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彼は嘘を愛し過ぎている  作者: さもてん
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お茶会

第二章的な?

「それは災難だったねぇ。」ヒョウの話を聞きながら南がお茶を飲みながらのんびりも言った。

ヒョウは南の頭首に《時計塔完成記念》とお茶会であの薬売人の話をした。


「でもそういう輩はごまんといるよ。地上も然り。悪い奴ってのは必ずいつの時代も出てくるもんなのさ。」


「なんでですか?」


「そこに正義があるからさ。《権力が欲しい》《金持ちになりたい》《モテたい》人間の欲望の成れの果てが裏社会なんだ。『自分の利のためなら人はどうでもいい。』そんなこと思うとき誰にだってあるだろ?

だから正義も、悪も。表社会も、裏社会も違うようで実は同じなんだ。つまり()()()()()()()()()()()と言ったって過言じゃないよね。」


「じゃあ、西のスラムの人たちが今日一日一生懸命食べ物を這いずりながら探している中でこうしてうまい汁をすすってる俺たちも見方によっては悪ですね。」


「正義だよアホ。少なくとも南はな。」

ポコンと殴った相手……ケイは菓子の饅頭を片手にどっかりとヒョウの隣のソファに座った。


「俺たちは甘い汁をすすってる代わりに住民のために発展を捧げている。これでウィンウィンだろ?少なくとも南はな。」


南は側近の言葉に嬉しそうに頷いた。


「僕のこと殺しかけた奴だって欲望の塊、化身だろ?アイツは死んだんだってね?へっ、ざまがみろ。」饅頭をスナックのようにホイホイ食べる様を見てよほど根に持っているのが伝わる。

………当然だが。


「暴力なんて何か楽しんだか。ヤダヤダ、見てるこっちが痛い。」南は鼻息をフンと荒くした。


「言葉の数より銃声の方が多いですもんね。聞こうとしないんですよ、こっちの話を。」


「銃って麻薬と似てると思うんだよね。撃つと病みつきになる。」


「……うわぁ怖ぇ。僕絶対持てないです。」


「ま、護身用くらいならいいと思うけどね。人狩りも始まりそうだし。」


ポンポンと飛ぶ会話をヒョウは口を開けて聞いていた。

カズさんから聞いた話では地下国で年間数百人が銃によって命を落としているらしい。


ヒョウはまだ持ったことがない。これから持つ気もサラサラない。なぜならヒョウは一度人が肉の塊になる瞬間を見て、肌で感じてしまったからだ。


(あれは……怖かった。)今でも思い出す。

銃は怖い。


「ん!饅頭にマヨネーズかけたらうめぇ。あ、頭首も食べます?」アホなこと言っているケイの頭を小突いた。


「お前の偏食に付き合わせるな。かわいそうだろ?」


「美味い物を共有して何が悪いんだよ。

………ひょっとして、お前も食いたいのか?」

「いらん。」


南はヒョウたちの会話を聞いてクスクス笑った。

「君達は本当に仲がいいんだね。」


ヒョウは顔をしかめる。「仲いい?俺と、これがですか?」


「おい!頭首に喧嘩売るんじゃねーよ。」ドンとヒョウの胸をどつきながらケイは怒鳴った。


「売ってない。むしろ君に売った。」


「おえっ、お前のなんて2割引されても買ってやんねぇよ。」ヒョウはムッとしてすぐに言い返す。


「3割引きは?」


「嫌だね。」


「5割引どう?」


「舐めてんの?」


「7割引」   


「興味ないね。」


「じゃ、9割引き!」


「出直してこい。」





「……もういっそタダでやるよ。」

「はい買ったーーー!!」


ケイは勝ったと言わんばかりに、おおきく両手を上に上げてバンザイした。


「………いやいや、買わせたのは俺なんだから俺の勝ちでしょ?」


「タダじゃ利益でないだろ?」


「……それもそっか。」


ちゃんちゃん。まるでコントのような掛け合いに南は更にクスクス笑った。そして

「君達にはぜひそのままでいてほしいものだね。」としみじみ言った。


その後は酒も持ち寄りみんなでヤイヤイ話をしたがケイが植物についての話題に触れてしまったので、そこから3時間ほどは話し手の権利が完全に南のものになってしまった。


もう寝るといって逃げた裏切り者のケイを睨みながらヒョウは南の話を今までもずっと聞いていた。楽しそうな顔で目をランランとさせて話す南にヤメロと言うことが出来なかった。

ヒョウはさり気なく時間をたずねるとやっと切り上げてくれた。

(………ホッ。)


「そういえば調子はどうだい?地下脱出の件。」


「……厳しいです。」


壁をのぼってみようにも縄を上につるそうにも高すぎる天井には手が届かない。


「だから最近は色んな資源を集めてハシゴをつくってたんです。……でも気づいたら全部盗まれてて。」


「……あぁ。」西はスラム街だ。売れるものや金になりそうな物は目を離すとすぐなくなってしまう。


「西は?手伝ってくれそうか?」


「俺が天井に登ろうと頑張っている傍らで酒持ち出して宴を始めました。」


「……あぁ。」同情に近い表情で南は頷いた。



「僕が前に君に話した話覚えてる?僕の専属の医者になって欲しいって。」


「え……ああ、まぁ。」「こっちに来て。」

ヒョウを連れて行った先は1階の階段の下にある地下だった。


地下国にある地下だ。

そこは何人もの職人達が金属を加工し色々な材料を作る作業場だった。汗と熱気が部屋にムアンと広がる。


「知ってるかい?ここから下に穴を掘るとマグマというものが手に入るんだよ。」彼いわくそれは火より熱く、金属を加工するのに適しているのだとか。

加工場を突き進むと一つのドアがあった。彼はドアを開きヒョウを招き入れた。


目の前に広がるのは大きな風船のようなものと巨大な籠だった。


「これは……気球?」「そうだ。君に見せたかったものだ。ちなみに僕がなんでこれを作ったか、君なら分かるよね?」


ヒョウは少し考え、すぐに結論に至る。

「もしかして……あなたも地上に出たいんですか?」無意識に声が大きくなった。


南はコクリと頷き気球を触った。

「コイツが完成したら僕は仲間と共にこことオサラバするつもりだ。……そんでもって、地上をぶっ壊す。」


ブルリと体が震える。優しいハズの声色に何か秘めたるものを感じた。


「それまでに実験で何人怪我人がでるか分からない。でもケイを治してくれた君がいたら、すごく心強い。」


南はヒョウに向き直る。

「僕と一緒に地上を、目指さないか?」


「…………。」

ヒョウは感動した。心のそこから震えた。

今まで雲の上で届きそうになかった手が一気に近くなったようだった。


ここで頷けば、行ける。地上にも行ける。

けれど、体が動かなかった。


ヒョウの瞼の裏には黒髪の彼がいた。彼だけではない、カズやアラタ、ショウこれまで、お世話になった面々と別れることになる。

この時のヒョウは何故かここで選んでしまったらもう二度とあえなくなってしまうような気がした。



怖い………選ぶのが、怖い。

そう考えると、声を出そうと思ってもなかなか上手く出せなかった。


クスリと笑う声がする。

「今すぐに決めることはないよ。」南は優しく言った。


「ただ、これは僕と職人と君しか知らない秘密事項だ。……くれぐれも内密に。」


「……理由を聞いても?」


「地上の民が地下のものを嫌うように、地上に出ることを毛嫌いしている奴は少なからずいる。

刺激したくないんだ。どこで聞き耳立てているか分からないから。…………いいね?」

ヒョウはゴクリとツバを飲み込むと頷いた。 


✱       ✱


イザヤはティーを一口飲む。やはり南に出された物と比べ物にならないほどうまい自分好みの味だった。

北はイザヤの為だけに毎回この茶で彼をもてなす。イザヤも現在、北にお呼ばれされて情報交換会と言う名のお茶会に来ていた。


「この間の菓子も美味しかったです。えーと名前は…」


「ちょこれぃとだ。」 


「そそ、それです。まだありませんか?うちのワンコロが気に入ったんだ。」


「むむ、それはもうないが他のものならやれるぞ。ほれっ………ほれほれほれ。」

次から次へとポンポンと菓子やら茶葉やら服やら出す北を制止した。


「ちょっ……こんなに持って帰れないですって。」


「ガキが一丁前に遠慮なんてするな。ほらこれも。」


猫の耳がついたカチューシャを頭につけられたイザヤは青筋がピクピクなりながらも怒りを堪えた。ため息をつく。


これ全て、北が自分のためだけに買ってくれたのならば、イザヤがすべき行動はそれを貰うことだ。


北は満足げにうなずくと服を手に取りイザヤにあてる。


「うむ。やっぱりこれじゃな。」


「嫌ですよ。上下がガラシャツなんて、目がチカチカしそうです。」


「お前ならどんな服も着こなすだろう?」それは否定しないがさすがにこれをきて外に出歩くのは嫌だ。


「というか、ファッションショーをするためにここに呼んだんじゃないでしょう?本題に入ってくれます?」


「あぁそうじゃ。まず先の連続ギャング殺人事件、ご苦労じゃった。……うさ耳パーカーも捨てがたい。問題はその後なんじゃが、なに!?黒いタートルネックだと!!」


イザヤは怒鳴りそうになる声をできるだけ抑えて北に言う。

「あの……服を選びながら話さないでくれますか。」


「うむ〜〜難しいお題じゃな。」


「簡単ですよ。服全部燃やせばいいんです。」


「ヌアッ!!………すまんすまんちゃんと話そう。」

いそいそと服を片付け始める北。

その様子をみてイザヤはクッと笑った。


(この人は、本当に俺の事が好きだな。)

なんて思いながら。



「事件が終わった今。そろそろ『アレ』がくると思ってるんじゃ。」やっと本題を始めた北にイザヤも真面目に答える。


「人狩りですね。」


人狩り……それは覆面を被り、数年に一度東西南北に不定期にやってくる謎のテロリスト。

無差別に人を狩り終えた後、気がつけば消えている殺戮集団。


頭首たちは何度も奴らを捕まえようと試みたがプロ集団故に一度も捕まえられたことはない。

いや正確には北の軍は一度、捕まえたことはあったのだが、口に含んだ毒でぽっくりと逝ってしまった。


「南、北、南、東、北……ときてる。お前の所がそろそろ襲われてもおかしくない。

……いいか西。わしは心配してるんだ。」


「対策はしてありますよ。抜かりはありません。」


「それならいいが………お前


カンカンカンカンカーーーーーーン!!!


「……っ!?」イザヤは音に驚いて北の城の窓の外を見る。

突然、耳を塞ぎたくなるような金の音が遠くから響き渡った。



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