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彼は嘘を愛し過ぎている  作者: さもてん
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俺は奴が嫌いだ。

東 (過去ストーリー)


奴とはイザヤのことです。

俺はアイツが嫌いだ。

マゾだし、気持ち悪りぃし、どこか浮ついている所がすこぶる、嫌いだ。


今から約数十年前、俺は『奴』を知っていた。男のくせに女みてぇに髪を肩下まで伸ばしていた。

俺には断言できる。あの時から奴はぶっ壊れていた。

俺が西のギャングの中側近をしていた頃に(西だぜ?この俺が。笑っちまうだろ?)まだガキだった奴は後輩としてやって来た。


奴はその頃から性臭い噂が耐えなかったが本人はまるで気にする素振りはなかった。 

俺も他の雑魚どもの嫉妬だろうと思っていたが、ある時見てしまった。

奴が西の頭首の部屋に入っていった所を……。


あのオッサンも相手が男なんかでいいのかと思ったがアイツの顔は別格だ。

時に女、時に男と、変幻自在に化けれる事を嬉々として使いこなす。

ただ、何年の信頼を積んでここまで上がってきた俺から見ればちょっと顔のいいだけの青臭ぇパッと出のガキに滅多になれない中側近の座をやすやすとつかれてしまったことがどうも気に食わなかった。

結果にどうこう言っても仕方がない。俺が銃を撃って信用を得たように、奴もケツを振って地位を手に入れたのだ。

しかしあの頃の俺はそれが大層気に入らなくて事あるごとにやつに雑用を押し付けていた。


奴は仕事を与えると飄々とこなし、傷だらけで帰ってくる。

仕事を与えなくてもフラフラとどこかへ消えて、傷だらけで帰ってくる。

一度どこに行っているのか聞いたことがある。

「その辺の男と遊んでる。」だそうだ。


「アンタも混ざる?楽しいぜ?」そう言って無気力で笑う奴に「黙れ」と一喝した。

他のギャングなら震え上がるのにやつはただヘラリと笑うだけだった。


そこがまた、気持ち悪くて嫌いだ。



奴の性癖に気づいたのは初めてあった日から2年経過してからだった。

その日、俺は先輩に頼まれて使いに行っていたところ、一軒の家のドアを吹き飛ばして吹っ飛んできた男に会った。

驚いて3歩後ずさりすると、そこかなは見覚えのある黒髪のガキがいた。「……いってて。」


奴だ。


突き破ったドアから大男がズシズシと奴に近づくと、その胸ぐらを掴んだ。そしてつばが飛ぶほどの罵声を浴びせると、彼は謝るどころか「はっ、そんな単細胞だから女に愛想つかされて俺に寝盗られるんだよ。」と火に油を注いだ。男は青筋を立ててボコボコと一方的な暴力を始める。


(……アホか?アイツ。)

状況から判断するに女をめぐった争いのようだ。

ここは人通りは多いが誰一人としてケンカを止めたり、助けたりをしない。

いるのはその様子を余興として楽しむ者くらいだ。


「ふざけんなっ!ふざっけんな!!テメェみてぇなオカマのせいで!!……くそっ!くそが!!」

奴は顔を除いて全てにおいてがノーガードだった。




「これ以上はよせ。」大男によって日頃の奴へのストレスも発散できて満足した俺は後ろから大男の肩をガシリと掴んだ


「はっ!誰だよテメェは!?関係ネェ奴はすっこんでろ!!」


「………まだ命は惜しいだろう?」

大男の腰に銃を押し付ける。最近東から普及されたものの最新版でわざわざ火薬を中に入れなくてと引き金を引くだけで倒せるという代物だ。


「……クソっ。」と吐き捨てるように言うと大男はポケットに手を突っ込みながらどこかへ去っていった。


その背中を見送っていると「んだよ、いい所だったのに。」と下から不満の声が聞こえた。


「あ?助けてやったのになんだその態度はっ。」


「あ…いえいえ。アリガトウゴザイマシタ。お陰でタスカリマシタ〜。」


「あぁ?」

奴は立ち上がろうとしたが殴られたせいか体がフラついた。俺はそれを片手で抑える。


「お前は……何がしたいんだ?ただの女の奪い合いにはとてもじゃないが見えなかった。」ため息交じりにたずねる。


奴はすこし驚いたように目を丸くする。

「何って……見ての通りっすよ。俺が女を寝取ってその旦那に殴られた、それだけです。あーあ勿体無かったなぁ、これから俺の反撃劇が始まるところだったのにー。第三者が入ってきちまったら楽しくないじゃないですかー。」


「やられっぱなしだったじゃねぇか。」


「それも相手にスキを作るための策ですよ。」

俺はどうも納得できなかった。これまでも事あるごとにボロボロになって帰ってきていたのは全て女絡みのケンカか?と言われても釈然としなかった。

けれど、ある一つの発見ですべてが分かった。


「お前……濡れてるぞ。」

彼のズボンの上がうっすらと濡れていた。


「いやん、どこ見てんのよエッチ。」奴は慌てて隠す素振りもなくふざけたことをぬかす。 


「殴られるのが……目的だったのか?」まさかと思いながらも半信半疑で聞いてみる。

 

「怒らせねぇとマゾれねぇだろ?」 


息が止まった。俺には奴の行動の意味が分からなかった。痛いだけだろうに。あまりにも堂々というので一瞬若者の間ではこれが普通なのだろうかとも思ってしまった。


「なんで嘘ついた。」


「答えるのが面倒くさい。……大丈ですよ。上には迷惑かけねぇようにヤッてますから。」


「たった今迷惑かけられた気がするが?」


「いや、頼んでねぇし。」

奴は痛そうにみぞおちをさすりながら男とは逆方面を歩きだす。    


「お前は、それで中側近になったのか?」

足がピタリと止まる。そしてこちらに振り向いた。 


「そうだよ。」


気だるそうな表情、虚ろな目から見たのは 

…………闇。

この世に未練なんて無さそうな、深い、深い黒い闇だった。いつかフラッと側にいて、気がついたらフラッと死んでしまっていそうな。そんな真っ黒な雰囲気がした。


「ちょ〜っとハニートラップ仕掛けたらすぐ部屋に入れてくれてよ?可愛くオネダリしたら見事に中側近ってな。」


やっていることが、まるで男に飢えたメスのようだ。俺の中の何かにピキリと切れる。


「西のオッサン。下手くそなんだよなぁ。全部。ヤるのも、国動かすのも…………部下選びも。」


ピキリッ

体を軸につかい拳を振るい……奴の顔面の寸止めで止めた。いや、グッと堪えたのだ。

「……ビビリ。」


「ここで腹を立てて殴ればテメェの思うツボだろ?」


「………。」腹が立ったが奴がそっちの趣味なら逆効果だ。むしろ殴られるために俺を煽ったと言ってもいい。


「お前、そんなんじゃいつか潰されるぞ?」

自分の快楽のためだけに人を騙し、怒らせ、そして殴られる。

奴はいつか全てに騙され、怒られ、そして裏切られてしまう気がした。


「………ハハッ、いいねぇそれ。……悪かぁない。」 

曇った瞳でケタケタ笑う。こちらを見ているハズなのに目が合ってない。

次の瞬間、奴はグラリと足元から倒れた。


「あ、オイ!……オイ!!」

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