表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銀の魔女の憂鬱〜ここが乙女ゲームの世界だったなんて聞いていない〜  作者: 白雲八鈴


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

65/72

65 ここだと寂しくはないのだな

「ユエ。人が隠していることを無理に知ろうとはしてはいけない。ギルスはあの姿を自分自身だと受け入れている。けれど、どうしても治らない怪我を受け入れられない人がいることも、ユエは知っているはずだよね」


 例えば病気で腐り落ちてしまった体を治せと言われても組織が壊死してしまえば、その先に新しい組織が構築できるわけも無く、切り落とすしかなくなる。

 火傷も皮膚の奥までいってしまうと新たな細胞を作れなくなる。


 衛生士個人によって回復できる状況は変わってくるが、ハルドなら多少の再生能力のない細胞でも無理やり回復してしまう。しかし、私のように一本の腕を生やすところまではできない。


 ちなみに私はハルド以上の治癒の魔術は使えないということになっている。私がハルド以上に回復できると知られれば、王侯貴族に良いように使われてしまうことは目に見えているので、この国で一番の回復魔術を使えるのはハルドということになっているのだ。まぁ、王宮の侍医を除いてという条件つきだが。


 私は魔物討伐で四肢を失った者のみに私の力を使うようにしている。彼らが、というかレイラが、聖騎士団以外の者に私の能力を喋ろうものなら制裁を加えると堂々と言っていたため、聖騎士団の者以外にはバレてはいない。


「そうなんですけどぉ。ここの食堂の料理長はリーゼ様に色々仕込まれた人ですから、絶対に気にいると思ったんですぅ。だって、私も休みの日でも騎士隊の食堂に食べに来ちゃいますからぁ」


 色々仕込んだというか、美味しいご飯が食べたかったし、美味しいご飯は騎士たちの士気を保つにはいい効果だったりするのだ。


「パンもふかふかで良い香りだしぃ、日替わりのスープも絶品。毎日、違う食事が食べられるなんて、いいですよねぇ。あと私、プリンが大好きなんですぅ。なめらかな甘みとほろ苦さが口いっぱいに広がるプリン!プリン!プリン!」


 ユエ、なぜ私を見ながらプリンを連呼するの?そう言うと出てくると思っているの?


「私はシュークリームが好きです」


 狐のお面を付けたギルスがいつの間にか私の目の前に座ってシュークリームが好きだと言ってきた。


 これから数時間は頑張ってもらわないといけないので、二人に催促された作り置きをしていたプリンとシュークリームを二人の前に置く。

 二人は嬉しそうな顔をしながら食べ始めた。



 泣きながら騎士たちの治療をしていたユエにご褒美としてプリンを出した時も、泣いていたのにケロっとして嬉しそうに食べていた。


 魔物から逃げ出して空になった村に一人取り残されたギルスを連れてきて初めてシュークリームを食べさせたら、とても驚いていた。


 まだ、少女や少年と言っていい歳で騎士団に入ってきた二人。今は立派な大人になっても好きなものは変わりないみたい。ふふふ。


「アリアはここだと寂しくはないのだな」


 隣からそんな言葉が降ってきた。私が寂しい?どこからそんな言葉が出てくるのか。ここだろうが、どこだろうが私は変わらない。


「私は寂しいと思ったことなんてないよ」


 そう言うと、プリンを半分程食べ終わったユエが前のめりで同意してきた。


「わかりますぅ。だから、食事は皆で取るようにしているのですぅ」


 え?なにそれ。


「あんなクソ王子の婚約者にされて、12歳の子供に魔物の討伐隊を作れっていう国王はろくでなしですよねぇ。それも親から離されてリーゼ様一人でですよぉ」


 確かに酷いなぁとは思ったけど、国王陛下をろくでなしだと思ったことはないよ。


「家族と引き離されて、寂しいだろうから、父にお姉さんになってやれと言われて聖騎士団に入ったのに、まさか逆に私のほうが慰められるし」


 ん?


「あの父に向かって殴っているのを目にした時、サーシャ様が寂しさを紛らわしているだけよって言われて、流石、オヴァール伯爵令嬢だなって思ったのですぅ」


 あ、いやそれ違うし、腹がとてもたったから、ぶん殴っただけだ。なんで、寂しいからと言って人を殴らないといけないのか?

 となり!笑うところじゃない!


「ユエ、ハルドを殴ったのは、怪我人を放置してサボっていたから、殴っただけ。例え、クレーネ侯爵家の3男だろうが衛生士の役目を果たさずに裏庭でタバコを吸っていたら、殴るよね」


「おかげで、父はリーゼ様がいるときは働くようになったのですぅ」


 え?何、私がいるとき()って、それじゃまるでこの2年間は働いていないみたいじゃない?


「流石に、魔物討伐のスペシャリスト集団の姫に逆らうなんて出来ないですよぉ。でも、リーゼ様は時々寂しそうにどこか遠くを見ていらっしゃることがあるので、ここじゃ、皆で一緒にご飯を食べることになっているのですぅ。一緒に食事をした者は皆家族なのですよぉ」


 私、そんなこと初耳だけど?大抵、レイラかサーシャに誘われて食堂に来て、4人掛けのテーブルで食事を取っていただけ。それにハルドが加わるか、いつの間にかイオブライが座っていたりした。

 空いている席に座るのは決まって衛生隊の者か、しれっと第0小隊の者が座っていたぐらいだった。

 これはあれか、苦楽を共にした者たちが一緒に食事を取ると親しい間柄になるというものか。


「だから、お兄さんも一緒にここの食事を取るとよいですよぅ」



補足

 リーゼがハルドの事をクレーネ侯爵家の3男と言っておりますが、正確にはクオーツ準男爵の貴族位を賜っているので、名誉貴族となります。地位的には聖女としてのリーゼの方が上だったので、娘と変わらぬ少女の言葉でも元侯爵家の3男は聞かざるおえなかったのです。因みに孫というのは長男の子になります。


脱字報告ありがとうございます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ