第10話 無実を探して
面会の許可が下りるようになってから、ユリアンは三日と空けずに独房を訪れるようになった。
「今日は、事件当夜の記録を持ってきた」
分厚い書類の束を広げながら、ユリアンが言う。
「騎士団の報告書、教会側の証言、周辺住民への聞き込み……全部に目を通した。だが、決定的な矛盾はまだ見つかっていない」
リゼットは黙って書類を見つめた。矛盾など見つかるはずがないことはわかっているからだ。
「お前が何も話さないのは分かってる。だから、俺の方でできることを一つずつ潰していくつもりだ」
ユリアンは苛立った様子も見せず、淡々と続ける。
「聖女様の身辺を洗い直す。そもそもなぜ二人であそこに居たんだ。お前があそこに行くことなんて滅多にないはずだろ? それが未だにわかっていないのも問題なんだがな。きっと誰かに嵌められたのだろう。そこに何か手がかりがあるはずだ」
その言葉に、リゼットの肩がわずかに強張った。
――そんなものは、いくら探しても出てこない。
だが、このままではリゼットとしても先に進めず困っていたところだった。ユリアンに少し協力もできるし、こちらの目的も達成するために必要な情報が得られるかもしれないので、少しだけユリアンに助けてもらうことにした。
「……教会の、内側を見て」
ユリアンが顔を上げる。
「教会? どういうことだ」
「わからない。でも、外じゃない。もっと近くにいる」
言えるのは、そこまでだった。それ以上を口にすれば、奴らに気づかれてしまうかもしれない。
ユリアンは怪訝そうな顔をしながらも、手元の書類に何かを書き留めた。
「……分かった。何か意味があるんだな? 教会関係からもう一度洗い直してみる。ありがとう」
その様子を見ながら、リゼットは小さく息をついた。
無実の証明のためではない。自分がまだ見つけられずにいる奴らに、少しでも近づくために。
ユリアンにはその本当の意図は伝わらないだろう。でもそれでいい。今はまだ。
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それでは、また別の作品でお会いできますように。




