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第23章 異世界からの手紙

第23章 異世界からの手紙


朝はいつになく静かだった。


マーク・オルロフは急いでいなかった。


長い間ずっと続いていたような、診察室へ向かう義務も、朝一番から他人の問題を処理する必要も、今日はない。


来客は夕方からだ。


つまり——


時間がある。


彼は窓辺に座り、ゆっくりと差し込む光を眺めていた。


植物が朝の風に揺れている。


それは奇妙な感覚だった。


「努力しなくてもそこにある平穏」


彼は結局、下へ降りた。


休息よりも習慣が勝つ。


エドワード・マルクロウはすでに作業場にいた。


炎、金属、規則的な打撃音。


いつも通りの光景。


しかし今日は違った。


— 手紙だ。


マークは動きを止めた。


— 手紙?


この言葉は、この世界ではあまりに馴染みがない。


彼に手紙を書く者など、いない。


エドワードは紙包みを差し出した。


厚い紙、整った封蝋。


マークはゆっくりと受け取る。


「誰からだ?」


問いは声にならなかった。


彼は手紙を開いた。


筆跡は丁寧で、しかし少しだけ揺れていた。


書いた人間が、迷いながらも言葉を選んでいるのが分かる。


そして、記憶が一人の顔を呼び起こした。


リラ


適応できなかった少女。


強くなろうとして、壊れかけていた少女。


彼が言った言葉——


「君は英雄になる必要はない」


リラの手紙


マークへ


ありがとう。


本当に。


最初は、何に感謝しているのか自分でも分かりませんでした。


でも今は少し分かる気がします。


私はずっと強くなろうとしていました。


ずっと。


でもそれは私のものではありませんでした。


できなければ自分が悪いと思っていました。


努力が足りないのだと。


でも違いました。


それに気づくまで時間がかかりました。


そして、受け入れるにはもっと時間が必要でした。


今の私は、以前とは違う場所にいます。


王都の工房で働いています。


最初は誰にも受け入れられませんでした。


私の服はこの世界では奇妙だったからです。


でも諦めませんでした。


小さな発表会を開きました。


誰も来ないと思っていました。


でも来てくれました。


そして、受け入れてくれました。


今では仕事の依頼が途切れません。


時々怖くなるほどです。


でもそれ以上に、不思議なことがあります。


私はここにいることに慣れ始めています。


この世界が「自分の場所」だと思えるようになりました。


それが、安心というものなのかもしれません。


あの時、私を無理に押し出さなかったことに感謝します。


あなたの仕事がうまくいっていることを願っています。


——リラ


マークはしばらく動かなかった。


手紙をもう一度読む。


ゆっくりと。


最後の一文を確認するように。


彼女は生き延びたのではない。


適応したのだ。


成功した。


そしてその事実が、静かに胸に落ちていく。


「うまくいっている」


その思いは、予想以上に穏やかだった。


彼は窓の外を見る。


街はいつも通り動いている。


彼は人を助けてきた。


毎日。


言葉を与え、方向を示し、崩れないように支えてきた。


しかし——


ふと、問いが浮かぶ。


「では、自分は?」


感情ではなく、観察としての疑問。


「これは、自分が望んだ人生なのか?」


答えはすぐに出なかった。


鍛冶場の音が下から響く。


世界は進んでいる。


そして彼だけが、その間で立ち止まっている。


マークはゆっくりと手紙を折りたたんだ。


丁寧に。


必要以上に。


そして気づく。


この問いは、急いで答える必要がない。


それ自体が、すでに変化だった。

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