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世界にダンジョンができたせいでセミリタイアに失敗した男、冒険者になって無双  作者: 椎名 富比路
第四章 FIRE失敗民 幻の財宝を求めて

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第33話 ダンビラ山

 そうだ。ひとつ忘れていた。

 

「シュリ、コイツを渡しておこう」


 ロニに、ペンダントを渡す。【蛇毒の瞳】という、毒攻撃を緩和するアイテムだ。

 毒を無効化する【ヒドラスーツ】を手に入れたので、必要がなくなったのである。


「ありがとう、ミツル」

 

 最後に、ステータス振りを行う。


 そろそろ本格的に、攻撃が通用しなくなってきた。攻撃力や耐久力に振っていく。

 自動回復アイテムを、ロニの母親からもらっている。魔力を優先する必要は、なくなった。


「よし。これで行くぞ」

 

 オレたちはポータルを使って、【ダンビラ山】に到着する。


 ダンビラ山は異世界に現れたダンジョンだが、平安時代から存在はしていた。


 難易度はCであり、冒険者の数も制限されている。上級の修験者用のダンジョンとして、平安時代から霊能力者の間で活用され続けてきたという。


『ミツルさん。霊能力者って、本当にいたのですね?』


「そのようだな」


 驚くところって、まずはそこだよな。霊能力者が実在していることこそ、公表すべきだと思うのだが。


「修験者用のダンジョンだから、あまり荒らされてこなかったわけか」


「こんなパワースポットには、強力なアイテムが眠っていることが多いんだって。私の故郷でも、魔法科学校でそういう山に登らされたよ」


 ロニが、山のTIPSを確認した。


 誰にも触れられず荒らされず、自然界のエネルギーを取り込める、と。


「禁忌に触れるな的妨害とかは、あるだろうな」


「かもしれない。モンスターが仕掛けてくるかもね」


 ならば、慎重に行こう。


 登山用の装備は、特に必要ないって言われたけど。

 

「大丈夫そうか、ロニ?」


「たぶんね」


 ロニはブーツだけ、登山用に履き替えていた。


『ここはかつて、不法冒険者が度々訪れていたそうです』


 身分を偽って、多くの冒険者がレアアイテムを求めてこの山に入ったらしい。


「そいつらは、どうなった?」

 

『誰も、帰ってこなかったそうですよ』

 

 キナ子は、首を振る。


「こんな光景じゃあな」


 コケだらけの山を見て、オレは登るのを断念しそうになった。


「ここを、這い登るのかぁ」


 山を見上げながら、オレは腰に手を当てる。


 登れそうなスポットを探すが、ツルツル過ぎてとても上がれそうにない。迂回するしかなさそうだが。


「これは、ひと仕事だぜ」

 

『問題ありません。ワタクシがサポート致します。ご安全に登山いたしましょう』


「お前さんは、飛んだりはできないんだよな」


『はい。飛行機能も搭載は可能でしょうけど、すぐにエネルギー切れを起こすと、マリエ様が』


 だよね。キナ子は、精密機械の塊だ。機能を停止してしまったら、オレたちは帰ることすら困難になるだろう。クソ重いキナ子も連れて帰らなければならない。


「遠回りだが、安全なルートを行こう。登れそうなポイントがあったら、登る」


「そうしようか」


 オレとロニは、迂回ルートを選んだ。


 キナ子だけ、コケむした岩を登り始める。


「いけそうか、キナ子?」


『ワタクシは手のひらに、接着機能がございます。一旦岩から登ってみて、皆様をサポートいたしますね』

 

 色々と試しつつ、登っていくつもりのようだ。好奇心のほうが、勝ったか。


「気をつけろよ、キナ子。魔物も潜伏しているからな」


『お二方も、ご安全に』

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