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世界にダンジョンができたせいでセミリタイアに失敗した男、冒険者になって無双  作者: 椎名 富比路
第四章 FIRE失敗民 幻の財宝を求めて

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第35話 山のお導き

 モンスターを撃退しながら進み、三時間掛けて頂上へ。


「ミツル、シカがめっちゃ強かったね」


「なんだあの攻撃……」


 この山で一番強かったのは、シカって感じだった。角から衝撃波とか出すし。


『ミツルさん、ロニさん、お疲れ様でした』


 頂上で、キナ子が待っていた。


「ああ。ほんとに疲れた。調べるところが、山ほどあった」


 山の奥深くを、隅々まで調べたと思う。


「頂上には、なにもないんだな」


『達成感だけでした』、とのこと。 


 みんなで、下山する。


「こっちは何度も、魔物が襲ってきてさ」


「しかも、【スタンピード】までしてきやがった」


 魔物が定期的に集団で襲ってくる現象を、スタンピードという。

 チェックポイントらしき地点に到達すると、決まって魔物が群がってくる。


 魔物を倒すとホコラが出現し、ホコラを触って起動させると魔物の気配が収まるという仕組みだった。


「でも、落とすアイテムの確率が塩で。ホコラを起動したら、ようやくそれなりのアイテムは出てきたよね」


『で、ご感想は?』


 オレもロニも、キナ子の質問に首を振った。


「アイテムのレア価値は、すさまじかった。しかし、これは! ってアイテムには出会えていない印象だな」

 

 びっくりするくらいに珍しいアイテムがあったかというと、そこまでは。

 

「多分、めちゃ見落としがある。絶対に、なにかあるに違いないんだ。けど、人間やマシンの目では、捉えられないのかも」



 ギルドに戻る。


「じゃあ、キナ子の映像を、調べてみましょう」

  

 撮影した映像を、みんなで見ることに。


 岩場に、縦に割れたわずかな隙間が。その先に、光るものがある。いかにも、財宝が眠っていそうだ。


「なるほど、これがダンビラ山の由来なのかもな」


 ダンビラで切り裂いたような狭い断崖が、山にできている。

 

「ほんとに狭いな。あと、天井も低い」

 

 道幅が狭く、キナ子でも渡れなかった。


「ドローンを飛ばすってのは?」


「モノを引っ張り出せるほど高性能なものって、出力調整とかで大変だからね」


 マリエいわく、キナ子は大概高性能だが、中身はかなり重量がある。身体のラインを細くしたら、それだけ中身も丸ごと入れ替える必要があるらしい。


「たしかにキナ子は探査用ロボットだけど、こういった作業には向いていないのよ」


 作業用のロボットを降ろす手もあるが、どこに財宝があるかわからない。手間が増えるだけだろうとのこと。


「子どもなら、なんとかいけそうだな」


「ロニちゃんなら、渡れるんじゃない?」


 マリエ、そう提案してきた。

 

「私が?」


 ロニが、自分を指差す。


「ミツルもキナ子も、こんな狭い道は入れない。二人で頂上からロープで吊るしてもらって、あなたが入ってみなさいよ」


「いいの?」


「山の神様の、お導きだと思うわ」


 ロニは、オレに視線を向けた。お伺いを立てるかのように。


「行って来い。行かないと、きっと後悔する」


「わかったよ。ミツル」

 

 なるほど、剣の正体は、精霊たちの怒れる刃ってわけか。



 翌日、オレたちは再度ダンビラ山へ。


 ロニをロープで、吊し上げた。


 オレとキナ子で、ロープを支えていたときである。


『モンスターです!』


 これまでにない大量の魔物が、群れをなす。


 これは、【耐久ミッション】だ!

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