表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/221

第4章【モブキャラ気質なのに少年漫画の主人公みたいで申し訳ありません】6

4.10.23.軽微なミスを修正しました。

第6話【お前魔物だろ】




レンの帰りを待つモリスン、ケージ、リンネ、そしてレンの留守の護衛を任されたミーユは、特にすることもなく、木の根に腰掛けてそれぞれの時間を過ごしていた。


「へぇ、じゃあミッツさんがいなかったら、2人とも危なかったかもしれないんだね」


「うん。ミーユね、さいしょね、ミッツのことね、クマさんだとおもったんだよ」


「あははっ、本当だ、クマさんみたいだね」


2人で他愛も無い会話をするミーユとリンネ。年頃の女子と幼女の、見ているだけでもホッコリする組み合わせに、殺風景な森も花が咲いたように華やいで見える。


「じゃあ、ミッツさんには感謝しないとなぁ。ミッツさんが居なかったら、私はレン様と巡り会えてなかったかもしれないもんね」


ニヤケた顔を、抱えた膝に隠すリンネ。


「リンネねえ、レンにいのことすきなの?」


顔を赤らめて話すリンネに、直感型の幼女がズバリと言う。


「え!?そ、そ、そ、それは!!えと、ミ、ミーユちゃんがそういうことに興味持つのはまだ早いよ!!」


突然、自分の心情の奥深くを突かれたリンネは、純情系少女漫画風キャラの如く、両手を突き出してクリクリと振り、必死に誤魔化す。




「バレバレだっつーの…」


「なんか言いました?」


対して、耳を攲てれば何とか会話が聞こえる程度に女子2人から離れて座る、ケージとモリスン。


向こうには聞こえない程度の小声で呟いたつもりのケージだが、隣のモリスンにもよく聞こえていなかったようだ。


「いや、若ぇモンはいいねーって」


言い直すのも面倒なので、少し違う言葉で返すケージ。


「そうっすかね。僕は、ミッツさんぐらいの大人が1番いい気がします」


そんなケージの誤魔化した言い方を、ストレートに拾って返すモリスン。


「なんでだ?」


「経験値もあって、体力もあって、でもまだ目指す上があって、逆に慕う若者もいて、凄くいいと思います」


「うん。お前、今何気に遠回しに俺を『ディスった』よな」


「え?ディス?なんですか?」


「なんでもねーよ」


ミッツぐらいの歳…と言うが、ミッツの実年齢を知らないモリスンは、ミッツの見た目年齢である30歳前後を指して言った。


今の言い回しを若干の被害妄想を加えて深読みしてしまうと、それ以上の年齢層はもう人生のピークを過ぎて終わっている、なんていう捻くれた解釈になってしまう…そんな事をケージは思ったのだが、物事を細かく説明するのも面倒な性格が、なんでもねーよと話を締めくくる。


「何か来るよ!!」


突然、ほのぼのとした空気感を打ち破るように、ミーユが立ち上がって叫んだ。


全員が辺りを警戒して、魔犬が吠え…



…ッ……ンッ……ドンッ……ドンッ!!



何か大きな物で地面を打ち鳴らすような音が、物凄いスピードで近付いて来たかと思うと



ザザーッ!!



次の瞬間、北側の茂みから白い影が木の葉を撒き散らしながら躍り出て、地面を数m滑って止まった。


「こんにちは、人間の魔法使い供」


「あ、ジョゼフさ……じゃない?あ、こんにちはー」


ミーユがジョゼフと見間違えたのも無理はない。


足首まである長いローブの様な羽織りと、その下から覗くゆったりした作りのズボン。頭には丸い玉を乗せたような大きな帽子と、形状は大きく異なるが、その全てがジョゼフと同じ白で統一されている。


だが、身長や体格、顔立ちもジョゼフとは違うし、ジョゼフは同じ白い服でも襟のあるピシッとした服装をしていた。


ミーユでも、別人だと直ぐにわかった。


「俺とジョゼフを間違えるなんて、ちょっと失礼だよ。せっかくお行儀よく挨拶が出来たのに」


優しく響く低音ボイスで、男はこちらを全く警戒する事なく、ごく自然な態度で話をする。


ミーユも自然に構えてはいるが、内心では得体の知れない気配に気圧されそうなのを、必死に堪えていた。


まだ6歳のミーユが、レンからこの場を託された責任感のみで立っている。


「今日はずいぶん『ジャンプ』な日だな」


ケージが意味不明なことを呟く。


「ミーユちゃん、知ってる人?」


リンネは、震える声でミーユの後ろに隠れながら聞いた。


「ううん、しらない。ジョゼフさんとおんなじふくきてるからまちがえた」


リンネの震える声に、ミーユは意識して平然とした声で答える。


「なるほど、この服か。デザインはだいぶ違うんだけどな。確かに見慣れないヤツからしたら同じに見えるかも。ま、それなら間違えたことも許そうか」


「ありがとう」


許してもらえて、素直に感謝するミーユ。


「で、アンタ何者だ?森の奥から飛んで来たように見えたが」


幼いミーユが気丈に対峙しているのを見て、この場の最年長であるケージがミーユよりも前へ出る。


その様子を見て、モリスンも気を持ち直して槍を構えた。


「俺が何者とか、今はどうでもいい」


そんなケージを一瞥し、面倒くさそうに答える男。


この場の話し相手としてふさわしく無いと判断し、視線をミーユに戻す。


どうやら、年齢や性別よりも、完全実力主義派のようだ。


「お前、俺を除けば今この森で2番目に魔力値の高い…」


「いや、俺たちからしたら重要な…」


ほぼスルーされ、少しイラッとしたケージが、ミーユに向かって話し始めた白い服の男の言葉を遮るように、自分の話を聞かせようとする、が…


「どうでもいいっつったろ」


ドンッ!!


「ガハッ!?」


白い男が無造作に手を振る。ただそれだけで、爆風に煽られたようにケージが吹っ飛ぶ。


普通の歩幅で10歩以上離れていたにもかかわらず。


ケージは、数メートル後ろの木の幹に当たって崩れ落ちた。


「ガッ……ハッ……」


「ケージさん!!」


モリスンが駆け寄る。苦しそうだが息はある。


その様子を見て、直ぐに治療する必要が無いと判断したミーユが、白い男に向き直し、小さな右手を翳した。


「ほう、やる気か?」


白い男の言葉が終わらぬうちに、翳したミーユの小さな手にバチバチッと紫電が走ったかと思うと、雷鳴さえ轟かせ大きな放電が白い男を襲う。


「こんなもの、避けてしまえばどうということはない」


だが、声はミーユの後ろから聞こえた。


「わっ!?」


慌てて振り返るミーユだが、魔法を放ったままの右手を掴まれて宙吊りにされる。


「前言撤回、最悪な躾のガキだな」



ヒュッ



そこへ、空気を切り裂いて何かが白い男の顔へ飛んで来た。


男はミーユを手放し、紙一重で避けると、その何かが飛んで来た方を凝視する。


「この魔力、本命が来たねぇ…」


白い男を狙った、大きな弧を描く細長い石柱は、そのまま地面に突き刺さり、高速で縮みながらその男を出現させた。


白い男は、飛んで来た男にカウンターの拳を振るう。


が、飛んで来た男は直前で真上へ飛び上がり、錐揉みするように着地した。


「レン様!!」


リンネが頬を紅潮させ、想いを寄せる人の名を呼ぶ。


「師匠!!」


モリスンが、安堵の表情で尊敬する男の敬称を呼んだ。


「レンにい!!」


この世界で最も信頼している大好きなお兄ちゃんの名を、ミーユは叫ぶ。


「ぐッ…レ、レン…」


まだ呼吸も落ち着かないのに、無理にその男の名を口にしたケージ。


「ケージさん、喋らないで!!」


側にいるモリスンが、起き上がろうとするケージを寝かせる。


「なるほど、この程度の連中が待ちわびるほどには実力がある、ということかな?」


白い服の男は、レンを見てニヤリと笑う。が、レンが腰に下げた鞘に石刀を収める様を見て、俄に表情を変えた。


『日本刀?』


「ミーユ、ケージさん見てやって」


「わかった」


レンは、白い服の男の言葉には反応せず、場の様子を見て指示を出す。


ミーユは、白い服の男の動向を警戒しながら、ケージに向かって走る。


「治ったら、みんな魔犬に乗ってここから離れて」


「ほう、やる気か?」


みんな離れて……レンの言ったその言葉を、巻き込まれないように逃げろと同義だと、白い服の男は解釈する。


「そんな、レン様は!?」


この危機的状況の中、若干芝居掛かった声で妙な色気を醸し出すのは、ヒーローのように登場したレンに対し、物語のヒロインになりきっているリンネ。どこか危機感が抜けているように見える彼女も、レンは無視する。


「ミッツ達にはもう森を出るように伝えてあるから、砦で合流して待ってて」


「わかりました!!」


誰に言うでもなく言った言葉に、モリスンが答える。


「おい、小僧」


白い服の男が少しイラついた声音でレンに言う。


ここまでの様子から、レンが自分の話を全く聞いていない事に気が付いた。


「何勝手に話し進めてんだ?俺を無視す…!?」


その斬撃に、白い男は迫り来るまで気付かなかった。


軌道の真ん中で気付き、徒歩で3日かかる距離を僅か数時間で駆け抜けた身体能力を持ってして、なんとか躱す。


「あの状態からノーモーションで『抜刀』かよ…やるねぇ」


刀が伸びたのは、先程伸びる石柱で飛んで来たので今更驚かなかったが、鞘から抜いた瞬間を自分が見逃したことの方が驚愕だったようだ。


「お前魔物だろ?敵対する魔物相手に話しをする気はない」


レンは石刀を構える。


その殺気に、周囲に居た魔物達が逃げ出した。






2頭の魔犬に先導され、ミッツ、ミリィサ、ヴァルチャルは魔犬に乗って森の中を駆けていた。


ミリィサは乗馬の経験もあるため、最初こそ犬に乗るという事自体におっかなびっくりだったが、慣れてしまえば普通に乗りこなしていた。


ミッツも、自分の巨躯をどれだけ支えられるか不安だったが、思ったよりしっかり走ってくれるので、安心して乗っていた。だが、流石に疲れさせてしまうと思い、セシリアと合流した時点で別の魔犬に乗り換えようと思っていた。


「ああ…あああ……ああああ……」


危ないのはヴァルチャルだった。


馬に乗った経験もないヴァルチャルは、魔犬の背に必死にしがみつき、真っ青な顔で何とか耐えている。


もちろん、魔犬に乗って移動すると言った時も、断固拒絶していた。


これでは、レンが先に森から出ろと言った意味がなくなってしまうと思ったミリィサが「ミーユも乗ってたよ」と咄嗟に言うと


「聖女様もお乗りに!?な、ならば、私が逃げるわけには行きませんね!!」


と、途端にやる気になってくれた。


結果は見ての通りだが、乗って居るだけマシだった。




「ウォン、ウォン」


しばらく走ると、先導する魔犬が何かを知らせるように吠えた。


「おおおおお!!」


そして、突然茂みから飛び出して来たトビーが、何故か槍を構え雄叫びを上げながら突っ込んで来た。


「うおっ!?」


慌てて回避するミッツ。後続の魔犬たちも、ミッツを乗せた魔犬に倣って左右に避ける。


「ミッツ!?トビー待て!!ミッツだ!!」


「え!?」


トビーの向こうで、右腕に紫電を走らせるセシリアが叫んで、トビーを止めた。




「とまぁ、そういうわけだ。俺は実際に何が起きたか見たわけではないが、あのレンがあそこまで言うから」


セシリアチームと合流し、ミッツが事の顛末をザックリと説明する。


「なるほど、じゃあアレはその影響だな」


セシリアが指差す方を見ると、こちらに向かっていくつもの魔物の群れが全速力で駆けて来るのが見えた。


「どっかで見た光景だ」


ミッツは、数ヶ月前の魔物の森での狩りを思い出した。


あの時も、魔物の森を何日も進まないと居ないはずの強力な魔物が浅層域に現れたことで、弱い魔物たちが一斉に逃げていた。


ということは、やはり森の奥で何かが起きているのは間違いない。


「どうする?」


ニヤリと笑うセシリア。


魔物狩りがしたくてウズウズしているのだろう。実に素直な婚約者だと、ミッツも思わずニヤケた。


「町や村へ雪崩れ込まれても敵わん。やるぞ」


ミッツの言葉を聞いたセシリアは、返事をする間も無く魔物の群に飛び込んで行く。


やがで雷鳴が轟き、魔物の断末魔が聞こえてきた。


「ユキさん、すまないがとにかく皆んなで砦まで戻ってくれ。直ぐにミーユやモリスン達も合流するはずだ」


「わかったわ」


比較的落ち着いているが、その顔には緊張の色が浮かんでいるユキ。


仕方がない。守られる前提で森へ来ている非戦闘員なのだ。


「ミリィサ、数日とはいえ魔物との戦闘経験があるのはお前だけだ。何かあったら任せることになるが、無理はするな。危険だと思ったら魔犬に任せて、とにかく皆んなで逃げればいいからな。俺もこっちで、お前らの方へ魔物がいかないようにしっかり守る」


「わ、わかった!!」


初めて見る大量の魔物達に、ミリィサの顔は恐怖に引き攣っているが、後ろをミッツが守っていてくれると言うと、何とか勇気を振り絞って魔犬に跨った。


「行け!!」


ユキ達を乗せた魔犬達が走り出し、その周囲を6頭の魔犬が護衛を固めて着いていく。


それを見届けたミッツは、ユキ達の退路を確保するように、水弾を撃ちまくった。






「まったく、色々ありすぎて何から驚きゃいいかまったくわからんよ」


「同感です。けど、まさかこの犬達が人を乗せて走れるなんて」


「そこ!?モリスンお前驚くとこそこ!?」


「え?」


モリスン、ミーユ、リンネ、そしてミーユの光魔法で回復したケージの4人は、それぞれ魔犬の背に跨り森を駆けていた。


5頭いたうちの、誰も乗せていない身軽な1頭が殿を務め、一行は森を駆ける。


「レン様、大丈夫かしら……」


塞ぎ込み、呟くリンネ。独り言のようだが、異様に主張する溜息が、誰かに反応して欲しそうに大きく吐き出される。


「大丈夫だよ、レンにいだもん!!」


そんなリンネの気持ちを汲んだわけではないが、ミーユは元気いっぱいの笑顔と声音で、大好きで信頼しているレンにいの無事を信じて疑わない。


「凄いね、ミーユちゃんは。レン様のことを本当に信頼しているのね。よし、私もしっかりしなきゃ!!」


モリスンは、何と言っていいのかわからず、リンネの様子を黙って見ている。


ケージは、少女漫画の悲劇のヒロインの様な陰の気を纏うリンネを見て、何も言えなかった。


しかし、そんなリンネの様子に溜息を吐くケージも、あのデタラメな少年でもあの白い男には苦戦するのではないかと、大袈裟な心配顔をするリンネ程ではないが、危惧していた。


ケージは胸を抑える。


あの白い服の男に打たれた痕が、ミーユに治療してもらったはずなのに、まだ不快に疼く感覚があった。




「ヴギィー!!ヴギィー!!」


「魔物だ!!」


先頭を走るモリスンが、魔物の群が走って行くのを見つけた。


「レン達の戦いの気配を感じて逃げて来たな。こっちが襲われることはないが、このまま町まで雪崩れ込まれちゃ敵わねぇな」


暴走する魔物の群を見て、ケージはミッツと同じ判断をする。


「やっつける?」


と、ミーユ。


「やれるんなら、やっときてぇな」


深い意味はなく、ケージが答えると


「わかった!!」


ミーユは魔犬を駆り、魔物の群に突っ込んで行った。


「おいっ!!」


止めようとするケージだが、ミーユとすれ違う瞬間、魔物が血飛沫を上げて倒れて行くのを見て、絶句した。


「いや、マジでデタラメ過ぎるだろ」

ご閲覧いただきありがとうございます。誤字・脱字、矛盾点等ありましたら、ご指摘頂けると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ