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世界にダンジョンができたせいでセミリタイアに失敗した男、冒険者になって無双  作者: 椎名 富比路
第三章 FIRE失敗民、違法ダンジョンをぶっ壊す

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第28話 レベルキャップ、解放

「ミツル、よけて! 【アイスジャベリン】!」

 

 ヒドラに向けて、ロニが氷の槍を投げつけた。存分に魔力を注ぎ込んだためか、槍は丸太くらい太い。


 だが、ヒドラはジャベリンに噛みついてしまう。

 

「あれじゃあ、ノドを通らねえ!」

 

 オレは、ファイアソードを氷の槍に突き刺した。


 ヒドラはオレごと、氷の槍を振り払おうとする。


 だが、凍りついた槍は、ヒドラの牙と完全に一体化していた。今なお牙にへばりついて、氷結部分を拡大している。槍を振りほどくには、牙ごと抜き取るしかなかろう。


「キナ子! オレの背中を押せ!」


『承知!』


 キナ子がオレの合図で、ダンジョンの壁を駆け上がる。

 

「ご希望どおり、歯の治療をしてやんよ! ヘビ野郎!」


 飛び蹴りで、オレの背中を蹴り飛ばした。


 オレは剣で槍を押して、ヒドラのノドを刺し貫く。


「ダメ押しの……【天啓】!」


 ロニに提案されて却下したスキルを、オレは発動させた。

 大量の魔力コストを消耗する代わりに、クリティカル以上の攻撃を確定で放つスキルである。


「すべての魔力を、持っていけえええ!」


 ありったけの魔力を氷の槍に注ぎ込んで、さらに蹴りで押し出す。

 

 氷の槍が、ヒドラの首から突き出した。


 弱点である『本来の首』を仕留められて、ヒドラがぐったりする。アイテムを吐き出し、絶命した。



[ユニークボス:【ベリトの使い ヒドラ】を倒しました]


 

 あれ、ユニークボスだったのか。ヒドラにしては、やけに強いなと思っていたけど。



 しかし、オレは体勢を立て直せない。このまま、頭から墜落しそうだ。いくらなんでも、全魔力ブッパはコストを払いすぎたらしい。


 すかさず、キナ子がキャッチしてくれた。


『ご無事ですか、ミツルさん』


「ああ。問題ない」


『問題だらけです。ムチャをして。背中も、折れているではありませんか』


「どうだったかな? うわ、痛え!」

 

 よく考えたら、全身に力が入らない。キナ子に蹴られたところが、今頃になって傷んできた。

 

「ありがとう、ロニ。お前のアドバイスが効いた」


「どういたしまして」


 オレはお姫様抱っこをされながら、ロニと握手をする。


 その間に、キナ子に治療をしてもらった。病院送りではなく、回復魔法で治療できるってのはありがたいな。


「私、めちゃ強くなってない?」


 ロニが、ステータスを見せてくれた。


『ミツルさん、ロニさんのレベルが、二六にまで』 


「上限であるはずの【二五】を、超えている」


『すごいです。ロニさん、コンパニオンなのに』

 

 コンパニオンは総じて、【二五】が限界だったはず。


 オレは、自分のクエストログを確認してみた。


[ユニークボスを倒したことで、実績が解除されました。コンパニオン『ロニ』『アイザック』のレベル上限が、解放されました]


 と、書かれている。


 ロニの手には、ライカーガスのときと同じ、メダルが。今回の色は、銀色だ。


 これは、うれしい。


 正直、ロニを仲間にいれるかどうか悩んでいたのは、「レベルキャップ」のせいだった。


 コンパニオンには、レベルの上限に制限があるのだ。「特定のエリアまでの同行」を意識した、構成だったのだろう。ずっと連れて歩きたくても、コンパニオンが足手まといになっていく。


「ロニもそうなるのでは」と、オレも心配していた。


 結局、オレたちと同じように際限なくレベルが上ってくれそうだ。 


「戦利品のチェックだ。かなりヤバいぞ」


 最大のアイテムは、【ヒドラスーツ】である。全身ヨロイ扱いのため、コテやブーツを付けられなくなる代わりに、ありとあらゆる状態異常に耐性があるという。


「誰か着るか?」


 オレが勧めても、誰も着ようとしない。


『ワタクシでは、装着できませんね。換金対象です』


「ヘタしたら、お前の装甲より硬いぜ」


『マリエ様にアップデートしていただくので、ご遠慮なく』


 装甲に関しては、マリエに一任しているようだ。


「ロニは?」


 サイズは多少大きいが、異世界の装備には体型調節機能がある。装備すれば、勝手にリサイズしてくれるのだ。


「ムリ。筋力の制限がある」


 ロニは魔術特化型のビルドなので、ステータスが影響してしまうという。


 たしかにロニの細腕では、重すぎるかも。 


「指輪にも盾にも、干渉しないぞ。これはいいな」


 オレがもらっても問題ないというので、ありがたく頂戴する。

 

『みんな、急いで帰ってきてちょうだい』


 キナ子の胸部パーツが開き、マリエが通信してきた。

 

 他にもコマゴマとアイテムが揃っているが、一応全部回収する。続きは、ギルドで吟味するか。


「どうした、マリエ?」 

 

「違法ダンジョンを作ろうとしていた『ホグビィド盗賊団』の雇い主が、壊滅したって報道があったわ」

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