表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セント・フリークス  作者: 羊洋士
三章
PR
16/25

ロバートとの訓練2-2

訓練は第二ラウンドへ突入


「いつっ!!」


「おう。起きたか」


ロバートは水筒の水をシュウジに垂らして、目を覚まさせた。

シュウジが眠っている時間はだいたい15分といったところだろうか。

ロバートはその間、大きな木の根元においてある水筒を取りに行っていた。

取りに行くだけなら、そんには時間はかからないのだが、ロバートは数分木陰に腰掛けて休憩をしていた。

ゆっくり流れる雲をしばらく見てから、水筒をシュウジが気絶しているところへ持っていった。


「あれ?何でここで寝てたんだっけ?」


目覚めたシュウジは体を起こして、現状の疑問を口にした。

どうやら記憶が少し曖昧になっているらしい。


「イタッ!ああ、思い出した」


シュウジは顔を抑えた。

手加減をして骨までは折れてないだろうと思ったが、痛みは残ったようだ。


「大丈夫か?」


一応、気にはかけているものの本心では違うことを考えていた。

これからもっと痛い目を見る。

ロバートはそのつもりだ。

痛みなしに済ませるつもりはない。

急いで仕上げる必要があるからだ。

訳は知らないが、シュウジが急いでいる。

先ほどは問い詰めたが、実際ロバートはさほど聞かなくてもいいと思っている。

誰にでも理由は言えないが協力して欲しいことなどあると思っているからだ。

先ほどは、ギルド員としての心得を問い質したかっただけで、初めからシュウジに協力するつもりだった。


「どうして殴ったの?」


「まぁ今から分かる・・・かもしれない」


「何それ?」


訳はある。

雑な方法だったが、シュウジをこの訓練ではボコボコにする必要があると確信していた。


「まぁいいだろ。それより第二ラウンド行くか」


そういって、ロバートはポケットから手袋を出す。

訓練用の緩衝材が入った黒い手袋だ。


「来い。俺はお前を殺す気で行く」


そうロバートは告げる。

ロバートは本気だった。

この訓練でロバートが教えるつもりでいることは2つある。

1つは人を殴る覚悟。

女子供を殴れるか聞いたのはそういう意図があってだ。

実際ロバートは戦闘に従事しない子供や女を殴ることはしない。

だが、しないというだけで出来なくはない。

それは必要ならできるという覚悟があるからだ。

ただ、殴れない事を、常識やルールという言い訳で覆い隠してしまっては永遠に聖術を取得することはできないだろうと思う。


「さぁ構えろ。いくぞ」


シュウジは眉間に皺を寄せて木の棒を構えた。

体の真正面に木の棒を置いて、そこから振り上げて振り下ろす動作を縦の動きだけで達成できる構え。

少々硬いが、気合は入る構え。

しかし、ロバートはそれには満足しなかった。

相手を睨まないと戦えないのは戦闘系としては三流以下だ。


「てぇぇぇい!!」


シュウジが仕掛ける。

真正面からの喉元に向かって付く構え。

単純な動作で敵の急所を狙えるし、シュウジなら十分な瞬発力もある。

だが、それはシュウジの年齢で考えるとの話だ。


「そんなのがあたるか!!」


そういったロバートは向かってくる突きに対して、下がるのではなく向かっていった。

棒とロバートの体の相対速度はより速くなる。

ロバートは緩慢とも取れる動作で、シュウジの手元を見て軌道を察した。

木の棒が眼前に迫る。

ロバートは木の棒を受け流すように右の肩を後方に下げて体を回転させる。

その動作と、首を少し捻った。

木の棒はロバートの首元をぎりぎりで通り過ぎる。


「!?」


「遅い!!」


ロバートは右肩を後ろに下げた体で前に踏み込んだ。

そのまま、右の拳を握りシュウジに発射した。

シュウジは攻撃を避けられて体のバランスが崩れている。

そのシュウジの腹部に、ロバートの右拳が炸裂する。


「がっはっ!!」


「駄目だな。これじゃあ」


そういってロバートは呟いた。

シュウジは唾液を口から垂らした。

が、今度は倒れこまなかった。

ロバートは表に出さないように倒れなかったことに対して感心した。

だが、そうでなくては困る。


「シュウジ。お前もう帰っちまえよ。才能無い。無能だよ」


「なん・・・だって?」


シュウジの喋り方が少しおかしい。

おそらく痛みを耐えて、息がおかしくなっているのだろう。


「そのままの意味だよ。お前さ。昔から不思議だったけど何を怖がってるんだ?人を傷つけることか?それとも自分が傷つくことか?」


「はぁ、はぁ」


シュウジは激しい息をしているが、質問には沈黙で答えた。

ロバートは気になっていた。

この少年の心を削ぐ出来事はいったい何なのだろうと。

少年らしく劣等感から来るものだろうか。

だから、それを揺さぶるような言い方をさっきからしている。

が、あまり効果は無いようだ。

自分では自覚していることだから言われても抑えられるのか、他の理由があるかだ。


「答えないか・・・」


そういうとロバートは拳を握り、シュウジの頬を殴った。


「くっ!!」


シュウジは耐える。


「痛いか?苦しいか?それとも楽しいか?」


「たの・・・しい・・?」


シュウジは疑問を投げかけてきた。


「そうだ。戦いとは本来楽しいものだ。何故なら自分を証明できる!勝てば強いと思える!目的さえ達成できるかもしれない!それが楽しくない奴なんていない」


「・・・・」


シュウジは沈黙で答えた。

ロバートはそれを見て思う。

まぁそうだろうなと。

戦いが楽しくない訳が無いなんて事吹いたが、全員に当てはまることでは無いことは知っている。

ただ、この場はそう誇張させておいたほうがいい。


「お前は何が楽しい?戦場に立てる事が楽しくないのか!?せっかくの五体満足を使い潰したいとは思わないのか!?」


ロバートは叫ぶ。

俺はそうやって戦ってきたと。

俺はそうやって挑み続けてきたと。

それが俺のモチベーションであり、恐怖の克服に繋がっているからだ。

誰もがそういう方法を持っている。

戦闘を強いられる人種なら。

そのいわば"痛みに対する覚悟"をこのシュウジに教えなければならない。


「それが分からないならもうギルド目指すの止めちまえ!!」


断言したロバートは少し恐怖を感じている。

自分からこのシュウジが離れる怖さだ。

ロバートもアリサもシュウジが気に入っている。

だからこそ、覚悟を持って仕事をして欲しい。

それが生きることに繋がる。

死の可能性を自覚して望むことは、生き残る可能性を上げる。


「楽しい・・・?」


対してシュウジはそう呟いた。


「戦うことが楽しいの?こんなに痛いのに?相手をこんなに痛い目に合わせるのに?」


殴れば相手も痛いが、殴った方も痛いことがある。

それを知っていることは好ましい。

だから、こいつはギルド員にしておきたい。

命令されて人を殺す国の兵には、合わない性格をしている。


「そうだ」


「じゃあ、いつもロバートはそう思って殴ってるの?子供でも女でも殴ってると楽しいの?」


「それが臨むということであれば、そういうことになる。俺より強い子供の女も沢山いるからな」


「なるほど・・・確かに自分より強い人間は沢山いる。追いつけないほどに」


「いるな沢山。だからどうした!!お前が弱い理由にはならないし諦めなければならない理由にもならない!!俺だってそうだ!!今だってまだまだ臨んでいける!!強くなれる!!それがどれほど楽しいことか、一晩中お前に聞いて欲しいぐらいだ!!」


ロバートは思う。

今言ったことはかつて、仲間とも言い合ったことだ。

だから、ロバートはシュウジを仲間にしたい。

だから、今はぶん殴る!

そういう気持ちでもう一度拳を振り上げた。


「教えてやるよ!!俺の戦闘賛歌!!」


叫んで拳を振り下ろす。

だがその拳がシュウジに当たることは無かった。


「ああ、カネサダと呼ぼうか・・・」


ロバートは小さな声と腹部の痛みとシュウジの在り処に気付いた。

シュウジはロバートの後ろに移動していたのだ。

だが、ロバートには理解していた。

シュウジか何らかの方法で移動したのだ。

聖術だろうと思う。

単純高速化の極めれば比類なき力となるとロバートは思った。

もっとも、身内贔屓なのだろうが・・・、


「なんだ・・・。出来るじゃないか。手間取らせて」


シュウジの腰に先ほど無かったものが合った。

鞘だ。

刃は抜かれている。

シュウジは沈黙を保ち佇んでいた。


「峰打ちじゃなかったら洒落にならなかったな。そいつがお前の聖術か?名前付けたら教えてくれよ。名前は合ったほうがいいし」


ロバートの言葉にシュウジは反応した。


「そうみたいだ。そうだな。名前は俺の知らない故郷で強そうなのがあったからそれを借りた。カネサダと」


「他国で伝わる名刀の名前か。いいじゃねーか」


そういってロバートは倒れる。


「ロバート?」


シュウジは静かに聴いた。

どうやら精神が沈静化しているようだ。

聖術の初めての発動は心が不安定になりやすい。

聖術が心の所業であるからだ。

暴れなくて良かった。


「大丈夫だ。それより、何か乗り越えたようだな」


シュウジはうなずく。


「これから俺は臨んでいいんだと思っただけだ」


涼しい風がシュウジの言葉をロバートに運んだ。

ロバートはそれを聞くと、まぁまぁ良くやったな俺と苦笑した。


ロバートは殴り返したことにたいして言い訳してますが、実際はただの逆切れです。

巻き込まれたのはシュウジですが、今回ばかりはシュウジも言い返せませんな・・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ