第28話 レベルキャップ、解放
「ミツル、よけて! 【アイスジャベリン】!」
ヒドラに向けて、ロニが氷の槍を投げつけた。存分に魔力を注ぎ込んだためか、槍は丸太くらい太い。
だが、ヒドラはジャベリンに噛みついてしまう。
「あれじゃあ、ノドを通らねえ!」
オレは、ファイアソードを氷の槍に突き刺した。
ヒドラはオレごと、氷の槍を振り払おうとする。
だが、凍りついた槍は、ヒドラの牙と完全に一体化していた。今なお牙にへばりついて、氷結部分を拡大している。槍を振りほどくには、牙ごと抜き取るしかなかろう。
「キナ子! オレの背中を押せ!」
『承知!』
キナ子がオレの合図で、ダンジョンの壁を駆け上がる。
「ご希望どおり、歯の治療をしてやんよ! ヘビ野郎!」
飛び蹴りで、オレの背中を蹴り飛ばした。
オレは剣で槍を押して、ヒドラのノドを刺し貫く。
「ダメ押しの……【天啓】!」
ロニに提案されて却下したスキルを、オレは発動させた。
大量の魔力コストを消耗する代わりに、クリティカル以上の攻撃を確定で放つスキルである。
「すべての魔力を、持っていけえええ!」
ありったけの魔力を氷の槍に注ぎ込んで、さらに蹴りで押し出す。
氷の槍が、ヒドラの首から突き出した。
弱点である『本来の首』を仕留められて、ヒドラがぐったりする。アイテムを吐き出し、絶命した。
[ユニークボス:【ベリトの使い ヒドラ】を倒しました]
あれ、ユニークボスだったのか。ヒドラにしては、やけに強いなと思っていたけど。
しかし、オレは体勢を立て直せない。このまま、頭から墜落しそうだ。いくらなんでも、全魔力ブッパはコストを払いすぎたらしい。
すかさず、キナ子がキャッチしてくれた。
『ご無事ですか、ミツルさん』
「ああ。問題ない」
『問題だらけです。ムチャをして。背中も、折れているではありませんか』
「どうだったかな? うわ、痛え!」
よく考えたら、全身に力が入らない。キナ子に蹴られたところが、今頃になって傷んできた。
「ありがとう、ロニ。お前のアドバイスが効いた」
「どういたしまして」
オレはお姫様抱っこをされながら、ロニと握手をする。
その間に、キナ子に治療をしてもらった。病院送りではなく、回復魔法で治療できるってのはありがたいな。
「私、めちゃ強くなってない?」
ロニが、ステータスを見せてくれた。
『ミツルさん、ロニさんのレベルが、二六にまで』
「上限であるはずの【二五】を、超えている」
『すごいです。ロニさん、コンパニオンなのに』
コンパニオンは総じて、【二五】が限界だったはず。
オレは、自分のクエストログを確認してみた。
[ユニークボスを倒したことで、実績が解除されました。コンパニオン『ロニ』『アイザック』のレベル上限が、解放されました]
と、書かれている。
ロニの手には、ライカーガスのときと同じ、メダルが。今回の色は、銀色だ。
これは、うれしい。
正直、ロニを仲間にいれるかどうか悩んでいたのは、「レベルキャップ」のせいだった。
コンパニオンには、レベルの上限に制限があるのだ。「特定のエリアまでの同行」を意識した、構成だったのだろう。ずっと連れて歩きたくても、コンパニオンが足手まといになっていく。
「ロニもそうなるのでは」と、オレも心配していた。
結局、オレたちと同じように際限なくレベルが上ってくれそうだ。
「戦利品のチェックだ。かなりヤバいぞ」
最大のアイテムは、【ヒドラスーツ】である。全身ヨロイ扱いのため、コテやブーツを付けられなくなる代わりに、ありとあらゆる状態異常に耐性があるという。
「誰か着るか?」
オレが勧めても、誰も着ようとしない。
『ワタクシでは、装着できませんね。換金対象です』
「ヘタしたら、お前の装甲より硬いぜ」
『マリエ様にアップデートしていただくので、ご遠慮なく』
装甲に関しては、マリエに一任しているようだ。
「ロニは?」
サイズは多少大きいが、異世界の装備には体型調節機能がある。装備すれば、勝手にリサイズしてくれるのだ。
「ムリ。筋力の制限がある」
ロニは魔術特化型のビルドなので、ステータスが影響してしまうという。
たしかにロニの細腕では、重すぎるかも。
「指輪にも盾にも、干渉しないぞ。これはいいな」
オレがもらっても問題ないというので、ありがたく頂戴する。
『みんな、急いで帰ってきてちょうだい』
キナ子の胸部パーツが開き、マリエが通信してきた。
他にもコマゴマとアイテムが揃っているが、一応全部回収する。続きは、ギルドで吟味するか。
「どうした、マリエ?」
「違法ダンジョンを作ろうとしていた『ホグビィド盗賊団』の雇い主が、壊滅したって報道があったわ」




