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世界にダンジョンができたせいでセミリタイアに失敗した男、冒険者になって無双  作者: 椎名 富比路
第四章 FIRE失敗民 幻の財宝を求めて

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第40話 過去の自分との戦い

 マジか。まさか、過去の自分と戦うことになるとは。


 姿形は、まさしく【ヒガン】だ。かつてオレが使っていたゲームキャラで、ロニの恩人でもある。


「おい、ミツル。たしかお前、ヒガンでもあるって言うてたな」


「そうだ。オレは昔、ヒガンという名前で、お前たちの世界で戦ったことがある」


 今は、その力を失ってしまったが。


 こんな形で、再会することになるとは。


 相手はヒガンではあるが、意思はなさそうだ。顔こそオレに似ているが、表情がない。


『ミツル、聞こえる?』


「おお、マリエか。あれの正体がわかったか?」


『ええ。あれはいわゆる、データの集合体ね』


 ゲームの過去データから生み出した、魔物の一種かも。

 それが、冒険者ギルドの見解だという。


[ミッション:過去の自分との戦い]


 オレが身構えるより早く、ミッションが始まってしまった。


 ヒガンが、オレに蹴りを入れてくる。


「くそ!」


 オレは盾で、ヒガンのキックを受け止めた。

 

「ミツル、どうしよう!?」


「戦うしかねえ! それに、コイツは」


 レベルがオレたちと、あまり変わらない。


「コイツは……」


 おそらくこのヒガンは、ノーマルモードをクリアしたときのデータだ。


【フュージョン・ワールド】は、ノーマルまではシナリオが四章くらいしかない。そこから【ハード】モードでさらにシナリオが三本追加される。とはいえ、シナリオ一本の内容だけでPRG一本分のボリュームがあるのだ。

 

 でも、キックの重さは本物である。


 さすがヒガン、身体も軽い。オレの盾を足場にして、宙を舞う。そのまま、キックを立て続けに繰り出してきた。


「おっとと、おっと!」


 オレは、盾で防ぐだけで必死である。


 昔のオレって、こんな強かったっけ!? オレが使っていたときより、攻撃に躊躇なくね?


 いや、アレはデータと思っていいだろう。たしかに、オレの戦闘データを参考にして、戦いを組み立てていると見ていい。


『しっかりなさってください、ミツルさん。あれは、あなたなのでしょう? 攻略パターンが、掴めるかもしれません』


「だよな。二人はどうだ?」


『ロニさんもオーゼさんも、完全に萎縮しています』


 ヒガンの伝説が、大きすぎるか。


 それとも、イベント戦闘なのかもな。


 オレ一人で、解決しなければならないらしい。


 

「みんなは、下がっていろ。キナ子、二人を頼む」


 オレはキナ子に頼んで、二人を下がらせた。

  

「ミツル!」


「大丈夫だ、ロニ。オレは勝つ」


「でも、相手のレベルは三五くらいあるよ!」


「それでも、だ」


 相手とのレベル差は、だいたい五くらいか。許容範囲、許容範囲!



「さあ、やろうぜ。かつてのオレ!」

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