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第17章 癒えない亀裂(セッション2)

第17章 癒えない亀裂(セッション2)


ノックは鋭かった。


今度は迷いがなかった。


「どうぞ」彼は落ち着いて言った。


ドアが開く。


最初のセッションに来た、あの冒険者。


だが、以前とは違っていた。


カイル・ヴォーレン。


雰囲気が変わっている。


強くなったわけではない。


だが、まとまっていた。


すでに選択を終え、それでもなお、その結果を手放せていない者のように。


彼は座った。


無言で。


「まだ続いてる」彼はすぐに言った。


マークは「誰が」とは聞かなかった。


待った。


カイルは指を強く握る。


「元のパーティーだ」


間。


「やめてない」


マークは静かに尋ねた。


「どういう意味で?」


カイルは短く笑う。


喜びはない。


「同じことだ」


間。


「顔を合わせれば嘲笑」


「背後で冗談」


「“弱虫”、“足手まとい”、“逃げた奴”」


彼は視線を逸らす。


「知らないふりをされることもある」


間。


「もっと悪い時もある」


マークはうなずいた。


「“もっと悪い”とは?」


カイルは一瞬黙る。


「契約を潰される」


「信用がないって吹き込まれる」


「一度は、ダンジョンでパーティーを見捨てたって言われた」


彼は拳を握る。


「実際は、あいつらが俺を置いていったのに」


沈黙。


マークは落ち着いて言う。


「それをどう受け取っている?」


カイルは即座に。


「嘘だ」


間。


「でも、それじゃ足りない」


息を吐く。


「人はあいつらの方を信じる」


マークはうなずく。


「彼らには積み重ねがあるからだ」


カイルは彼を見る。


「じゃあ、どうすればいい?」


マークは急がない。


「聞くが」静かに言った。


「彼らの態度を取り戻したいのか?」


カイルは苦く笑う。


「いや」


間。


「ただ、俺の人生に干渉するのをやめさせたい」


マークはうなずいた。


「現実的な目標だ」


間。


「なら問題は、彼らの評価を変えることではない」


まっすぐに見る。


「他人にそれを押し付けられたとき、君がどう応じるかだ」


カイルは眉をひそめる。


「つまり……無視か?」


マークは言う。


「完全な無視ではない」


間。


「無視もまた反応の一つだ」


少し前に身を乗り出す。


「重要なのは、応答しないことではない」


「どの応答を選ぶかだ」


カイルは低く言う。


「あいつらはわざとやってる」


マーク。


「そうだ」


間。


「効果があるからだ」


カイルは顔を上げる。


「どういう意味だ?」


マークは静かに説明する。


「君が感情で反応する限り、彼らは君の状態を支配できる」


間。


「それは一種の支配だ」


カイルは黙り込む。


「じゃあ、どうすればいい?」と小さく問う。


マークは簡潔に答えた。


「期待されている結果を与えないことだ」


間。


「彼らが望んでいるのは――」


怒ること

弁解すること

折れること


彼を見た。


「それが起きなければ、彼らは手段を失う」


カイルは笑う。


「簡単そうだな」


マークは静かに。


「簡単ではない」


間。


「だが制御はできる」


カイルはゆっくり立ち上がる。


「それでも、やめないだろ」


マークはうなずく。


「そうかもしれない」


間。


「だが、もうそのゲームに参加する義務はない」


ドアの前でカイルは止まる。


「また評判を壊されたら?」


マークは答える。


「その分、自分で積み上げる」


間。


「壊される速度より速く」


カイルはうなずいた。


完全ではない。


だが、以前の緊張はない。


「やってみる」


そして出ていった。


マークは一人になった。


そしてその日、初めて考えた。


「問題は、壊してくる相手だけではない」


「自分の物語の中心に、彼らを置き続けていることでもある」


カイルが去った後、ドアはいつもより静かに閉まった。


マークはすぐには仕事に戻らなかった。


座ったまま。


これまで見てきたものが、別の形で結びついていく。


「彼の問題は、会話だけでは終わらない」


彼はダンジョンを思い出す。


戦いではなく、パーティーを。


ドレンが怒っていたのは性格ではなく、制御を失っていたから。


ミラが思考より先に動いていたこと。


グレインが自信ではなく、遅れる恐怖で盾を構えていたこと。


そして何より。


「彼らは理想的なチームとして生き延びていたわけではない」


「緊張で保たれた、一時的なシステムとして機能していた」


マークはゆっくり息を吐く。


構造が見えた。


カイルは例外ではない。


システムの外に出ただけで、その影響の内側にいる。


「集団が人を壊し始めたとき、離脱は衝撃を消さない」


間。


「ただ、遅れて現れるだけだ」


彼は立ち上がり、窓へ向かう。


街はいつも通り動いている。


職人。


冒険者。


何気ない会話。


そしてマークは、もはや治療者としてではなく、現場を見た者として考えた。


「彼には厳しい」


弱いからではない。


理由は三つ。


元のパーティーがすぐには手放さない

新しい生活がまだ形になっていない

古いレッテルがどこでも追ってくる


そして最も厄介なのは。


「彼自身が、まだ反応してしまうことだ」


夕方、工房はいつもより静かだった。


エドワード・マルクロウはいつも通り黙って働いていたが、時折マークに視線を送る。


何も聞かない。


ただ見ている。


マークは自分の一角の机に座っていた。


目の前には古い板。


以前は、不器用にこう書かれていた。


「心理相談 困りごとの支援」


彼は長くそれを見つめた。


間。


「弱い……表現だな」と小さくつぶやく。


それが以前は「頼み方」だったと気づく。


今は違う。


招きではなく。


断言だ。


彼はチョークを取った。


板がかすかに軋む。


書き直す。


ゆっくり。


丁寧に。


一つ一つの言葉が、視線だけでなく、誰かの人生に耐えるように。


一瞬、手を止める。


そして選んだ。


新しい文。


「世界がわからなくなったとき、自分を整理する手助けをする」


彼はそれを見た。


長く。


間。


「近づいたな」と小さく言う。


だが終わらせない。


下に、小さく付け加える。


「たとえ戻れなくても、先へ進む方向は選べる」


マークは立ち上がる。


板を持つ。


そして工房の一角の入口に固定した。


場所の印象が変わる。


店ではない。


露店でもない。


ただの一角でもない。


行き先を見失ったとき、誰かが来られる点になる。


エドワードは手を止めずに言った。


「いい文だな」


間。


「壊れた人間が来る前提みたいだが」


マークは静かに答えた。


「もう来ている」


エドワードは鼻で笑う。


「なら、看板より上手くやれ」


マークはうなずく。


「そのつもりです」


一人になると、彼はもう一度看板を見る。


そして初めて、課題ではなく方向を定めた。


「人は壊れた瞬間に来る」


間。


「なら、理想を待つ必要はない」


「現実の中で働けるようになることだ」


彼は机に戻る。


そして仕事を続けた。

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