あれの正体がわかったか?」
『ええ。あれはいわゆる、データの集合体ね』
ゲームの過去データから生み出した、魔物の一種かも。
それが、冒険者ギルドの見解だという。
[ミッション:過去の自分との戦い]
オレが身構えるより早く、ミッションが始まってしまった。
ヒガンが、オレに蹴りを入れてくる。
「くそ!」
オレは盾で、ヒガンのキックを受け止めた。
「ミツル、どうしよう!?」
「戦うしかねえ! それに、コイツは」
レベルがオレたちと、あまり変わらない。
「コイツは……」
おそらくこのヒガンは、ノーマルモードをクリアしたときのデータだ。
【フュージョン・ワールド】は、ノーマルまではシナリオが四章くらいしかない。そこから【ハード】モードでさらにシナリオが三本追加される。とはいえ、シナリオ一本の内容だけでPRG一本分のボリュームがあるのだ。
でも、キックの重さは本物である。
さすがヒガン、身体も軽い。オレの盾を足場にして、宙を舞う。そのまま、キックを立て続けに繰り出してきた。
「おっとと、おっと!」
オレは、盾で防ぐだけで必死である。
昔のオレって、こんな強かったっけ!? オレが使っていたときより、攻撃に躊躇なくね?
いや、アレはデータと思っていいだろう。たしかに、オレの戦闘データを参考にして、戦いを組み立てていると見ていい。
『しっかりなさってください、ミツルさん。あれは、あなたなのでしょう? 攻略パターンが、掴めるかもしれません』
「だよな。二人はどうだ?」
『ロニさんもオーゼさんも、完全に萎縮しています』
ヒガンの伝説が、大きすぎるか。
それとも、イベント戦闘なのかもな。
オレ一人で、解決しなければならないらしい。
「みんなは、下がっていろ。キナ子、二人を頼む」
オレはキナ子に頼んで、二人を下がらせた。
「ミツル!」
「大丈夫だ、ロニ。オレは勝つ」
「でも、相手のレベルは三五くらいあるよ!」
「それでも、だ」
相手とのレベル差は、だいたい五くらいか。許容範囲、許容範囲!
「さあ、やろうぜ。かつてのオレ!」




