第9話 捜査官任命
「捜査官、ユリアン・フォスター。本件を担当せよ」
騎士団本部、重厚な扉の奥。指令官の声に、ユリアンは深く頭を下げた。
「――は。謹んで拝命いたします」
だが、部屋を出ようとした瞬間、背後から呼び止められた。
「待て。お前、被告人と幼馴染だそうだな」
振り返ると、年配の騎士が険しい顔でこちらを見ていた。
「事実です」
「私情を挟むのではないか、と懸念する声が上がっている。担当を変えるべきだという意見もある」
ユリアンは一歩も引かずに答えた。
「だからこそ、私が適任です。彼女を誰よりも知っているのは私だ。もし本当に無実の可能性があるなら、それを見抜けるのも私しかいない」
「……本当に、無実だと思うのか?」
「思います」
迷いのない声だった。指令官は、しばらく黙ってユリアンを見つめていたが、やがて小さくため息をついた。
「いいだろう。だが、結果次第では、お前自身の立場も危うくなると心得ておけ」
「承知しております」
一礼して部屋を出たユリアンの胸には、静かな決意が燃えていた。
――リゼット、待っていてくれ。必ず、お前を自由にする。
その決意が、これから何を招くことになるのか、この時のユリアンはまだ知らない。
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