第32話 専属鍛冶屋 シュリ・エビハラ
シュリは、オレたちに名刺を配る。
「ほんじゃ、改めて。オイラはシュリ。鍛冶師エビハラ一族の末っ子なー」
聞くと、エビハラ家は冒険者ギルドの鍛冶屋全般をサポートしているらしい。
その規模は、異世界だけではなく、地球にも及んでいる。
「今日から、ミツルのパーティでお世話になるぞー」
「そんなすごい人が、どうしてオレたちのような弱小パーティの専属に?」
「面白そうだからだぞー」
というのはシュリの弁だが、実際はそういう仕様らしい。
ある一定のレベルになると、鍛冶屋を専属で雇えるという。
ここまでくると、ギルドや他パーティと鍛冶レベルの共有とはならない。独自の進化を遂げていく。
「昔は【レジェンダリ】クラスのアイテムくらいなら、自力で作れたらしいけどなー」
太古の昔、神様から依頼されて、最強の素材でアイテムを作っていたという。
「今はそんなこと、できないけどなー。素材も少なくなったし」
「でも、今回行くダンジョンは、【神域】に近い素材が手に入るそうじゃない」
「らしいけどなー。オイラもわかんねえんだよなー。伝説っていうくらいだから、あくまでも伝説なんだよなー」
その伝説とやらを、シュリは話してくれた。
「【ダンビラ山】っていってな。平安時代とかそういった時代から存在する神山なんだよなー」
そこには、伝説のカタナが眠っているというのだ。
「しかしなー。そんなカタナを打ったっていう鍛冶屋の存在も、忘れられていてなー」
ドワーフ族の間でも、伝説のカタナの存在は知られていないらしい。
また、レジェンダリ級と言っても、めちゃくちゃ強いわけではないという。
「アイテムの等級ってなー。『珍しさ』が最優先なんだ。だから『単に珍しいだけで、アイテムとしては大ハズレ』って可能性もあるんだよなー」
「ハズレアってやつだな」
オレも、よく掴まされた。
激レアアイテムだから、さぞ強い効果があるのだろうと思ったら、ただの換金性が高いアイテムだったことはよくある。高い効果があるものもあるが、デバフのほうが目立つアイテムも。
よくオレも、泣かされたっけ。
「ロニは、聞いたことがあるか? カタナって言えば、異世界では魔道具なんだろ?」
サブ武器としてロニが所持しているのも、守り刀である。
だが、ロニは首を振った。
「魔道具に関しては、専門外でさ。私も、詳しくないんだ」
「まあ、今は手持ちでなんとかやってやるぞー」
さっそく、装備品の見直しをしてもらう。
【ファイアソード】などの単一属性持ちの武器が、敵によっては使い物にならないとわかった。
「物理で強化して、エンチャント効果が増すように改造するぞ」
「頼むよ」
慣れた手つきで、シュリはファイアソードを【クレイモア】に戻す。
「なににしようかな。コイツがいいな」
オレが拾ったアイテムから、シュリは適当なものを見繕う。
「ほい。【クレイモア + 三】な。クレイモアの強化は、これが限界だからなー。より装備が欲しかったら、敵から拾って調達してくれなー」
「助かる」
後は、キナ子の装備を更新した。オレが使っていた鉄の胸当てに、さらなる魔法耐性を付与する。
「お前の手甲は、炎以外の属性攻撃ができるようにしたぞー」
『感謝致します。シュリさん』
ボルケーノベアが落としたレザーは、ロニの新しいフードとマントに変わった。
「ありがとう、シュリ」
「お互い、新天地でもがんばっていこうなー」
「うん」




