第3章 彼のものではない道
第3章 彼のものではない道
マーク・オルロフは見知らぬ街の真ん中に立っていた。
街のざわめき、知らない声、食べ物と煙の匂い――それらすべてが同時に押し寄せてくる。世界は彼の知らない規則で動いていた。
彼は息を吐いた。
— よし…これからどうするか考えないと。
最初に必要なのは情報だった。
彼は近くの通行人に声をかけた。
— すみません…冒険者ギルドはどこですか?
男は彼を奇妙そうに見たが、やがて街の中心を指さした。
— まっすぐ行って、大きな石のアーチだ。間違えない。
— ありがとうございます。
ギルドは昼間は騒がしい場所らしいが、今はほとんど人がいなかった。
受付には数人の職員と書類だけがあり、静かだった。
冒険者の多くは依頼やダンジョンに出ているのだろう。
マークは受付へ向かった。
— 登録をお願いします。
受付の女性は疲れた目で彼を見上げたが、すぐに態度を整えた。
— 新人ですね。名前は?
— マーク・オルロフです。
手続きは淡々と進んだ。書類、登録、駆け出し冒険者の証。
まるで彼が単に名簿に追加されただけのようだった。
すべてが終わると、マークは尋ねた。
— 新人は普通、何をするんですか?
女性は即答した。
— ゴブリンです。
— ゴブリン?
— この辺りで一番弱い魔物です。新人はそこへ行きます。ほとんどの人は問題ありません。
肩をすくめる。
— 他に安全な選択肢はありません。
マークはうなずいた。
— わかりました。
彼はギルドを出た。
外では太陽が傾き始めていた。
「ゴブリン…つまり魔物か」
自分の手を見る。
普通の手だ。力も武器も経験もない。
— 当然か…まずは簡単なところからだ。
しかし問題があった。
彼には何もなかった。
武器も装備も。
彼は市場へ向かった。
街は騒がしく、狭かった。屋台、商人の叫び声、金属と食べ物の匂い。
少し探して、彼は買えるものを見つけた。
古い剣だった。
刃は少し欠け、表面はくすんでいる。
— いくらですか?とマークは尋ねた。
— 銀貨二枚だ、と商人は気だるそうに答えた。
彼は銀貨を確認した。
五枚。
黙って二枚を差し出す。
街の外へ出た。
道は森へと続いていた。
そこにゴブリンがいるという。
彼は一人だった。
剣は重く、扱いにくかった。
「私は心理学者だ…」
その言葉が頭の中で奇妙に響く。
「今は剣を持って森に行き、魔物と戦っている…」
彼は息を吐いた。
森は静かだった。
だがそれは平穏な静けさではない。むしろ警戒の静けさだった。何かを待っているような空気。
マークは木々の間で止まった。
剣は他人のもののように感じられた。
彼は息を吐く。
— ゴブリン…どこかにいるはずだ。
音。
左側。
彼は振り向いた。
何もいない。
心拍が少し上がる。
「ただの動物だ…魔物だ…対象だ」
一歩進む。
その瞬間、茂みから影が飛び出した。
低く、灰色で、速い。
— …ゴブリン。
別の音。
後ろ。
振り向くと、もう一体いた。
すぐには襲ってこない。
観察している。
まるで彼が戦士ではないと理解しているかのように。
— よし…距離、制御、落ち着け。
彼は剣を構えた。
手が震える。
最初のゴブリンが突進した。
速すぎる。
彼は振り下ろしたが、動きは遅れ、空を切った。
ゴブリンの一撃が脇腹に入る。
痛い。
鋭い痛み。
マークはよろめいた。
— くそっ…
もう一体が側面に回る。
再び攻撃。今度は強く振ったが技術がない。
かわされ、また打たれる。
状況が崩れていく。
音が大きくなる。
動きが速くなる。
恐怖が胸に広がる。
「無理だ」
もう一度振るが当たらない。
ゴブリンが短く鳴き、嘲笑うような動き。
一撃。
さらに一撃。
マークは後ろに下がり、木の根に足を取られて転びそうになる。
剣が手から落ちた。
鈍い金属音。
沈黙。
その一瞬が最悪だった。
ゴブリンが近づく。
マークは息を吐いた。
— 無理だ…無理だ、無理だ…
振り返る。
走った。
森が流れるように過ぎていく。
枝が顔に当たる。
息が乱れる。
背後から追跡音。
彼らは追ってくる。
— 僕は…戦士じゃない…
転倒し、地面に倒れ、肩を打つ。
痛みが走る。
それでも立ち上がる。
また走る。
どれだけ走ったかわからない。
やがて音が遠ざかる。
彼は木の陰で膝をついた。
荒い呼吸。
手が震えている。
泥だらけの手。
剣はもうなかった。
森のどこかに置き去りだった。
目を閉じる。
— …これは、僕の役割じゃない。
静寂。
しばらく座っていた。
そしてゆっくり立ち上がる。
振り返らずに、道へ戻っていった。




