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彼は嘘を愛し過ぎている  作者: さもてん
15/44

後悔

「ギャハハハハハっ!!」


彼が足を動かすに従って、血が水しぶきのように舞い散る。とある建物では天が二物与えたと言われる美しい美貌と知恵を兼ね備えた青年が興奮気味に《拷問》していた。


「…あの人、これをやるためだけにここに来たんだぜ?」

その側近であるカズはため息をつきながら、頭首であるその青年…イザヤを目にしていた。


「止めないんですか?」医者として連れてこられたヒョウは呆れ顔のカズに尋ねた。


「無駄だっつの。あの人は戦闘狂…いや拷問狂だから。」


「……。」言い得て妙である。


「だけど、早く全部終わらせねーと。」拷問されている男の苦しそうな姿にカズは頭を抑える。


「今、事件の真相はどこまで分かっているんですか?」と他人事のようにいうヒョウ。


「はっ、お子さんは気楽で良いよな。俺達はやっと犯人の手がかりが掴めた所だって言うのによ。」


「…随分と時間がかかるもんなんですね。」


「当たり前だろう?この広い地下国の中でたった一人の犯人を見つけなければならねーんだ。そりゃ時間もかかるだろうよ。だから」おもむろに天を仰ぐと、カズはもの悲しい表情でぽつりと呟く。

「…あんまり家にも帰れてない。」


「家族…ですか?」


「あぁ女房と子供だ。」


「………。」


「んだよその顔。なんか文句でもあるのか?」


しばらく黙っていたがヒョウだったが、やがて納得したように頷くとカズの方に振り返り「…いくら積んだんですか?」と尋ねる。


「積んでねぇよ!!」


「カズさんだけは仲間だと思ったのに。」


「うるせーよ。……え?つか俺そんな風に見られてたのか!?」


現在ヒョウ達は南からの情報を頼りに数年前ノヴァという男がいたであろうこの地に足を運んだ。ここは部屋貸しだ。

そのオーナーの中年男に話を聞きいったところ、なんと彼は逃げようとしたのだ。これは何かあるに違いないと思ったカズが男を追おうとすると、真っ先にイザヤが男を殴り飛ばし、ひるんで尻餅をついたところをドカドカとけり飛ばしてた。…そして現在に至る。


「ギャハハハハハっ!!早ーく吐けって…吐・け・よ~~!ギャハハ!」


無意識なのか、そうでないのかは分からないがイザヤは誰かを拷問している時、ぶっ飛んだように笑う。

その姿はまるで地上にいたときにクリスマスプレゼントとしてもらい、そして壊れてしまったオモチャを連想させた。

最初は大事に扱っていたのに途中から飽きてほとんど使わなくなってしまった記憶がある。

使わなくなると、大事にしなくなると、使い方が乱暴になる。


イザヤは相手の口の中に手を突っ込み、口内をまさぐった。


「早く吐かねぇと、これだぞ?のどちんこに手をぶっ込むからな?」


男は苦しそうにパタパタと、もがき必死に抵抗する。しかし口の中に手を入れられているので言葉を紡ごうにも紡げない。


「それじゃあ情報を吐こうにもはけないですよ。」カズがイザヤを制止する。


「あ、そっか。悪ぃ悪ぃ。」そう言って手を思いっきり引っ張り抜いたものだから男は耐えきれず、イザヤの前で嘔吐した。目の焦点も心なしか合っていない。


「アッハハ!!コイツまじで吐いた!汚ぇ!ギャハハハハ!!」


もう何だか見てられなくなってきて、ヒョウは外に出た。それに元々ヒョウの仕事はここに入る時に負傷した西のギャングの手当てだ。もう自分は必要ないだろう。


唾液まみれの手で男の顎をクイッとあげてイザヤは静かに聞いた。


「…で?何でお前は逃げた?」


「ゴホッ…のゴホッ…ッ…違う!違うんだ……あんたが言う男は知らない!見たこともない!!俺はもっと別のことで」

「何だよ別の事って。」


震えて汗を吹き出すばかりで何も言わない中年男にイザヤは小さくため息をつく。


「殺人か?強盗か?盗みか?………(やく)か?」その瞬間の男の右頬がほんの少し動いたことをイザヤは見逃さない。


「薬ねぇ…。まぁ別に駄目な訳じゃねーけど、ラリって連続殺人事件が過去に起きたのは、もちろん知ってるだろう?あの時から薬はあんまりいい顔されない。」


「……うぅ。」男は唸り、そして俯いた。


(どちらにしても、こいつは関係なさそうだ。)


目の焦点が合わないのをみて、日常的に薬をやっているに違いない。もう薬に潰される。

これだから嫌いなんだ…


「おいカズ、こいつは白だ。俺ぁ手を洗ってくる。」


「あ…はい。」


出て行くイザヤを見てカズは密かにため息をつく。




建物からでた近くの濁った川で、手をゆすぐ。太陽がないここでは水が光に反射するなんて神秘的な現象もない。

地下国の水はお世辞にも綺麗だとは言えないし、最低限な食べものも得ることは出来なければ、暴力に支配されている。


ここを地獄だと称されるのも不思議ではない。


(こんな場所でも、俺は割と気に入ってるケドな。)


“本当に?”


“ここから出たいと思った事はないのか?”


“そりゃあここにいる奴は誰だってそう思った事は一度はあるだろう?”

北の言っていた言葉が反響する。


(誰でも…ねぇ。)


唯一西から出るスポットライトのような聖なる光の下に行った時の事を思い出す。

イザヤが定期的にそこに足を運んでいるのに理由は特にはない。

地下の人は太陽の下に出ることは出来ない。日焼けしてしまうからだ。けれどイザヤは見ているだけでよかった。スポットライトのような光を遠くからジッと見るだけで。


泣き叫ぶ女の声、男の怒声、銃声、罵声、あえぎ声……自分の声。 


どんな耳障りな音もここでは無縁だ。

あるのは光があたる所のみに敷き詰められた柔らかく美しい雑草とその周りを覆う闇。どんな醜い奴でも、どんな怪我でもここなら全て浄化できる気がした。





静かだ。





その静けさがイザヤにはたまらなく愛しく、そして妬ましかった。


『あの場所』が嫌いな訳ではない。

あそこにいるのは嫌だったかと聞かれると嫌ではなかった。

好きだったかと聞かれるとそうでもなかった。

でも逃げたりすることはいつでもできた。それでもイザヤはそこにいた。

それはイザヤがそこをそんなにも嫌いではない証拠だった。


「…さま………イザヤ様?」


背後から声がして、イザヤはゆっくり顔を上げる。そこには前に“命令”を言い渡したエディという黒髪の男がいた。


「ど、どうかしましたか?体調でも優れないのですか?」ヒョロリとした男は呆然と突っ立っていたイザヤを心配する。


「何でもねーよ…っと」そう言って何を思ったのか急に男を抱き寄せる。

「…ッ!……??」顔を真っ赤にして動揺するエディのその長身はイザヤに包み込まれた。


「“奴”はなんて言ってた?」抱き寄せるフリをしてイザヤはそっと耳打ちする。

自分の言葉を聞いて男はハッと我にかえる。


「「き、今日の西光が落ちた後に二人きりで会おうと。」」


「………なるほどねぇ。」イザヤは考える仕草をしながらバレないように濡れた手を男のシャツで拭いた。


そんなやり取りをしている二人をそっと陰から何者かが見ていた事にはイザヤは気づかなかった。


*       *


暗い闇夜の中、イザヤは一人服をぼろっちぃ服を着て外に出た。

外はもう夜でほとんど周りが見えない。そんな夜道を間違えることなく、イザヤは進んでいく。

ゴツゴツした石の通りを通り、普段ならここでオヤジ狩りや強姦がある裏通りを抜ける。どこも今は静かだ。

誰もいない夜のスラム街をイザヤは歩く。

 

「何してるんだ?」


「……ッ」少し驚き、後ろに振り返る。

そこにいたのは金髪頭の、ヒョウだった。


「何してるんだよ、イザヤ。」

イザヤが剥いだ服の代わりに着たダボダボな濃い緑色パーカーは闇夜で一層黒く見える。


「いや何…ただの夜の散歩だよ。」ニコリと笑う。


「こんな、夜遅くにか?」


「あぁ目が冴えちまってよ。」


「そうか、なら俺と同じだな。」そう言ってイザヤの隣につく。


「……は?なにしれっと隣に来ちゃってんの?帰れよ。子供はお布団でねんねする時間だぜ?」


「散歩に行くんだろ?なら俺も連れて行ってくれ。」


「……また今度な。」


(やべぇ…純粋に面倒臭せぇ。)


取りあえず、相手の機嫌を損ねないように適当な言い訳で家に帰らせなければならない。一人で来いと言われているのだ。

こいつを連れて行けない。


そんなイザヤの複雑な笑みを見たのかヒョウは植物のように静かに言う。


「君は嘘をつくときはいつも笑う。」


初めて会ったときもそうだった。

イザヤの笑みの裏にはいつも嘘があっていつもそれが見え隠れしている。




ヒョウはそんな彼の笑みが嫌いだ。




「本当に、散歩か?何か他にもあるんな」「ウゼーな。」

イザヤの低い声が辺りに響く。

「……。」「……。」


「もう先に言っておくぜ?これからいくのは散歩だ。ただそのついでにちょっと寄り道するだけだ。でもそれはアンタが欲しい地上の情報じゃねぇ。医療についても関係ねぇ。」「ケガは…するかもだろ?」


「……ほぉ。」

こいつはなかなか勘が良い。


「あぁ、するよ?けど今回はアンタは不要なんだ。ゴメンナ。」


ヒョウは俯き、行かせまいとするようにイザヤの腕を掴む。そして言った。

「…でも、でも俺は君の医者だから。」


「患者が要らねぇっつってんだから、要らねぇんだよ。」嫌がるように手を払おうとするイザヤにヒョウは更に力を込めた。


「でもっ…そしたら君は」 

ハァと深いため息が聞こえた。ヒョウの声を被せるように。


「俺は、痛いのが好きなマゾだ。」


…知ってる。

けれど、ケイに『あの話』を聞いてからどうしても頭から離れなかった。


「アンタは思ったことねぇかもだけど、俺みたいなのはなぁ。そういうので興奮するんだ。叩かれたり殴られたりする痛み…最高だよ。」


「それはもう十分、分かってる。知ってる。でも、それでもこれ以上体を痛めつけると…」

「俺はな、アンタが無知でバカ正直でそんでもって“誰にでも無関心”だから俺の隣に置いたんだ。」


「!」

ヒョウのイザヤを掴む手がわずかに緩む。それを見計らったように彼は手を振り払った。

 

(そうだ…俺は。イザヤに情をかけないと決めたハズだ。)


あの取引をした夜に。

イザヤを信じないと誓ったあの日に。

今更自分は何をしているのだろうか。


「もうついて来るなよ。次来たらお前の事、『ストーカー野郎』って呼ぶからな。」


いつになく冷たくあしらうイザヤに不思議と怒りは抱かなかった。


残ったのは自分の行動に対する“違和感”そして少しの心残り。



ヒョウは立ちすくんだまま段々と遠くなる彼の背中を見送ることしか出来なかった。


*      *


「西の頭首ってのは可愛そうだよな。」


突然そう言ったケイにヒョウは首を傾げる。これはケイと話した内容だ。

きっと掃除されていないであろうほこりまみれの絨毯に気にせず座り、無意識に彼の後ろ姿を眺める。


「西は地下一荒れてるだろ?そんな不法地帯をたった一人で治めなきゃならないんだから。」


「?」


「誰かの上に立って何かをまとめたり仕切ったりするのって思うほど簡単じゃない。ましてはそれがゴリラの群れならばもっと難しい。」


「…ゴリラ?」


「そう、ゴリラ(ギャング)。」かっこ笑いがつきそうな口調でケイが言った。ヒョウもその大胆な言いっぷりに少し笑みを浮かべる。


「でも、本人(イザヤ)は割と楽しそうだよ。アイツにはあぁいうのが向いてるんだと思う。」


「向いてないだろあれは。どっからどう見ても、嫌嫌(いやいや)やっているようにしか見えねぇ。」


「そうか?」

首を縦に肯首すると彼は一泊入れて、言った。


「アイツはなぁ、北に心酔してんだよ。」


「………いやいやいやそれこそあり得ないだろ。あの、イザヤが?まさかぁ。」


「そのまさかなんだよ。まあ聞けって。」ケイは時計を作る作業を止めて椅子の背に両手を置いてこちらを見た。


「僕も頭首()様が言ってた話で本当かどうかも分からないけどな。二人は十数年前に同居してたんだよ。その時に北の生き方に惚れたイザヤは北に忠誠を誓ったんだ。でもそれは北に対してだけで、なにも国に対してじゃない。その何年後かに頭首の総入れ替えして条約を結ばせたって話は聞いたことあんだろ?あれに北がイザヤを推薦したそうだ。」 


惚れた…忠誠。

ヒョウの知るイザヤからは想像がつかなかった。


傲慢で、詐欺師で、策士で、ひねくれて、ねじ曲がって、悪趣味で、人を道具のように思っていて、マゾヒストな彼からは。

似ても似つかない。


「…他人の空似じゃないのか?」   


「ん、僕も思った。どういう奴かは分からないけどアイツは人をあんまり信用してないのは分かる。僕だって今日まで西の頭首がアイツだって知らなかったし。」


「え?でもイザヤに拾われたんだったよな?」 


「ほんの数日な。時計屋だって伝えたら南に飛ばされた。まぁ僕にとってはここは天国みたいな所だったけど。」

ケイは続ける。

「俺はアイツをずっと『西の頭首の側近』だと思ってた。いや…違う。そうであるかのようにアイツは振る舞っていたんだ。」


(…それは思った。) 


最初に会った時の事を思いだす。

かくいうヒョウも初めはてっきりイザヤは地下国の案内役だとばかりに思っていたのだから。


「その身分を隠したがる所から、自分の悪い噂をあえて流す所から、やっぱりアイツは『北の傍』に、もう一度生きたいのかなって思ってさ。」


「………。」 


「そしたら、西の頭首に『なっちまった』アイツは、なんか可愛そうだよな。」


*        *


イザヤが帰ってきたのは朝だった。

ヒョロリとした男、エディはイザヤと肩を組むようにして帰ってきた。

カズは慌てふためき「敵の奇襲か!」なんて叫び出すものだから西の部下が起きて来る物かとイザヤは冷や冷やしたものだった。


「バァカ。いつものだよ。」そういい通りすがるイザヤにゲンナリする顔のカズ。


「俺の側近なんだからそんくらい把握しとけよ?」


「…今、余計な事せんといてください。」

下を俯いたまま独り言のようにカズは言った。


「あ?」側近の生意気な口に思わず振り返る。


「西に、貴方がいないとっ……貴方が倒れてしまったら…嫌だし、困るんです。…偉そうなことを言ってるのは分かってます。でもっ、本当に、それだけは…」


こちらに振り向き、そして真っ直ぐに前を見つめて 


「譲れません。」


「……。」


「だから、大人しく」

「え~~~やだぁ。」とイザヤは子供ように言った。




「………………いやいやいやいやそこはちょっとは響きましょうよ!俺の言葉に!!アンタそんなんじゃ絶対死にますよ!いつか、絶対!!」


「今死んでないんだからいいじゃないかっ!アハハッ!」


「アハハッじゃないっスヨ!本当に、死なれたらたまったもんじゃないんだから、よしてくださいって!」


「アハハッ。」


エディの肩を借り再び歩き出すイザヤの前にボサボサ金髪頭の男が一人出てきた。


「……おはようさん、早速だけど治療してくんね?」


彼は傷だらけだった。血は滴り包帯で応急処置はしているものの体全てにおいてボロボロだった。

その痛ましい姿にヒョウはなんともないかのようにポーカーフェイスを偽ることに必死だった。

胸にまるでなにか詰まったかのように、重い。そして痛い…。


(こうなることは知っていたんだ。)


(だけど、俺が痛い訳じゃない。)


(俺が心配して止める義理もない。)


(なのに…)





(なんでこんなに胸が痛いんだろう。)

この気持ちがよく分からぬまま、ヒョウは彼らを連れて医務室に入った。


*       *


「いちちち…。」

ケガの手当てを終えてヒョウはカバンの中に道具を治めた。


アザ、傷、殴り跡。顔以外の全てに鮮明に浮き上がっている所を見ると昨晩も激しくやっていたようだ。


「何だよヒョウちゃん。もっとシなくていいのかぁ?」両手を手に体をくねらすイザヤに冷たい視線を送ってやる。


「最低全治三ヶ月だ。」


「おっけい、三日で直るから。」


「バカ、止めろ。動くと悪化するんだから安静にしとけ。」


「だからするんだろ?三日。」


「君は頭をもっと殴られればもっとマシになっていただろうに。」


「んなバカな事を………え、まじで?」


「いや殴らないぞ?」

なんだよーなんて口を膨らました後、プッと噴き出しケラケラと笑うイザヤにヒョウは呆れため息をついた。


ベットに横になったほとんど半裸のイザヤはお菓子をつまむかのようにヒョイヒョイとキノコを食べる。ヒョウは右手を左手でグッと抑えながら尋ねる。自分の心は今、泥水が詰まっているかのように苦しい。


「聞いてもいいか?」


「あ?」


「その…散歩の理由。」


イザヤは面倒臭そうな顔を作る。が、自分を追ってきたヒョウのあの険しい顔を思いだして説明しない方が面倒くさいかもしれないと考え、話し出した。


「連続殺人事件の被害者の遺体が一つだけ見つからねぇんだ。だからエディを情報屋に向かわせて調査させてたんだ。その結果が出たからその報酬として俺がオッサンのお相手になってたって話。」


「……なんで君が?」


「あのオッサンの性癖もイッてんだよ。ヤリながら嬲るんだぜ?俺の顔が苦悶に歪まるのをみて興奮すんだぜ?いや俺も好きだけど、あれはかなりぶっ飛ばしてきやがってたな。


喘いだら喘いだで首締めてきてよー、もう苦しいのなんの、……フフッ。」


ナイフで切り込みを入れられた素肌が包帯の隙間からチラリと見えた。


ヒョウは傷は好きだが痛いのは嫌いだ。傷つけられた原因の話をされても、彼が他人との接合の話をされても全く楽しいものではない。


(イザヤが嫌いか?)

そう聞かれたら苦手だと言うだろう。

全く違う生き物と話しているような錯覚を彼と話していて覚えるのだ。


話は変わるが、ケイの言うことが当たっているのだとすれば、イザヤがこの事件の為に動くのは自分の無実を証明する事以外にも…

多分、北に………一片も責任を負わせたくないのだろう。


そう思い初めてしまってからは何だか彼が痛めつけられたり、犯されたりする理由が全てひっくり返っていく気がしたのだ。

だからあの時つい、彼を引き止めてしまった。


「本当は三日後俺がその死体の場所にいくつもりだったんだけど思ったより重傷なんだろ?」


「…思ったよりじゃない。重傷だ。」


「そうそう。そこでお願いなんだけど、行って来てくれねーか?そこの場所。カズは脳筋だから何みてもなんも掴めず終わるだろうからさ。アンタが行ってくれりゃあ、そりゃ助かる。」


ヒョウは無意識に歪んだ顔が出てしまった。それを隠すようにを俯いたが彼が気づかない訳がないだろう。

前から小さなクスリとした音がしてそれはこう言った。


「………嫌なら別に良いけどさ。」

「いいよ。」


「え?」「分かった。行くよ。」


言葉を被せてヒョウは頷いた。

頷かざる、得なかった。

きっとヒョウが動かなければ彼が動くだろう。

それは何としても避けたかった。


ズキッ…ズキリ


(なんでこんなに胸が痛いんだろう。)


胸に溜まった泥水とわだかまりが未だに取れない。その理由が彼を見て少しずつ分かった気がした。


そうか

これは、これはきっと


      


          “後悔だ”




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