第7話 語らぬ理由
夜が更けると、独房はいっそう静かになる。
物音ひとつない時間の中で、リゼットの思考はどうしても過去へと流れていく。
セラフィナと出会ったのは、まだ二人とも十代の頃だった。
教会の付属学院で、才能を持て余していたリゼットに、誰よりも先に声をかけてくれたのが彼女だった。
「あなたの魔力、すごいのね。怖くないの?」
そう笑って尋ねてきた顔を今でも鮮明に覚えている。あの時から、セラフィナだけは、リゼットを化け物としてではなく、一人の人間として見てくれていた。
だからこそ、あの夜のことは誰にも話せない。
自分がどれほど嘆こうと、セラフィナは戻ってこない。悲しみに溺れることは簡単だ。だが、それを許されている立場ではないと、リゼットは分かっていた。
世界最強と呼ばれる魔力を持ちながら、たった一人の親友の運命さえ変えられなかった。その事実だけが、胸の奥に重く沈んでいる。
それでも――。
託されたものがある以上、立ち止まるわけにはいかない。
誰にも真実を明かせないなら、その代わりに、自分がすべてを背負うしかない。
責められることも、憎まれることも、受け入れる。
リゼットは膝を抱え、暗闇の中でそっと目を閉じた。
やがて、通路の足音が完全に途絶えた。
見張りの交代の合間――一日のうちで、最も人の気配が薄くなる時間だった。リゼットは、まるでこの時間をずっと待っていたかのように、静かに動き出す。
膝を抱えていた腕を解き、リゼットはゆっくりと目を開けた。
リゼットは、ただ膨大なだけで持て余していたこの魔力が、今こそ役に立つ時なのだと考え、集中し始めた。
意識を研ぎ澄まし、王都全体へ薄く、気づかれない程度に探りの糸を伸ばしていく。
――どこかに、必ずいるはずだ。人の姿を借りて、この国の中枢に潜んでいる奴らが。
リゼットの静かな戦いは、こうして始まった。
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それでは、また別の作品でお会いできますように。




