再再開
時はヒョウが南の城から帰ってきた所まで遡る。
ヒョウは馬の頭を撫で、馬を管理しているギャングに渡す。だいぶ乗馬が様になってきた。
ヒョウはイザヤの部屋に向かいノックをした。が返事がない。
ドアを開けるとベットには彼がいた。
「おい、いるんなら返事くらい」
ヒョウの言葉はそこで止まった。白ぶとんを被ったイザヤは気絶したように眠っていた。全裸でボロボロのまま。
「………。」
(いつものか……。)
ヒョウは立ち上がりお湯や救急セットの準備を始めた。
数十分後、イザヤが起きると本を読んでいるヒョウがいた。上半身を起こすと骨がキリキリと痛み、ケツの穴が痛い。
ヒョウから受けっとったタオルで体を拭くと、彼は無言で手当を始めた。
といっても今日はそこまでしていないのでアザを冷やすくらいで終わった。ヒョウのムスッとした表情がつまらないと言っているようでおかしかった。
「どこか骨折したか?」
「いんや全然。俺、人より骨強いから。」イザヤは手首をクリンと回す。
そういえば前も打撲や捻挫はあったが折れたことはなかった。
(人より日光に当たっているせいかもしれない。)とヒョウは思った。
「なんか用だった?」
「……あ、いや。用ってほどでもないかな……うん。」ヒョウは南のことをイザヤに聞いてみようかと思ったのだが口止めされていたことを思い出した。さて、どう伝えればいいものか。
「ふ〜ん……じゃ、こっち座って。」イザヤはあぐらをかきながらぽんとベットを叩いた。
正直、誰かの汗が染み付いたベットに座りたくなかったので端の方にちょこんと座る。
するとそのビザの上にイザヤが頭を乗せてきた。
「ふぅ〜〜〜……。」ごろりと気持ち良さそうに体を捻る。
その仕草といいその様子を何かに例えるなら
「猫だな」ヒョウは微笑を浮かべて言った。
「じゃあアンタはタチだ。」
「はぁ……何それ?」
「今日ベットグチャグチャだからアンタの部屋に行ってもいい?」ヒョウの問いを無視してイザヤは言う。
「……変なことすんなよ?」
「変なことって、どんなこと?」ニヤニヤしながら聞き返す。
「え、いやそれは……って、なんで言わせたがるんだよっ。」
「ウヒャヒャヒャ。」
「しばらく動くな」というイザヤの指示のもと、ヒョウは彼のサラサラの髪を手で梳かし続けた。
✱ ✱
数日後、ヒョウは西の通りを歩いていた。ショウに会うためだ。前回、感動の再開を果たしたものの少女との事件があってなんだか事が大きくしてしまってゆっくり話せなかったので、礼も含めて会いに行くのだ。
いつもと変わらない荒々しい通りに注意しながら娼婦店に向かった。
そして目的のコンクリートで出来たキラびやかな店に入る。
カウンターに座っている客引きおば様にショウをたずねると《一夜コース》か《半日コース》のどちらを選ぶか聞いてきた。
(ただ会いたいだけなのに…。)
ぶんどれそうな金は一枚でも多く手に入れるという老婆の野心が伝わってきた。
そんな金も勇気も持ち合わせてないので話をそれとなく切り上げて店をでると、数人の娼婦がここぞとばかりにヒョウの体に絡みつき、ヒョウを引き止めた。
「え〜〜旦那様もう帰っちゃうのぉ?」
「私達とおしゃべりしない?お茶でもいいからさあ。」
「お喋りなんてものよりもっと楽しいことシない?………私達と。」
豊満な胸や細い扇情的な体がぐぐっとヒョウに近づく。
普段ポーカーフェイスを保っている自分もさすがにかなり動揺してしまった。
体中がほてり、ブワリと汗が出る。
願ってもいなかった素敵な誘惑と葛藤して、ヒョウはガムシャラに解こうとした。
けれど娼婦たちはせっかくの獲物を逃がすわけがない。グイグイと引っ張り店内に引きずり込む。
その姿はまさに獲物を獲る肉食動物のようだった。
(このままでも……いやっ駄目だ!ここで誘惑に負けるんじゃない!!目的を見失ってはいけない。)
なんとかして逃げ出す術を考えていると…
「何やってるのっ!!」
ドスの利いた声がして振り返ると、そこにはいつぞやの運び屋の少女がいた。ショートボブの髪がフワリと揺れた。今日は化粧していなかったので、少し幼く見える。
固まっているヒョウたちにツカツカと近付いてきた。良かった、助けてもらえる。
ホッと胸を撫でおろした、
次の瞬間だった。
ペシンッっっ!
いい音が鳴ると共にヒョウの右の頬に痛みが走った。ヒョウは状況が分からず目をパシパシする。
若干引き気味の娼婦たちをはらいのけながら少女は「あんたっ!アタシというものがありながら何やってるんだ!?」と大声で怒鳴りつけながら言った。
反射的に体が震え上がる。怖い。
そして、ヒョウの腕を引っ張りながらその場を去ろうとする。
娼婦の一人は「…あなたは……?」と言うのを聞いて少女は目を細くしながらグルリと向き直った。
「私はこいつのセフレだけど、何?」
「……せっ」ヒョウは驚愕する。
“何も文句は言わせまい”
少女からそう聞こえたような気がした。
やがて通りを抜けると少女は腕を離してくれた。
「……あの……さっきのは一体」
「演技だよ。ヒョウ兄さん。」
「………。」
「ショウさんがヒョウ兄さんは娼婦に狙われやすい、良い鴨だからもし捕まってたらあぁ言えって。」
「…………。」
ショウさんはどうも生まれた時からそんな世界にいたからどこかズレてる。
いや自分の反応を楽しんでるだけか。
「あのさ……ああいうのは人前でいうのは控えた方がいい。……あんまり良くない意味だから。」ショウさんはきっと意味も教えずに少女に言わせたんだろう。けれど、それは教育的に良くない。
「知ってるよ。ヒョウお兄さんだから言ったの。」
「え?」
「それより、わざわざこんな所に来たってことは何か用事があるってことでしょう?」
ヒョウはハッと思い出し、自分がショウに会いたい事を伝えると彼女は快く道案内を引き受けてくれた。
「ショウさんとはよく会うの?」
「時々ね。会ったときは私の話をたくさん聞いてくれるし、すごく優しいんだ。あ、前に会った時なんだけど、ショウさんがー」
本当に楽しそうにショウの事を話す少女がなんだか可愛らしかった。
そうしてついた場所が先程の娼婦店の裏口だった。この中に彼女がいるのはわかるが……。
建物の周りは塀で囲まれている上に娼婦を守る雇われ衛兵がいるのだ。簡単に突破はできまい。
少女はヒョウの頭に鮮やかな長いスカーフをグルグルと巻きつける。顔をすっぽり覆い隠すとなんだかアラブの女性みたいだ。少女もシャツのボタンを娼婦のように2つ広げた。
「時計持ってるでしょ、貸して?」ヒョウは金色の懐中時計を差し出すと少女は時刻を確認した。
そしてニタリとした笑みを浮かべると「もう少し。」と小声で言った。
そして物陰に隠れてから1、2分後。衛兵のほとんどが伸びをしながらどこかへ行ってしまった。ヒョウたちが裏口の塀の扉をくぐってもバレないだろう。
「この時間帯は昼休みだから見張りが薄いの。」
忍者のように足音を忍ばせ建物に侵入すると、少女は堂々と歩く。客や娼婦にすれ違っても軽く頭をさげるだけだ。まるで初めからここに存在していたかのように。
(この子は女優になれるのではないだろか)と本気で思った。
やがて見覚えのある通路につくと何室も部屋がある中から少女は迷いのない手付きである部屋に入った。そこにはショウがいた。
ショウは突然の訪問者に驚きながらもすぐに少女を迎えいれた。そしてヒョウにも気がつくとどちらともなく抱擁をした。
前とちっとも変わらない細い腕と体だ。
なのにその体から伝わる温もりはなんとも形容しがたいほど温かく、心地が良かった。
「久しいな、ヒョウ。」心底嬉しそうな顔をするショウはまるで聖母のようだった。
へへ……タイトルだんだん適当になってきたぜ。




