第27話 魔王の使い ヒドラ
悲鳴のような雄叫びを上げながら、ヒドラは多頭の首をぶん回して暴れまくる。
ヒドラの暴力によって、ダンジョンが崩れ始めた。
オークも騎士たちも、ガレキに飲まれていく。それだけじゃない。ダンジョン内の魔素まで食ってやがった。これでは、違法ダンジョンがあった痕跡もなくなってしまう。
「ほんとに用なしかよ!?」
不要になった違法ダンジョンを、こうやって潰しているのか。
まったく、証拠が残らないわけだ。
「くそ、アイザック、仲間たちを避難させろ!」
「よっしゃ! こんなんが相手やと、ワシは役立ちそうにない。頼むで」
切り替え早く、アイザックは自分の役割を心得る。
「お前ら、逃げんかい! ここはもう、あかん! 逃げ遅れた冒険者を、保護せえ!」
的確に指示を送り、アイザックは騎士たちの動揺を抑え込む。
「ミツル、妖精たちが!?」
強制労働させられていたのか、妖精たちが逃げ回っていた。
エネルギーの塊である妖精たちは、ガレキの下敷きになったとしても、別段死ぬわけじゃない。
だが、妖精たちの魔素自体は枯れていく。死にはしないが、復活のためにまた魔素を使うからだ。
なにより、寝覚めが悪い!
「助けるぞ!」
『援護致します。この【ロックウォール】で』
キナ子が土魔法で、妖精たちを守る壁を作る。
「だらあ! 喰らえ!」
オレはキナ子が作った土壁を駆け抜けた。ヒドラの頭より、上を取りに行く。
火と氷、どっちの魔法が効くんだ?
炎のブレスを吐いて、ヒドラが逃げるオークや騎士たちを焼き尽くす。
「ええい氷だ! 【アイスシャード】!」
氷の矢を、ヒドラの口に向けて放つ。
ノドを攻撃されたヒドラが、悶絶する。
「やったよ、ミツル!」
「いや。完璧じゃない」
ダメージは軽微。ヘイトがこっちに向いただけ。
「だったら! 【アイススピア】からの【天啓】!」
ロニが、特大の氷槍を生成する。
クリティカルを確定で出す天啓を、ロニは取ってやがったのか。まったく、火力バカだな、コイツは。
ヒドラの視線が、ロニへと向けられる。
「ロニ!」
オレは【チェイン・ライトニング】で、ヒドラのヘイトを稼ぐ。
「ぐお!?」
「ミツル!?」
オレは、ヒドラのシッポ攻撃をまともに食らった。
「大丈夫、ミツル!?」
「なんてことない、平気だ。ブレスでないだけ、マシだっつの」
しかし、当分は動けないだろうな。
「この、よくも! 【アイスジャベリン】!」
ロニの渾身の槍が、ヒドラの頭を一体潰す。
ダメージは、通っている。だが、まだヒドラはピンピンしてやがった。頭はまだ、六個くらいある。
どうやって、倒す?
弱点は、口の中だってわかった。しかし、簡単に開けてくれるわけじゃない。
こうしている間にも、違法ダンジョンは崩壊していく。
ヒドラの瞳が、光った。
紫に光る目が、キナ子に向けられる。あれは、呪いか。
キナ子の周りにいたオークたちが、石化したようにマヒする。
「キナ子!?」
『問題ありません』
唯一キナ子だけは、呪われていない。【ドクロの瞳】の効果で、呪いの効果を受けなかったようだ。
あれだけの首があって、一つしか呪い攻撃をしてこないとは。
「目が紫のヤツが、本体だ! あいつの顔にぶちかませ、ロニ!」
「わかった!」
また、【天啓】を【アイスジャベリン】を組み合わせる。
「オレも加勢してやる。【チャージド・リング】を受け取れ!」
ロニの母親がくれたアイテムを、オレはロニに投げ渡す。
「これで、威力は三倍だ! いけるぞ!」
「でも、ミツルが」
オレの方角に、紫の目をしたヒドラの頭が。
「やってみろよ!」
紫の目が、オレを射抜いた……かに思えた。
「【シャドウ・スタン】!」
魔力そのものの爆発によって、ヒドラの目を潰す。
ヒドラの目を、オレはスタンさせた。
ダメージを与えられない、しょうもない技だ。しかし、使い道ってもんはあるんだよ。
オレだって、ロニに教わらなかったら、わからなかったけどな。
「オレを敵に回したのが、テメエの運の尽きだ!」




