第4章 勝利なき帰還
第4章 勝利なき帰還
街はマークを、何事もなかったかのような騒がしさで迎えた。
人々が行き交い、商人が叫び、誰かが露店の前で言い争っている。世界はいつも通り動いていた。
そして彼だけが、まるで別の世界から引き裂かれて落ちてきた存在だった。
服は汚れ、腕には擦り傷、肩は転倒の痛みで重い。
彼はゆっくり歩いた。
剣はない。
成果もない。
マークは小さな屋台の前で立ち止まった。
年老いた女性が瓶や布包みを並べている。乾いた草の香りと、どこか温かい生活の匂いがした。
— どうしたんだい、若いの? と彼女は彼の状態に気づいて言った。
マークは少し言葉に詰まる。
— 包帯と…傷に効くものが必要です。
老婆は目を細め、彼の腕と顔の擦り傷を見た。
— ああ…初めての外出だね?
マークは短くうなずいた。
彼女は驚きもしない。ただ、何度も見てきたようなため息をついた。
— そこに座りな。立ってる場合じゃないよ。
彼女は隣の木箱を指さした。
マークは素直に座った。
老婆は商品を探し始める。
— ゴブリンかい?
— はい。
— ふむ…やっぱりね。
当然と言わんばかりにうなずく。
— 新人はみんなそこに行く。そして半分はこんな姿で戻る。
彼女は包帯を取り出した。
— ほら、これ。丈夫なやつだ。ケチるんじゃないよ。
— わかりました。
— それからこれも。
小さな瓶を見せる。
— これを塗れば、擦り傷や打撲は数日で治るよ。
マークは瓶を見つめた。
— これは、もう一つのものと何が違うんですか?
老婆は少し笑った。
— もう一つは「高いだけの英雄用」さ。痛みを楽しみたい連中が買うやつだよ。
鼻で笑うように言った。
— あんたにはまだ早い。
マークはうなずいた。
— ありがとうございます。
老婆は少しだけ優しい目になった。
— いいかい…新人でその状態なら、しばらくは一人で森に行くんじゃないよ。
マークは彼女を見た。
— わかりました。
彼女は肩をすくめた。
— まあ、生きてるだけマシさ。
マークは支払いを済ませ、包帯と薬を鞄にしまった。
彼は路地の壁にもたれて座り、手当てを始めた。
指が少し震えている。
薬は強い匂いだったが、痛みは確かに和らいだ。
マークは息を吐いた。
— …早すぎたか。
手を見つめる。
「剣すらまともに扱えなかった」
空腹は今になって強くなっていた。
彼は屋台の並ぶ通りへ向かった。
焼いた肉、パン、香辛料、甘い香りと煙。
人々は歩きながら食べている。
木の皿には様々な料理が並んでいた。
肉入りの温かいパン
とろみのあるスープ
チーズを挟んだパン
串焼きの肉
完全に知っているものではないが、食べられそうだった。
彼は屋台に近づいた。
若い店主が立っている。
— 何にする?
マークは料理を見た。
— 一番簡単で、腹にたまるものを。
— なら肉入りのパンだな。あとスープも付けとけ。
— それで。
店主は手早く包み、スープを器に注いだ。
マークは支払った。
また銀貨が減った。
彼は壁際に移動し、石の縁に座った。
パンは温かく、肉と香辛料の匂いがした。
スープは濃く、野菜と肉が入っている。
一口食べる。
その瞬間、ようやく自分がどれだけ空腹だったかを理解した。
彼はゆっくり食べた。
急がず、ただ口に運ぶ。
体がようやく落ち着きを取り戻していくようだった。
周囲では人々が話している。
— ギルド見たか?新人またゴブリン行きだってよ…
— みんなそこからだ。死に方を覚えるためにな。
マークは一瞬だけ動きを止めた。
だが何も言わない。
そのまま食べ続けた。
食べ終えると、少しだけ楽になっていた。
体ではなく、心が。
彼は器を見つめた。
— 単純な食事だな…
小さくつぶやく。
— でも、ちゃんと効く。
立ち上がる。
そして初めて、その日「次に何をするか」が少しだけ見えた気がした。




