作戦会議の次の日
作戦会議が終わりを告げて日が変わる。
テシオあシュウジになんとなく申し訳なく感じていた。
ギルドの作戦会議から夜が明けた。
騒がしい夜も明けて、それぞれが日常に戻ろうとする。
朝の早いものは夜が明ける時点で休眠を終え、次の行動に移ろうとする。
買い物や戦闘の準備や家事などさまざまだ。
朝日が街を照らす。
シュウジはその時間にギルド支部の前で佇んでいた。
「あ、おい。ちょっといいか?」
シュウジに声をかける者がいる。
作戦会議で命優先の意見を出したテシオだ。
シュウジは声をかけられた方に振り向く。
「はい」
「あー昨日はすまなかったな。つい熱くなると口調が汚くなって・・・」
テシオは恥ずかしい気持ちで一杯だった。
今考えたら、この名前も知らない1回生の方がよほど優れた意見を言っていたような気がする。
依頼をこなさなければ、相手の命どころか自分の命を危険に晒してしまう。
それが、仕事をするということ。
誰のためにもならないことをしたって、誰も金を回してくれない。
それが世の中のルールだ。
自分はそのルールを軽んじ、己だけを通してしまおうとした。
それも、この目の前の名前も知らない後輩を威嚇してまで。
「いえ、いい意見だったと思います。こちらこそ目的を優先してしまって周りが見えていなかったと思います」
例え社交辞令だとしても、そういってもらえるのはありがたい。
「そうか・・・お前名前は?」
「シュウジといいます。貴方は?」
「テシオという。そんなに畏まらなくっていいぞ?ロバートと話してるみたいに話してくれ。俺は敬語を話されるような人間じゃあない」
「・・・・わかりました。いや分かったよ」
シュウジは戸惑っているようだった。
いきなり敬語は使わなくていいといわれて語尾に迷ったこともあるが、それよりシュウジも自分と同じ不安を持っていたかもしれない。
自分の意見を推し進めようとした罪悪感にも似た不安。
だからテシオは思った。
「俺らはもう仲間だ。対等に俺と接してくれ。呼び捨てでもいい。いきなりこんなこと言われても困ると思ったが、これは俺が正しいと思ったことだと、そう考えてくれ」
「わかったよ。テシオ。俺らは友達」
シュウジがそういってくれてテシオは安心した。
「じゃあ、俺もう1眠りしてくるわ。じゃあな」
そういってテシオは支部に戻ろうとした。
そこでシュウジに呼び止められる。
「テシオ・・・・ありがとう」
「何をだ?」
「命を守ろうと言ってくれて。俺は正直ギルド員として大切だと言われつづけていた事を忘れそうになっていた」
「大切なこと?」
「そう。依頼者が人だってこと・・・」
「・・・・・」
「呼び止めてごめん。それだけ言いたかった」
「そうか・・・分かったじゃあお休み」
「お休み」
動揺を隠して支部に入るテシオは感服していた。
この年下の少年は自分より深いことを考えていたのだ。
テシオはいつだって思う。
自分の意見を通そうとするといつも自分の未熟さを思い知ってしまう。
それがなんだか悔しい。
そう考えて自分の寝床として確保したところに戻る。
作戦会議で集まった全員が納まるには少しこの支部は狭い。
だから、大半のものは床で寝ていた。
寝に行こうとすると、ロバートとすれ違った。
「おはよございます。ロバートさん」
「おう、テシオか?おはよう。早いな」
「これからもう1回寝るところです」
「そうか。お疲れ」
そういってロバートはあくびを1つする。
ロバートも疲れていたようだ。
テシオは横を通り過ぎようとするロバートに言葉を発する。
「シュウジってすごいやつですね」
「そうだな。俺の若い頃にくらべりゃすげーよ」
「いったいどういう経験をしたらああいう考え方ができるのか・・・。自分が情けないですよ」
テシオは情け無いと思いつつも、言わずにはいられなかった。
対してロバートは背伸びを一つする。
「すげぇけど、お前と何にも変わらない。お前だってすげぇんだぞ。命を大事になんてのはなーそんなに簡単に言えることじゃねーんだからよ」
「誰だって言えますよ。聖職者だって誰でも言ってることじゃないですか」
「そうだな。でもお前もすげぇと思うぞ」
「あの・・・どういう意味か分からないんですけど」
「ま、大して意味は無い。今から寝るんだろ。おやすみ」
そういってロバートは支部の玄関から出て行く。
出て行った先でシュウジと一言二言話してから、出かけていった。
テシオはロバートの言葉の意味を考える。
「ま、いっか」
だが、すぐに頭を切り替えた。
今日は学園は休みなので、学生員は昼間で寝ているものもいる。
作戦の日まで数日。
どのように過ごすかはギルド員個人に託される。
テシオはなんだかんだでいい子。
ていうか一番いい子かと・・・




