第34話 財宝のありか
キナ子はスイスイと、コケまみれの岸壁を登る。
「いけそうか?」
『問題ありませんね。ワタクシは、このルートを進みます。今後も通りやすいようにルート確保……というわけにはいかないのですね、ロニさん?』
キナ子が、ロニに確認を取る。
「そうなんだよ。ここだけじゃなくても、ダンジョンはランダム生成。傷をつけたとしても、もとに戻っちゃうんだ」
道しるべを作った時点から、修復が始まってしまうらしい。
『ミツルさん。それでもワタクシは、どうにか突破口を開いてみせますね』
「頼むぜ。登りやすいルートがあったら、教えてくれ」
『はい。では、先に頂上でお待ちしております』
険しい登山はキナ子に任せて、オレは先へ進む。
木々が生い茂る森に、入っていった。
「来たぞ!」
大量の魔物が、襲いかかってくる。
目つきがヤバいシカやクマは、まだかわいいほうだ。一見無害なウサギなどが、木をへし折るレベルのケリをカマしてくる。
「ぐう!」
鹿の角で、ロニがダメージを受けそうになった。
「ロニ!?」
「大丈夫! ありがと」
ガイコツ騎士が、ロニを守ってくれている。
ロニも、ガイコツの騎士をねぎらった。
「よくもロニを! お返しだ。【フロストノヴァ】!」
前方に、氷の爆発を起こす。
ロニの使う【爆裂】の、氷属性バージョンだ。
ただし、こちらは円形範囲ではなく、前方にしか出せない。とはいえ、威力はこちらのほうが上である。
ズンズンと、上を目指して進むんだ。山道のために、爆裂が使えない。
「いいアイテムは、落ちるよね」
ウルフの群れを蹴散らして、ロニは炎のシードを手に入れていた。
シードのアイテムレベルが、二〇を軽く超えている。レアクラスだ。
「【耐性 三〇%アップ】に、【延焼ダメージ追加】、【体力と魔力の同時自動回復 三%】、だって」
「そんな豆粒大のシード一つで、そんな効果があるのか?」
「……ここ、ヤバくない?」
「ああ。信じられんほど、レア度が高い」
アイテムに付与されている特殊効果も、複数あった。
「こんなの、見たことないぜ」
アイテムのドロップ率は、めちゃくちゃ低いようだ。一つも落とさないわけじゃない。ゴミばかり落とすのだ。一〇〇匹倒して、レアが一つ出てくるかどうか。
とはいえ、レアの質は相当に高い。
石でできた宝箱の中身も、ほとんどが金かゴミだった。
「一応、いいアイテムも出るけどね」
「ああ。こんなものまで、入っているくらいだからな」
どうして古代遺跡より古いだろう山にある宝箱に、日本産のポーションゼリーが落ちてるんだろうなって思うが。食っていいんだろうな、これ?
「素材もかなりいいよ。一旦帰って、整理したい」
「だな。あとでキナ子と合流しよう」
たったこれだけの素材でも、今までのダンジョンより価値が高かった。
正規ルートが尖った山だとすると、このルートはハズレだろう。
しかし、そうとも言い切れなかった。
あちらのルートは数分で到着できても、魔物が出ない。
「うわっ!?」
岩場のコケに足を取られて、ロニが転倒しかけた。地面にも、コケがびっしりかよ。
「気をつけて進もう」
「そうだね」
「結構、広いな」
やはり、山を突っ切るのと森の中を歩くのでは、断然距離が違う。
「おーい、キナ子」
ギルド用の端末で、キナ子と通信をする。
「こっちからでも、頂上は望めそうだ。ただし、お前さんと違って時間がかかりそうだ。
『そちらの足でしたら、およそ二時間、と言ったところでしょう』
「お前さんはどうだ?」
『敵は、出てきません』
なのでキナ子は、表面を横移動しているという。人間が通れそうな道を、探しているんだとか。
「どんな感じだ?」
『まったくダメです。パルクールや、ボルダリングの知識が必要です。それでも、登れるかどうか……待ってください。道がありましたね』
「通り道が?」
『いえ。おそらく財宝へのルートかと思います。こんな場所では、人が出入りするのはムリでしょう』
キナ子は財宝のありかを発見したものの、到達はできそうにないという。
『この道は、ランダム生成でも固定ルートだと思われます。撮影だけをして、頂上を目指すことに致します』
「頼んだ」
一度、頂上で落ち合うことにした。




