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セント・フリークス  作者: 羊洋士
三章
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17/25

作戦会議の一

シュウジが聖術を使えて数時間。

ロバートはギルドの支部に事件に関わっているギルド員を集めた。


シュウジが聖術を収めた数時間後のこと

ロバートが殺人事件に関っているギルド員をギルド支部に集めた。

もともと大人数が入る建物ではないのもあって、支部の中は十数名同じ場所にいるだけでも狭い。


「みんな、聞いてくれ。昨日、二件目の事件が発生したことは知っているな。一件目と二件目は殺されたやつに共通点があった」


ここにいるものは大方が若い。

若い者は学園の先輩だ。


「殺されたのは商業ギルドの中でも危ないことやってる商社だ。俗に言うマフィアだな。その下っ端が殺されていることが分かった」


「じゃあ、ロバートさん。この件はマフィアの抗争かなんかなのか?」


声を上げて質問するのは学園の先輩だ。


「そこまでは分かっていないが、その可能性も高い」


「その可能性"も"?」


ロバートが頷く。


「殺されたのは幹部でもないただの下っ端だ。抗争で狙われるなら幹部とかだろ」


「じゃあ、下っ端同士の抗争とか?他のマフィアとの」


「それもありえる。だが聖術師が関っている時点でそれも可能性が低い」


聖術者は独特の教育機関があるとはいえ、人材は豊富ではない。

教育を受けた全員が聖術を使えるわけではないし、仕事で使えるものが出ないこともある。

戦闘では使えない能力を持っていたならば、戦闘では普通の人間と大差ない。

1人の男がしびれを切らして質問する。


「じゃあ、ロバートさんはどう考えているんだよ」


ロバートは頷く。


「粛清だと思われる。マフィアの内部でキナ臭い取引が始まるらしい。それ自体はいつものことだが、問題は幹部連中全員がそれに賛同しているものだけではないという話だ」


「取引の内容は?」


「マフィア同士による、薬の売買と思われる」


「なるほど」


1人の学生が質問する。


「ロバートさんの調査結果は分かるが、だろうとかたぶんとかが多いな。調査もそのレベルなのに俺らをここに集めた理由はなんだ?」


「そうだな。それが今回の本筋だ。明後日の夜にマフィアの大きな取引があるそうだ。警備隊とギルドで一般人に危害が無いように警護することになるんだが、そこに奴が現れる可能性がある。反対派の仕業なら可能性はある」


「警備隊がマフィアの警護かよ」


そう皮肉交じりに言ったのは1人の学園生だ。

テシオという名を持つ少年だ。

テシオは三回生で聖術も優秀だとギルド員の中じゃあ評判だ。

なにより熱いものを持っている。

そのテシオが呟いた一言にロバートがいなす様にいった。


「まぁ大事なスポンサーだ。その資金は微量ではあるが民衆に還元されている部分があるって事だ。いずれはそういうのも少なくなるように動いている政治家だっている。だが今回は切り替えてくれ」


「ふん!分かってるよ!」


テシオは怒りを吐き出した。

その回答を聞いたロバートは嬉しくなっていた。

自分もそんな時期もあったのだと思う。

今の自分も嫌いではないが、先ほどの少年のまっすぐな気持ちは見ていて嬉しくなってしまう。


「よし!じゃあここからは作戦会議だ。意見を求める」


「何についてだ?」


「それも含めての意見交換だ。ただ、今回は警備の話をメインに置きたいと思っている」


すると全員が意見を出し合う。


「どうやって阻止するか?罠でも貼る?」


「いやそれだと取引が上手くいかなくなるだろ。両者とも疑って。それでは餌として使えない」


「じゃあ、取引相手に混ぜてもらうか?」


「それはコネがないとなぁ。この中にそのコネがある人間はいるか?」


それぞれが意見を出し合い、反論までする。

アリサはそれを見て複雑な心境になる。

これじゃあ、いつまでたっても決まらないじゃない。

経験もないギルド員が考えることはいいことだが、今回は時間がない。

それに経験がない自信は危険だ。

アリサは極力会議には参加しないつもりだった。

が、ロバートの不出来は同僚としてあんまり感じのいいものではない。

だからアリサは質問した。

あえて、ロバートの進行に乗る形で。


「じゃあ私からロバートに質問いいかしら?」


ロバートはどうぞと促す。


「その取引中のマフィアが死んでから、油断しているところを捕まえるのはどうかしら?」


ロバートは微笑んだ。

やな男だ。

私が出てくるのを待っていたのだ。


「いい意見だ。他には何かあるか?」


その2人の話に皆が動揺した。

そして1人の若い男が声を上げる。

先ほどマフィアの護衛に不平を言っていた男だ。


「ちょっと待ってくれ!マフィアの護衛が任務だろ?」


それに対してロバートは丁寧に答える。


「俺らの仕事は犯人の捕縛だ。マフィアが死んでも損にはならない。俺らが殺すわけではないしな。それにマフィアの護衛はお前だって嫌だろう?」


「そりゃそうだけど・・・」


若い男は口ごもる。


「俺らはギルド。警備隊ではない。そこを間違えるな。あと、今のアリサの意見はお手本にしろ」


ギルド員の、とくに若い者達はロバートの言葉の意味を考える。

だが、やはり意味が分からない。


「お手本とはどういう意味ですか?」


学園の女生徒が言った。


「そのままの意味だ。これは作戦会議ではない。罠を張ったりマフィアに紛れたりは良い意見だが、それはまだ先の話だ。大事なことを決めていない」


「大事なこと?」


「そうだ。俺らがどのようにして、その仕事に向かうかだ。つまり最重要目的の設定。これが一番重要になる」


「最重要目的・・・」


「そうだ。ギルドの依頼はおおむねそれが不明確だ。たしかな物品を扱っているわけではないからな。だからそういうのが一番重要になる。とっさで判断が下せるようなる。とっさの判断ができれば、生存率もあがる。そういうことだ」


「じゃあロバートは何を目的にするんだ?」


「そうだ。それがまず話すべきことだ。それを君らに出して欲しい。私だと・・・そうだな・・・犯人の能力を見ることを目的に行動するよう提案したい」


若いギルド員たちは無言になる。

そして一つのことを思った。

2人とも人の命の保護を目的にして言わなかった。

それが彼らには少し引っかかる所だった。


「じゃあ、マフィアの命はどうでもいいってことかよ!!」


「どうでもは良くない。だが今回は無視していいと思う」


「無視って!?俺らの仕事は人助けだろう!?なんで命を無視してまで達成する目的があるんだ!?」


一番突っかかってきたのはテシオだ。

テシオは誰よりも声が大きくしてロバートに突っかかった。

学園生の気持ちを一部代弁するような内容だ。


「人の依頼をこなすという事だと俺は思う。だからアリサだって生半可な気持ちで来られたくはないと言っているだろう?」


「ッ!!」


テシオは黙った。

ロバートはこの少年はもうギルドに来なくなるかもしれない。

だが、今言っておかなければ命に関わる。

そういう危険性もあるのだ。

こういう討論は良い。

熱意もある少年達が多い。

この中でギルドの顔となっていくやつらも多いだろう。

先ほどから突っ掛かってくる少年など、将来が楽しみでならない。

人の命をマフィアだからと区別していない。

それは自分達そこそこ仕事をこなしている俺らであっても忘れることがあるからだ。

人の命を無視する場合もあるこの仕事も、突き詰めれば命を生かす仕事なのだ。


「さぁ、他には意見はないか?」


答えるものは誰もいない。

ロバートはこの先も少し期待している。

それは、ロバートとアリサの言ったロジックを、同じレベルで言えるかどうかだ。


「ロバート。一つ質問いい?」


静けさの中で最年少組の少年が言う。

シュウジだ。


「なんだ?」


「犯人は1人なのかな?」


「それは不確定だ。だが傷を見る限り似たような大きな裂傷だ。1人という可能性が高い」


「そう・・・」


そういってシュウジは思考に入った。

他のものはその質問の意味が分からなかった。

というか、シュウジが何でそういう考えに至ったかが分からなかった。


「さぁさぁ他に意見がないなら、このどちらかで決めるが?」


全員は無言だ。

時間だけは経つ。


ロバート痛みを堪えての司会。

額には汗が(嘘)

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