35 騎獣の問題ではない問題は・・・
「申し訳ございません。お嬢様にこのような所にお泊りさせてしまうなんて」
扉の向こうでアレンが謝っているが、全くもってアレンは関係のないことだ。私があの宿に泊まる資格がないと判断されただけ。
「アレンはサヴェルお兄様の侍従なのだから、私に謝る必要はないでしょ?それに、昨日遅くまでキマイラの討伐をしていたのだから、アレンは関係が無いことだし、もう少し休んでいてもいいと思うよ」
「しかし」
「アレン。お兄様の所に戻って、私は大丈夫だから」
そう言うと扉の向こうのアレンは『申し訳ございませんでした』と言葉を残し、気配が去っていった。
「はぁ」
謝る必要は無いと言ったのに、アレンは真面目すぎる。だから、あの愚兄に良いように使われているのだけど。
「アリアは皆に好かれているんだな」
目の端に赤色が映り込む。好かれているというより強者に対する崇拝と言い換えたほうかしっくりくるだろう。特にオヴァール領の者たちからはその思考を強く感じる。
「アレンは愚兄に言われて来ただけ、·····で、なんでそんなに距離が近いのか、聞いてもいい?」
私は何故か強制的に彼の方に向かされるように頬に手を添えられていた。昨日までこんなこと無かったのに、なぜ、このような態度を取られるのかわからない。
「アリアが綺麗だから皆の視線を集めていただろ?誰かに取られるのは嫌だし、アリアが俺以外に目を向けるのは嫌だと思ったから」
「は?」
私は彼に怪訝な視線を向ける。何を言っているのか。視線を集めていたのは怪しい仮面を被った彼の方だと思うけど?
冒険者ギルドでも·····受付けの女性は私にビビっていたけど、あれは私が怒っていたからだよね。うん。
それに私を綺麗だとか、取られるとか、なに意味がわからないことを言っているのか。今まで誰にも声なんて掛けられたことなんて無かったのに、馬鹿じゃないの?
私をかわいいとか言うのは家族が贔屓目で言うぐらいだ。あと、色々問題行動を起こす奴らぐらい。
「もしかして自覚がない?」
「何が?」
シヴァ side
これは思っても見なかった反応だ。髪や目の色なんて些細なこと。アリアは美人だ。昨日、このリレイシルに入って特に思った。アリアは人の視線を集めると。
背筋を伸ばし黒髪をなびかせ颯爽と歩く姿は人の視線を集め、白い素肌に大きな瞳を縁取る長いまつ毛は意思の強さが感じられ、常にキセルを咥えた唇はぷっくりとして愛らしい。妖精女王の祝福された衣服はあまり見られない形で、人の目を引き付ける。しかし、あの足は駄目だな。後で、外套を購入しよう。
昨日、兄だと言った男を見てもわかるが、煌めく銀髪にすみれ色の瞳を纏ったアリアは庇護欲をそそる儚さを持っていた。人の視線を奪う美しさだ。
思わず口づけをしてしまっていた。
絶対に離すものか。
「今後の予定は?」
王都に行くと言っていたから、他の街に寄ると言うなら、色々考えなければならない。
「今後?はぁ、王都まで騎獣で行けばいいのだけど」
騎獣?何が問題なんだ?騎獣ならここで購入できるんじゃないのか?
「普通の騎獣じゃ駄目なのか?」
アリアは視線を反らして口ごもりながら答えた。
「普通の騎獣は····半日持てばいい?」
半日?
「血反吐を吐きながら倒れる?」
血反吐?騎獣が?
「高位の魔獣クラスなら大丈夫なのだけど、普通の騎獣は私の漏れる魔力に耐えきれない。でもこれは2年前までのことだから·····今だとほぼ無理?」
流石にあの魔素の濃い竜の谷で普通に生活をしていただけのことはある。俺は魔素の濃いさなんて関係ない。
いや、今まで関係無いと思っていたが、そもそも俺には俺の魔力など存在してなかった。どう言うわけか俺自身は魔素の影響を受けなかっただけだったのだが。
「だから、自力で王都に行くことになる」
「王都以外にどこか寄るのか?」
「ん?どこも寄らないけど、途中にあるハイメーラがどういう状況か確認はしておく」
昨日、アリアの兄が言っていたところか、人が住めなくなったという。アリアは煙を吐いて空間に手を差し込む。いつ見ても不思議な光景だ。
「朝ごはん食べる?」
空間からパンとスープと肉が出てきた。一昨日に大量に作っていものだ。それを床に並べ出した。ここには大きなテーブルが無いから仕方がないか。
アリアの作る食事は変わったものが多いが美味しい。昨日、アリアが食事に殆ど手を付けなかったのがわかるというものだ。アリアのご飯を食べると他の物が食べれなくなるな。
そう言えば寝ている時に寝言で言っていたグレーリーとは誰だ。
誤字報告ありがとうございます。




