第39話 忘れられた山道
「どうする、ミツル。一旦補給に戻る?」
たしかに、準備くらいはさせてもらいたい。一度拠点に戻って、と、オレも考えた。
「やめておこう。このイベントは、続けざまにやっておかないと」
放置すれば、イベントが消滅してしまうリスクもある。
せっかく、相手が導いてくれているんだ。乗らない手はないだろう。緊張感の持続、って意味もある。
「行こう」
準備は、歩きながらでもできるさ。
「ロニ、妖精の後を追ってくれ。オーゼが横に並んで、ロニの護衛を」
「よっしゃ。嬢ちゃんの援護は任してや」
魔物を撃退しつつ、オレたちは森を突っ切ることにした。
【ダンビラ山】には、まだ通るべきポイントがあるらしい。
まだ昼前だというのに、とんでもなく暗い道である。
しらばくして、道がひらけてきた。【忘れられた山道】という場所に、たどり着く。
「石の橋で、整備されているよ」
「古代の遺跡みたいだな」
モンスターは、森と大して変わり映えしない。ちょっと強い程度の石像が、襲ってくるくらいである。【レイジ・オブ・エレメンタル】という技を手に入れた、ロニの敵ではない。
さっそく、ステータスや装備品などをまとめることに。
「大丈夫? よそ見してて」
『ワタクシが、ミツルさんをサポート致します。道に迷うことはございません』
キナ子がナビ代わりになってくれているので、オレは問題なく画面に集中できる。
装備は戦闘中に散々入れ替えたから、もういいか。
さっきのクエスト報酬は、オレももらえるのか。
[【試練の鞘】:スキルコスト 二〇%減]、ねえ。ふーむ。
【バスタードソード】に、付けておこう。オレは、【天啓】を使うからな。
天啓は、【ヘビーアタック】の上位互換で、クリティカルが確定で発動する。レアドロップも確定する代わりに、魔力消費が激しい。
使い所を間違えると、手痛い目に遭う。今が、強化するときだ。
あとはキナ子の装備だけ、更新しておこう。
『よさげなアイテムを、石像が落としました』
「この【精霊樹のベルト】って、いいな」
全員を保護する魔法バリア、【マジックオーラ】のリチャージが二〇%上がるのか。これに【光】属性のシードを突っ込んで、さらに魔法防御力を上げる。
「ロニ。できればお前さんの頭装備を、素材で強化したいが」
移動用魔法で、即座に帰ってしまいたいが。
「うーん。全部終わってからにしよう」
「そうだな。戻らないって言ったのは、オレだし」
今は、妖精の導きに従おう。
後は、ステータスだな。攻撃力を上げて、殲滅力をアップだ。
スキルの見直しも、行う。
スキルだが、【チェイン・ライトニング】を外す。今まで役立ってくれたが、ロニの【レイジ・オブ・エレメンタル】があれば十分だろう。
代わりに、【ヒート・スマッシュ】でも取るか。ロニはザコキラーに育ってくれたようだから、オレはボスキラーになろう。
ヒート・スマッシュに天啓を乗せて、ぶちかます。
「いよいよもって、ヒガンに近づいてきちまった」
「いいんじゃない? ヒガンが生き返ったみたいで」
「なんかなあ」
オレは、どうも不安にかられている。
このダンジョン、ただで終わらない気がした。
「どうしたの?」
「いや、な。ヒガンは死んでない気がするんだよなあ」
特に危なげなく、山道の終点に到着する。開けた岩場だ。
ホコラらしき建物の前に、山伏が立っていた。あれが、ボスか。
「テメエ、姿を現せ!」
オレが叫ぶと、山伏が覆面を脱ぐ。
「ウソでしょ。あんなのと、戦えないよ」
見知った顔を前に、ロニは萎縮してしまう。
それは、みんな同じだった。このオレでさえ。
「冗談だろ」
ここのボスは……【ヒガン】かよ!?




