第31話 幻のお宝
翌朝から、オレたちは車を走らせて、県外へ向かっていた。
「そこに行けば、いい感じの素材が手に入るのか?」
「らしいわ。ミツルの剣も、アップグレードされるんじゃないかしら?」
だとしたら、ありがたい。
「でも、そのお山の伝説はそれだけじゃないの。なんでも、『幻のお宝』があるってウワサなの」
「幻のお宝?」
「そうよ。エピックどころじゃない、それこそレジェンダリ、あるいは、【神域】の」
神域のアイテムと言えば、【エクスカリバー】や【魔剣・グラム】、日本での【草薙の剣】など、神様が人に与えたとされるアイテムのことを差す。
「そんなアイテム、そうそう簡単に手に入るのかよ?」
「お寺の屋根を掃除しただけでポロッと落ちてきた、【神域】アイテムだってあるのよ。ダンジョンなら、なおさら期待していいわ」
国宝じゃねえかよ、それ。
「とにかく、その山は大変貴重なお宝が眠っているらしいから。楽しんでちょうだい」
その前に、ロニの腹の虫が悲鳴を上げ始めた。
「いいところがあるわ。寄っていきましょ」
古民家カフェに入って、天ぷらそばをいただく。エビが、この街の名物なんだとか。
たしかに、デカい。世界にダンジョンができた影響なのか、エビの大きさが器を超えていた。
「おいしい……ごちそうさま。ふううう」
よほどうまかったのか、ロニはそばつゆまですべて飲み干す。
おいなりさんが乗っていた器も、空っぽになっている。
「昨日も油料理だったのに、ちっとも重たくないよ。ミツル」
「だな。めちゃくちゃうまいぞ、これ。ありがとうよ、マリエ」
昨日が焼き肉だったから、こういうあっさり味に飢えていた。
かやくご飯の優しい塩加減も、実にうれしい。
「ロニ、このエビのシッポ。スナック感覚で行けるぜ」
オレはサクサクと、シッポをかじってみせる。
「ホントだ。おいしい!」
ロニも、喜んでエビのシッポをサクサクと頬張った。
ホントに、せんべいのように味が濃い。
これも、ダンジョンの影響だろうか。
「さて、冒険者ギルドにごあいさつに行きましょ」
そういって、なぜかマリエはカウンターへ。
「よろしくおねがいします」
「あいよ。ウチのメシを楽しんでくれて、ありがとうよ」
作務衣姿の中年男性が、実はここにある冒険者ギルドのグランドマスターなんだとか。
「だが、すまないね。こんな遠くまで出てきてもらってさ。ダンジョンができたばっかりで、ポータルが間に合っていないんだ」
「いいんですよ。オレたちが直接、来ればいい」
「そう言ってもらえると、うれしいねえ。ささ、こっちだよ」
旅の準備のため、オレたちは受付にあるロッカーまで案内してもらう。
「装備のデータは送信済みだから、こっちまで電送してもらったよ」
ギルド間では、装備品をデジタル化して送受信できる。
こういうところは、まさしくゲームって感じがするが。
この世界は、現実なのである。不思議なことに。
装備品売り場には、ドワーフの少女までいた。
「おーっす」
「こんにちは。お前さんも、こっちにやってきたのか?」
「おう。オイラは、シュリ。お前たちのことは、地球にいる兄貴から聞いていたぞ」
で、シュリは地球でオレたち専属の鍛冶屋になりたいと申し出てくれたらしい。
「なんか、お世話したくなっちまってよー。よろしくな」
「こちらこそ。ありがとう」
「どうもなー。じゃあ、装備品を見てやるぞー」




