ヒョウの性癖
R15のエロシーンが入ります。
苦手な方は飛ばして下さい。
(前回のユルッとあらすじ)
イザヤがデモ放火犯を拷問すると“ノヴァ”という人物が関わっている事が判明。その後ヒョウの性癖に気づいたイザヤは欲求不満から自分の体の傷を触って良いから自分を痛めつけて欲しいと言い出し…………。
「遠慮しておく。」
ヒョウは怖ず怖ずと、しかしハッキリと断った。
ヒョウはとにもかくにも、ヤブにも誠にも医者なのだ。もちろん傷口を見るも触るのも好きだ。それは否定しない、イザヤと同じように性癖…とまではいかないが『フェチ』なのかもしれないという自覚はある。
けれど彼が望んでいるのは治療ではなく傷を触って傷つける事だ。それは医者としていけないことだ、間違っている。
「……どこでもいいんだぜ?」
イザヤはまた目を細めながらヒョウの手をスライドさせてイザヤの体をまさぐらす。ヒョウは嫌悪感と好奇心の狭間に立っていた。実を言うとイザヤほど傷物の人はお目にかかった事がなかった。そしてまだ見せて貰っていない場所も数多くあるのだ。一体どれほどの傷がついているのだろう。
見たい、触りたい、観察したいと想像したら鼻の穴が広がってくる。
ただ、それでも人としての自我を保ち必死に自分の欲望を抑え込んでいた。
何も言わないヒョウを見てイザヤは不思議にも悲しそうな顔を作る。
「俺な、4日に一度はDVの日って決めてんの。でも体の修復に時間がかかるから昨日も一昨日もその前もしてねぇんだ。だから最近は気分がすこぶる悪いんだけど頭首としてそれを出すわけにゃいかんだろ?
体を痛めつけないようにデモ犯で欲求不満を解消してたんだけど……。やっぱり自分じゃねぇからね。」
「…だから君の性癖に付き合えと?」
「俺のだけじゃない。アンタもだろう?他の奴らだったら手っ取り早く殴らせちまうけどアンタはそれを絶対にしない。」
彼は傷つきたいハズなのにそれを他の奴らじゃなくて自分にやらせようとする理由が分からなかった。
「いいじゃないか、殴られても。カズさんや君の腹心の部下を連れてくるから彼等とすればいい。」
「駄目だって、あいつら俺のこと好きだから殴れねぇし、やったとしたら俺のハメが外れてやり過ぎちまう。」
(もともと外れているだろう?)ヒョウは眉を八の字に曲げた。
「俺がどうやってデモ犯捕まえたか知ってる?」突然話題が変わった事にヒョウは狼狽える。
「え…あ、あぁ。カズさんから聞いた。」
「よしよしいいね、そんで作戦は見事成功で予想通り…んにゃ、予想以上の成果だった。だけど同時にそれが成功してしまったと言うことは俺の身が危ない事も指し示している、何でか分かるか?」
ヒョウは少し考え、そしてそれを口に出した。
「内部の情報が漏れていたと言うことはある意味ギャングの長の誰かがイザヤの所の奇襲を企てたって事になるからか?」
イザヤはご名答と言わんばかりにニカッと笑った。
「鋭いな。その鋭さの百分の一をカズに分けてやりたいほどだ。あの地下会議に入れるのは側近もだから、そのどちらかに絞られるね。…さてさてヒョウ君、それも踏まえた上でもう一度考えてみたまえ。今俺が他の奴と遊んで怪我でもしたら俺が殺されるリスクがググンと上がるだろう?骨折でもすればその場から動けないからアンタが知りたい情報とやらも狭くなる。
俺は死にたくない、アンタは外にでたい。俺は傷つけられたい。アンタは傷を触りたい。……これ以上ウィンウィンな関係ってある?」
ヒョウは絶句した。
(う、ウゼぇぇ~~~~~~~~~!!)
…その粘着質に心から呆れた。そこまでして傷を触って欲しいものなのだろうか。
こんなアホと真正面から戦うのもなんだか疲れてきた。
「……一度だけだ。それ以上絶対やらない。約束だからな」
「アッハハ、オッケー。約束な。」
どこまでも軽すぎる男にヒョウの心は複雑にかき乱された。
* *
その頃、かの東の残虐な長は自分の城の窓から西の城が燃えさかるのを見ながら、西の言葉を思い返していた。
『 「多分俺、殺されるかも。」
出会ってからずっと変わった事ばかり言う奴だったが、多分これがいままで聞いたどの中でも不自然な言葉をまるで挨拶するかのように奴は自然に言った。
「あぁ?誰にだよ!」気がついたら声を荒げて言っていた。
西はそんな自分を見てニヤニヤとした笑みを見せた。
「おやおや、心配してくれちゃってんの?相変わらずだなぁ、アンタは。」
「弾ぶち込まれてーのか?」
「それってもしや、アンタのキンタ」
「銃弾だ、ボケ。」
眉間にしわを寄せながら東は言った。
「~~……はぁ、大体あれはなんだ?五日にすると地下会議の時宣言した後に二日に変更だぁ?何考えてやがる。」
「簡単な話だよ。どっかに国を乱そうとしている戦闘狂がいるって事。アンタの部下の……す、……す…と……………ストリップ?」
「スレッドだ!」
「そうそう、そいつ殺した犯人にもしかしたら殺られるかもって話。」
「はぁ、何でだ?」
「知らねぇよ。俺の方が知りたいわ。」
会話が全く成り立たない事は日常茶飯事だが今回は特別に合わない。
イザヤは耳をポリポリほじりながら言った。
「取りあえず俺が言いたいのはアンタも気をつけろってだけ。誰が犯人で何が目的でどんな奴なのか分からないんだから。」
「…お前に言われるまでもない。こっちはこっちでちゃんと対策も捜索もしている。」
「あっ、やっぱり?馬鹿みたいに正義感が強いアンタの事だから絶対黙っているハズねぇって思ってたんだよな。」
馬鹿みたいは余計だが、部下が二人も殺されてしまったのに黙って待っているだなんて事はとてもじゃないけど自分にはできなかった。犯人は直接、自分の手で始末したい。
東はさっきと同じ言葉をもう一度言った。
「さっきの質問にまだ答えてないだろ?
なぜ日日を変えた。それがこの事件と何か関りがあるのか?」
「やだなぁ、そんな深い意味はないよ。俺がただ単に早くアンタに会いたかっただけだよ。」
……本当か嘘か分からない。
顔色一つ変えず息をするかのように戯れ言を吐き、相手を所構わず口説き落とそうとする。そんな西を東は嫌いだった。
表面上だけで中身が入っていないのだ。
ギャングの事もそうだ、奴は自分の事を『イザヤ』と旧名で名乗っている。本来なら長になった直後で国に誓うと言う意味合いで旧名は捨てるのだ。
正体を人に晒したがらないのも国をまとめる長としてどうなのだろうか。
どれだけ批判しても地下一に偉い北に少し気に入られているので奴の行動は全て水に流されるのだ。
東は曲がった事が嫌いだ。嘘をつくのも、規則に従わないのも、権力に屈するのも。
その全てに当てはまっている西を見ていると心のそこから嫌悪感でいっぱいになりどうしても殴りたくなる。
「んじゃ、それだけ。お互い幸せな老後を迎えられるように神様にお願いしておかないとな。」先ほど交換した金貨50枚を懐の中にしまい込み颯爽と部屋を出て行こうとする。
「……おい!」
気がついたら呼び止めていた。
「…?」
顔だけこちらを向ける西の目はいつものようにどこか虚ろに見える。
目の前にいるのに目は合っているのに、奴には何にも映っていない。
(コイツのその気味の悪い所も…嫌いだ。)
「死にたくなったら俺に言えよ、プライベートで手を汚してやる。」 』
東は自分のした行いを恥じた事はない、いつも正義と覚悟と信念を持ってやっていることだ。
ドアがノックされ呼び出された部下が入ってきた。東は視線を窓に向けたままこう、たずねる。
「西は、死んだか?」
* *
火傷をすると水ぶくれが出来る。その当たり前の事を誰しも、なぜこうなるのかと一度は考えた事はあるだろう。皮膚が膨らみ水が入ったような状態になりプニプニする。アザもそうだ。皮膚が変色し、血は出ていないのに触ると痛い。痛いのにも構わずそれもつい興味本位で触ってしまう。
ヒョウは多分その興味本位の行動が強く出過ぎてしまっただけなのだ。
そして痛いのにも関わらず触られたいと望む彼も、また同じだ。
「……痛、ぁ……っ」
「………っ。」
ヒョウは腹の傷に触れ、そっとなぞった。古傷はすっかり治癒していて肉が少し盛り上がっていることがヒョウは不思議でたまらなかった。人間の体とは謎が多い生き物だ。
イザヤは古傷よりも新しく出来た傷に触れて欲しいようだったのでしぶしぶもう片方で東にやられたであろう傷の痕をさすった。
痛いのかくすぐったいのか、彼の肩はびくりと大きく跳ねる。
「………あっ、は……っ、はは……いいねぇ。」
「……背中、見せて?」
ヒョウは少し興奮気味を隠すように声を低めていった。
イザヤはそれが分かっているかのように黙って素直にシャツを脱いだ。初めて見た右の腕には一本、黒い入れ墨が入っていた。
お目当ての背中には期待以上の物があった。一筋、斬られたような痕が大きくあったのだ。ヒョウ心の中でそれを喜んだ。
息遣いが荒くなり触る手が震える。ずいぶん昔の物のようで治癒が済んでいて綺麗な痕となっていた。ヒョウが感じる傷の体温や感触は言葉に出来ないほど自分を高揚させる。
「……フッ…んあ…あぁ…。」
もう時間は随分経っている。もうそろそろ終わりにしなければならないのに、ヒョウの好奇心がそれを止められなかった。
(…あと少しだけ。)
もう二度と触れないだろうからせめて背中の傷だけはもう一度目に焼き付けたかった。手を伸ばし“あと少しだけ、少しだけ”と、自分に言い聞かす。
心なしかイザヤの体は熱く火照り触り心地が良かった。
「…んん、いっ…………ちょ、おい。」
「何?」
気持ちが上がっている時に止められてたので少し苛立ったような声で答えてしまった。
「そっち古傷しかねーから、前もしろよ。」
「……分かった。」
イザヤはどうやら前のみをお望みのようだった。赤い腫れた痕も魅惑的だが、やはり何か欠けていた。けれど触らせて貰っている身としては本人の要望を聞き入れる必要があった。手を前と後ろで同時に動かしイザヤに痛みを与える。
「…いっ……ん…あぁ……ンフフ…。」
相変わらず喘ぎ声に似た声をだす彼はどこか嬉しそうで蕩けたような笑顔を魅せる。そんな彼を見てヒョウは密かに吐息を零した。
「爪…立てて、傷つけろよ。もっと…。」
「………。」
「痛っ!…ハハ…あ……ん。」
彼はふとこちらを視線を向けるとこんな事を口にした。
「やっべぇ、……勃った。」
「……。」
ヒョウは触っていた両手をバッ離した。
そしてイザヤが着ていたシャツを彼にバンっと投げつけ、部屋を出た。
後ろから『ンゴッ!』と小さくイザヤの声がした。
外に出て川に行くとヒョウは手をゴシゴシとしっかり洗った。
(俺は、一体何をしてるんだ。)
ゴシゴシゴシと手を洗う。彼に必要以上に近づかないと決めたはずのに。お互い熱を持ってしまった。
ヒョウは手洗いを終えると顔をくしゃりとしかめて、懺悔するかのように近くの木にゴンッと勢いよく頭を打ち付けた。




