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閑話8【Sweet home Auburn】

本編より8年前のとある村。アメリカ人世渡り人の女性が同じアメリカ人世渡り人の男性に、身の上に起きた出来事を語っているお話しです。

私は、生まれも育ちも極々平凡な、一般家庭の普通の女の子だったわ。


私が生まれ育ったのは、イリノイ州のオーバーンという町。イリノイ州といえば、シカゴが州都だと思ってる人も多いけど、イリノイ州の州都はスプリングフィールドだって知ってる?そうそう、リンカーン大統領が住んでいたこともある町よ。


そのスプリングフィールドから南へ15マイル(約24km)、サンガモン郡の外れにオーバーンはあるの。


住宅街を一歩外に出れば広大な田園風景の広がる、典型的なアメリカの片田舎だけど、私はオーバーンが好きだった。もちろん、今でも帰れるものなら帰りたいわ。


町のみんながそうであるように、私も中学校(ミドルスクール)を卒業したら、オーバーン高等学校(ハイスクール)へ通って、その頃仲良しだったジェニファーの影響で、日本のアニメをよく見ていたの。


ある日、ジェニファーがDVDを片手に私に興奮した様子で話しかけて来たの。ジェニファーがそうやって話しかけてくるときは、決まって新しいアニメに出会った時。


彼女の影響でそこそこ日本のアニメを嗜んで来たけど、今までとは違うジャンルの内容に、正直内心溜息を吐いたわ。私はアニメは好きだけど、彼女ほどハマり込んでいなかったから。


「もし、この世界とは違う異世界へ行けたら、何がしたい?」


話の最後に、彼女はそう問い掛けてきたけど、私はよくわからないって答えたわ。


簡単に言えば、死んだと思ったら別の世界で生き返ったって話。やっぱり、あまり興味は持てなかった。


フフッ、そうね。今となってはね。


でも、その時はまだ自分の身にこんなことが起こるなんて、思っていなかったじゃない?


新しい恋人のことを話すように目をキラキラさせるジェニファーの前では、「面白そうね」と話を合わせるけど、彼女が新しく紹介してくれたアニメ(恋人)は、私の好みじゃなかったみたい。


私は生まれも育ちも、それから趣味趣向も、極々平凡な一般家庭の普通の女の子だったから。


学校でも、目立たない立ち位置で成績も中の中。陽気なクラスの中心メンバーとも話しかけられれば話すし、大人しすぎて教室の隅っこに居るような子たちとも違う、至って普通の中の普通。


そんな私の “普通” が失われたのは、ジェニファーが新しく見つけたアニメの話をした日の帰り道。


オーバーンハイスクールから私の家までは、6番通りを真っ直ぐ南へ帰るだけ。だから、見知らぬ景色が突然現れるなんていうことは絶対無い。


なのに私は、いつのまにか見知らぬ森にいたの。


やっぱり貴方も?Mr.ケネディ。そうね、世渡り人はみんな西の辺境の森に転移してくるらしいわね。


いつものように、マーティン叔父さん家のゴールデンレトリバーに手を振って歩いていたら、突然何かに躓いて転びそうになって、立ち止まって顔を上げたら、そこは鬱蒼とした森だった。


慌てて振り返ると、カーテンの隙間のような向こうに北6番通りが見えて、大きな紫の蝶々が飛んでいて…蝶々は私の頭上へ舞い踊るように飛んできて、やがてスッと消えたの。


そして、カーテンのように開いていた隙間が閉じて、私はオーバーンの町から切り離されて、森の中に閉じ込められてしまった。




もちろん、最初はパニックよ!!


何が起きたのか、意味がわからなかった。


ここは何処?


エッジウッドゴルフクラブ?


でもこんなに深い森はないはず。


ハンブルクのイリノイ川?


それともロッキー山脈?


わからない、わからない……


そればかりが頭を巡っているうちに、ジェニファーの話を思い出したの。



──もし、この世界とは違う異世界へ行けたら、何がしたい?──



異世界………


他のどの地名を思い浮かべるよりも、何故か納得したわ。


そして、私が異世界へ来てしまったことを、更に納得させる相手が現れたの。


そう、魔物。


枝を踏んで折れるパキッという音で気付いて振り返ったら、イタチのような動物がいたの。


けど、どう見ても狐ぐらいの大きさで、もしも襲われたら大怪我をしてしまうんじゃないかと思って、慌てて茂みに隠れたら、たぶん物音で気付かれたのね、イタチはパッとこっちを向いたわ。


身の危険を感じて、どうしようって思ってたところに、突然別の動物が飛び込んで来たの!!


最初は狼かと思ったわ。狐並の大きさのイタチよりも倍ぐらい大きな、グレイの獣だったんだけど、なんだと思う?


なんと、見たこともない大きなウサギだったの!!


まるで肉食の獣のようにグルルルルルって唸って、イタチの喉に食らいついて……今思い出しても鳥肌が立つわ。


その動物は、私が知る限りウサギだと思うんだけど、まるでオオカミの様な脚と、ライオンの様な牙、身長5.4フィート(約164.6cm)の私と変わらない目線の高さで……今思うと、耳が長いだけでウサギじゃなかったかも。


そのウサギみたいなオオカミみたいな動物は一度だけ私を見て、イタチを咥えたまま森の奥へ消えてしまった。


あまりの恐怖に腰を抜かして座り込んじゃったけど、しばらくしてこれは夢だ…って思ったわ。


でも、夢だと怖い思いをしたら目が覚めるじゃない?


夢にしてはリアル過ぎる、土草を踏む足の感触、樹々の間を縫う風が頬にあたる感触、繊毛の手触りまでリアルに感じる木の葉。


だんだん、夢なんかじゃない気がしてきて、さっきみたいな怖い動物がまた出るかもしれないって思って、とにかく森を出ようと思って歩き出したの。


斜陽の感じから東だと思う方へ……アメリカ人ならみんなそうじゃない?ロッキー山脈が西だから、山林から出るには東に行くって勝手に思い込んでたんだと思う。


時々感じる生き物の気配と、日が沈んで少しずつ暗くなってくる森に、泣き出しそうな気持ちで道なき道を歩いていると、水の音が聞こえて来た。


それも、川の流れるようなサラサラした音じゃなく、打ち付けるような滝のドドドっていう。


音のする方へ行くと確かに滝があったけど…


私が出たのは滝の上。滝壺までの高さは、たぶん30フィート(9.14m)はあったと思う。しかも出た場所は、滝を更に上から見下ろす所。


けど、水場に出られればとりあえず一安心したわ。怖い動物に出会ってしまわない限りは、すぐに命に関わるようなことにならないもの。


それに、水場に来る動物は、他の動物を襲わないって言うじゃない。


見たことない?水場でライオンとシマウマが仲良く水を飲んでるシーン。




早く乾いた喉を潤したくて、私はなんとか下へ降りられる場所を探しながら、川の流れに沿ってまた道なき山道を歩き出した。


時計もないから何時間経ったのか見当もつかないけど、オーバーンでは学校帰りの夕方だったはずなのに、こっちでは昼前だったから、ずいぶん時差のある所に来てしまったのだと思ったわ。


日が暮れ始めた頃、漸くなんとか川まで出られたけど、それでも川まではまだ私の身長よりも高い場所だった。


けど、これ以上昏くなると森を歩くのも怖かったから、とにかく川に飛び降りることにした。


「ハッ!」


って気合いを入れて飛び降りたその時


「ヒャッ!?」


ってひっくり返っちゃった。


足元が滑ったみたいで、河原の石で頭を強く打ってそのまま意識を失ったの。


まぁね、大丈夫だったから今こうしてここに居るんだけどね(笑)


それよりも、目覚めた時にね……


そうそう、貴方はどうだった、Mr.ケネディ。森の中で最初に眠って目覚めた時、それまでのことが夢だったって思わなかった?




「……ん…?」


私も、目が覚めた時は何か変な夢を見てた気がすると思ったわ。


夢の中で変な森へと迷い込み、散々彷徨って川に出て、滑って落ちて……


でも、まだ水の流れる音がするから、まだ夢の中にいるのかなって、寝ぼけた頭でそこまで考えてから、視界に映るある物を見て一気に意識が覚醒したわ。


ねぇ、Mr.ケネディ。寝起きの目の前に、ゴブリンがいたらどう思うかしら?


そうなの、寝ぼけてぼんやりした視界に、あのクシャッとした緑色の顔が私を覗き込んでいて「My god!!」って叫んで飛び起きたわ!!




「グギャッ!!」


「キャーーーーッ!!!?」


「ゲギャッ!!」


え!?え!?え!?え!?


何!?何!?


え!?……猿?


そう、その時はゴブリンなんて知らないから、緑色の変な猿だと思ったの。


もう頭の中はパニックよ!!


変な夢を見てたと思った直後だったから、まだ夢から覚めてないだけかって最初は思った。


けどね、その後もっとパニックになる事が起きたの。


むしろ絶望感って言ってよかったわ、あれは。


脚がね、動かなかったの。


うん、今はね。結局大丈夫だったんだけど。


その時、その緑色の猿だと思ってたゴブリンから逃げようとしたら、脚が全く動かなかったのよ。


何故かわからないけど、そこで「ああこれは夢じゃないんだ、現実なんだ」って悟ったわ。


必死に脚を叩いたり手で持ち上げたりしてたらほんの少し感覚があったから、神経は繋がってるって思って、ちょっと安心した。結局、脚は長く水に浸かって、冷え切っていただけみたいだったの。


そりゃ血の気の引く思いだったわよ。とんでもない絶望感が湧き上がってきて、パニックよ。


脚が動かなければ逃げられないから、私はここであの緑色の猿に食べられちゃうんだって、本気で思ったわ。


けど、その緑色の猿達……


そこには3匹のゴブリンがいたんだけど、彼らは私を見て首を傾げたり、互いにゲギャゲギャと会話したりするような素振りがあったから、それなりに知性はあるのかなって思った。


空も明けかけてたみたいで、少し明るくなり始めてたから、私はそこで一晩寝てたみたい。


そう、川の水に脚を浸けたままね。


そりゃあ、脚も冷え切って動かなくなるわよね。




「グギャッ」


ゴブリンは、意外と私に良くしてくれたわ。本当よ!よく知性がないとか凶暴って聞くけど、全然そんなことないの。


昨日から何も食べていないことを告げると、ゴブリンは木の実や果物を採って来てくれたわ。


ああ、言葉が通じたって言うよりは、ジェスチャーでなんとか意思疎通できたって言う感じかな。そういうところに知性を感じたわ。


柑橘系の大きな果実は、喉も潤してくれて生き返った気分になったし、摩ったり叩いたりしていた脚は徐々に感覚を取り戻して、ゆっくりなら曲げ伸ばしができるようになったわ。


「やっぱり、夢じゃないっぽいな」


「ゲギャッ?」


首を傾げるゴブリンには、私のその言葉はわからなかったみたい。


「人のいるところに案内して…って言っても、そもそも人がいるかどうかもわかんないよね」


バキ、パキ


なんてゴブリンとやり取りしていると、下流の方に大きなクマがのっそりと顔を出したの。


森の中でクマよ!!びっくりした私は、悲鳴をあげそうになった口を無理やり押さえ込んで、必死に息を殺したわ!!


ゴブリン達も慌てて逃げようとするんだけど、私にも早く逃げろって、腕をこう引っ張ったりして急かすの。


けど、私はまだ歩けるほど脚が回復してなかったし、あなた達だけでもにげてって、こうやって手でシッシッ!ってやったわ。


クマの動向を警戒していると、どうやらクマは私達には気付いていなさそうで、水が飲みたいのか、あとちょっと届かない川に一生懸命に首を伸ばしてた。


たぶん、私が落ちた所と同じぐらいの高さがあったと思うけど、川に首を伸ばしてたクマは……


ザバンッ!!


て、川に落ちたの!


「プッ」


思わず吹き出してしまったわ。


見た感じだと、あのクマは四つ脚で立った状態でも、私の倍は大きかったと思うんだけど、自分の体高の半分ぐらいの高さから落っこちるなんて、ずいぶん可愛らしいと思ってしまったわ。


川に落ちたクマは、川に顔を突っ込んでゴフゴフと水を飲んで、満足したようにまた崖を登って去って行ってしまった。


森でクマと遭遇した…というのに、あまりに愛らしいその行動に、私はむしろ癒されてほっこりしてしまったけど、


「ギャッ、ゲギャッ」


「ゲギャギャッ」


ゴブリン達はまだ逃げようとしていて、うるさく騒いでた。


まぁ、どっちにしてもまだ脚が動かなかったし、ゴブリン達にもそれは伝わったみたいで、私の脚が回復するのを待ってくれた。


しばらくして、立ち上がって歩く事ができるぐらい回復したから、ゴブリン達に先導されて山道をしばらく歩いて、ゴブリン達の村に辿り着いた。


ゴブリンの村って見たことある?


最初はもちろん、驚いたわ。


難民キャンプの方がまだ居心地が良さそうな、木の枝を重ね合わせたり、大木の根元を掘って洞穴にしていたりして、住居のようにして暮らしていたの。


でも、その時は1人になるより、ゴブリン達といた方がまだマシだったから、私はゴブリンと生活するようになったの。


多少知性があるとはいえ相手はゴブリン。よく見ると人間と同じようにオスメスの違いはあったけど、ほぼ裸で暮らす彼らの前で羞恥心なんてすぐになくなったわ。


最低限の衛生上、下は着てきた服を裂いて作ったものを当てたけど、ほとんど裸で過ごした。


当時?ハイスクールに通ってたから、16か17だったかしら。


フフッ、見たかった?




ゴブリン達の暮らしは、ほとんどが狩りと果物集め。時々大きな動物から逃げたり、本当に死ぬかと思うような場面もあったけど、それなりに楽しかったわ。


私は、オーバーンでは極々平凡な普通の女の子だったのに、まさかこんな事になるなんてと何度も思ったけど、ゴブリンの村でゴブリンと同じように過ごしていると、私も彼らの仲間になったようで居心地が良かったわ。


ええそうよ、あの頃私はゴブリンだったわ。


言葉だって覚えたのよ。そうよ、ゴブリンにだって言葉はあるわ。見た事ないかしら、彼らがゲギャッグギャッてコミュニケーションを取っている所を。


今のは、「向こうに獲物を見つけたぞ」ていう意味。直訳してしまうと、「向こう、獲物」となるけどね。


やがて寒い季節になると、彼らに倣ってどこから調達してきたのかわからないボロ布を纏って凌いだわ。


彼らも体毛があるわけじゃないから、冬はボロ布や大きな植物の葉を纏ったり、火を起こしてそれを絶やさないようにしていたわ。


ありがたいことに、冬でも動物は普通に森にいたから、飢えることはなかったけど。


そしてまた、暖かい季節がやってきた頃……


「ギャゲァー!!ゲギャー!!」


1匹のゴブリンが、激しく吠えながら群れへと駆けて来たの。


彼はその日、果物を採りに森の奥へと行っていた子だったんだけど、たぶん大きな猛獣でも出たのか、逃げろー!!って叫んでた。


ちなみに、危険を知らせる言葉はこうよ。


ギャゲァー!!


やだぁ、そんなに引かないでよ。


とにかく、彼の警告を聞いたゴブリン達は一目散に逃げ出した。もちろん私もよ。


猛獣から逃げる時はルールがあったの。


出来るだけ広く散る事。誰かが倒れても助けに戻らない事。


彼らは野生よ。犠牲無くして群れが成り立たないことはよく知ってるわ。だから、誰かが犠牲になってその猛獣(ハンター)の腹を満たせば、他のみんなは助かることを知っているの。


でも、その日の狩人(ハンター)は違った。


「ギャッ!!」


1匹のゴブリンの頭を、矢のような細長い棒が貫通した。


「まさか!?」


ゴブリン達が、どこからかボロ布を調達して来て纏っていたから、人間かそれに近い知的生物がいるだろうとは思っていたけど、矢が飛んで来たことで確信したわ。


当時はこの世界の言葉なんて解らなかったから、彼らが何と言っているかはわからないけど、人間らしい“言葉”でやりとりする集団が、ゴブリンを追い立てていたの。


私ももちろん、ゴブリンと一緒に逃げたわ。


だって、相手が人間だっていう保証はなかったし、たとえ人間だったとしても、すっかりゴブリンの生活に溶け込んでしまった私が、歓迎してもらえるとは思えなかった。


ここでの生活にもずいぶん慣れた私は、ゴブリンと変わらないスピードで森を駆け抜ける。


けど


どうやら別動隊が居て、挟み撃ちにされてしまったようで、私は彼らに捕らえられてしまったわ。




私を捕らえた男達は、確かに人間だった。


顔立ちから、トルコかアラブあたりの中近東っぽさがあるけど、言葉には時々ドイツ語っぽい響きを感じた。


いいえ、ゴブリンは追い払われたわ。可哀想に、犠牲になった子も何人かいたけど。


私だけが捕まったの。


いえ、捕まっていたっていうのはちょっと違うかも。


服を着せられ、拘束もさせられず、温かい飲み物を差し出されて周りを護衛されていたから。


そんな中で、1人の男が私の前に跪く様に腰を下ろして、私を信頼させようとしているような、柔らかな笑みで語りかけて来た。


「ハジメマシテ、ワタシはサー・ガブリエル・ゴジョウです」


その男は東アジア系の混血で、少し訛りのある英語を話したわ。たぶん、南米の何処かの出身じゃないかと思う。


「ゲギャッ……じゃない、えと、わ、わ、私、私、わ、モ、モニ、モニカ…モニカ・ア、ア、ア、アンダーソン……です」


彼が自己紹介してくれたから、私も頑張って英語を思い出しながら名乗ると、その人、ガブリエルはホッとしたように優しく微笑んでこう言ったわ。


「アナタヲ、ホゴシマス」






そこから先は、貴方も知る通りよ、Mr.ケネディ。


ガブリエル達に保護された私は、ニーシュの町に来てこの世界の一員として暮らし始めた。


田舎町のオーバーンで、極々普通の娘として生きてきた私は、こっちの世界でもまた普通の女になったの。


そして、町に来ていた夫と出会って、この村で息子を産んだわ。


そうねぇ、オーバーンに帰りたいとはもちろん思うけど、どちらかというと、オーバーンにいた頃のような平凡な毎日を求めたかしら。


え、魔法?


うーん、使えるとは思うけど、一度も使ったことがないから実は属性も知らないのよ。


そうそう、私は使ったことがないけど、最近息子が魔法を覚えちゃって、大変だったの。


西の辺境に魔法使いの一家が住んでるって……ああやっぱり知ってるのね。有名なのね、彼らは。


その人達がヤナクに行く時に、この村を通るんだけど、息子が魔法を見せてくれってせがんだら見せてくれたのよ。


まぁ、男の子だからさ、やっぱり凄い凄いって興奮するわけ。


でね、その魔法使い一家の長男さんの真似してみたら、マッチの先ぐらいの小さな炎が、ポッと灯ったの!!もう、私びっくりしちゃって!!


そうなるとね、私か夫のどちらかが魔法使いの、世渡り人の血を引いてるはずだってなるじゃない。


でも、夫は先祖代々この村だし、じゃあ私なんじゃないかっていう話になったんだけどさ。


まぁね、もちろん私なんだけど、そうじゃなくて。私は普通の生活がしたいから、世渡り人っていうことは隠してて、元々夫には、コセ・シティの生まれだと話していたの。


父は物心付く前に亡くなって顔も知らない、母も私が成人する前に亡くなってしまったっていうことにしてあったからさ、じゃあきっと私の父の家系が世渡り人なんじゃないかって、私の父の姿をみんなが勝手に想像してくれて、事態はとりあえず収まったわ。


世渡り人の子孫でも、魔法が使えないことってあるみたいだから、今でも私は魔法なんて使えない、極々平凡な普通の村人よ。


そういえばMr.ケネディ、貴方も娘さんがいるんでしょ?


そう、じゃあ息子より少し年上ね。


そっか、魔法使えるんだ。ああ、でもそうよね、女の子だもんね。あまり危険なことはさせたくないわね。


うちの子?どうかしら、大人しい性格してるから、魔物を狩りに行くとかはしないんじゃないかしら。


ああでも、夫は強く鍛えたいなんて時々言うけど、どっちでもいいわ。息子がしたいようにすればいいって、私は思ってるから。


どちらにしても、私はどこの世界にいようとも、オーバーンにいた頃のような平凡な暮らしができれば、それでいいわ。


うん、じゃあまたね。ありがとう、貴方に会えてよかったわMr.ケネディ。


娘さんも一緒に、いつかウチのモリスンにも会いに来てよ。


うん、気を付けて。


see you.


ご閲覧いただきありがとうございます。誤字・脱字、矛盾点等ありましたら、ご指摘頂けると幸いです。


お読みいただいてわかるように、モリスンの母親の話しです。長くなりすぎてカットしましたが、ゴブリンと何ヶ月も生活していたら、食糧として魔物を殺して、魔力を得ているだろう前提となっています。

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