第29話 違法ダンジョンの責任者を、追い詰める(元コンパニオンが
マリエが運転する車の中で、オレはマリエのノートPCを開く。
騎士団の活躍と盗賊団の末路を、動画で見ることにした。
映し出されているのは、異世界にある屋敷のようだ。
アイザックを先頭とした騎士団たちが、鉄製の門扉を蹴破った。木箱を持って、荒々しく扉をノックしている。
メイドや庭師が取り押さえようとするが、騎士団は容赦なく振り払っている。
「おら、アイザックじゃ。さっさと開けんかい、こら!」
あれだけ暴れたあと、すぐに黒幕の屋敷に向かったのか。パワフルすぎるだろ。
「おるんはわかっとんのじゃ! さっさと、お出迎えせえやこら!」
屋敷のドアに、ケリを入れた。
「わかったわかった。開けるから!」
ドアの向こうから、あたふたした声が。
「わかってんねやったら、さっさとせえやコラ!」
これ、どちらが悪党か、わからなくなる。
もたつく屋敷の反応に、アイザックは業を煮やした。
「おい、いてまえ」
アイザック騎士団の団長が持ち出したのは、破城槌である。
ムキムキの大人六人がかりが持つほどの重い鉄槌を、団長アイザックは片手で持つ。
「わかった! 開けるから開けるから開ける!」
家主の配下が、ドアの向こうから焦り切りの声でカギを操作した。
「じゃかあしゃい! 開けろいうたら、さっさと開けんかい!」
団長が破城槌を蹴り飛ばし、屋敷のドアを破壊する。
その拍子で、盗賊団の数名が巻き込まれた。
「おら、やっぱり盗賊を匿っとったんやろうが!」
どうやら屋敷側は、盗賊を逃がすのに手間取っていたらしい。
「団長! 馬車も取り押さえました!」
「よっしゃ! おったか?」
「いました。馬車の床板の下に、わんさかおりましたで!」
騎士団によって、盗賊団が馬車から引きずり出されていく。
「了解や! もう言い逃れできへんぞ、オラ!」
「黙れ! 私は男爵だぞ! 貴様ら騎士団ごときに!」
身分の違いをわからせるため、男爵が凄む。
だがアイザックは、男爵のアゴを蹴り上げた。
「おのれが魔王とつるんでんのも、お見通しなんやぞ! 証人もおるわい!」
マリエによると、オレが助けた冒険者がすべて教えてくれたという。
「もともとあったダンジョンの廃棄部分を利用して、違法に営業しようとしていたみたい」
騎士団のバックには、異世界の男爵がいた。魔族と結託して、違法ダンジョン用の土地を手に入れたそうだ。
冒険者を保護したギルドが、すべてを聞き出したんだとか。
男爵のグループは、冒険者たちを違法ダンジョンへ誘い出し、自分の部下である盗賊団や魔物の手で殺害、ダンジョンの養分にするつもりだったらしい。
オレが来なければ、間に合わなかっただろう。
「クソだな」
「魔王の存在維持には、ある一定の魔力が必要だった。魔物からだけではなく、冒険者からも搾り取ろうとしたのね」
なんてヤツラだ。
「コイツはどうなるんだ?」
「まあ、見てなさいよ」
男爵を取り押さえようとするが、当の男爵は余裕の表情だ。
「こうなれば、仕方がない。ベリト様からいただいた、魔王の力を行使させてもらう!」
狼の魔物に、男爵は変化……しようとした。
だが、アイザックが放った破城槌の一撃で、頭を砕かれる。いとも簡単に。
「おお、頭に[レベル上限がアンロックされたで]ってアナウンスがあったが、ホンマやんけ」
破城槌を槍のようにブンブン振り回しながら、アイザックは口笛を吹いた。
魔王クラスのモンスターを、一撃で。
レベルキャップ解放したことで、今まで得ていた経験値がアイザックに注がれたのだろう。
「とまあこんな感じで、以上が、違法ダンジョンの顛末よ」
「この男爵は、違法ダンジョン用の土地を提供する代わりに、魔王サイドから利益を得ていたと」
「証人である男爵自身が死んじゃったから、あとは屋敷内の押収品からの推理になるけど」
おそらく、押収品のほうが物的証拠になるはずだ。あんな男爵では、生きていようと絶対に口を割りそうにない。殺して正解だ。
「では改めて、生還パーティをしましょ」
マリエは焼肉店へ、車を走らせた。




