第6話 隠された聖剣
看守の巡回が途切れるわずかな時間があった。
リゼットは独房の隅に体を寄せ、誰にも見られていないことを確かめてから、そっと左の鎖骨のあたりに手を触れた。
袖をずらすと、そこには見慣れない紋様が浮かんでいる。淡い光を帯びた、蔦のような模様。触れても痛みはない。
これが、聖剣を託された証だった。
剣そのものは、どこにも見当たらない。
実体を持たず、リゼットの意思ひとつで呼び出すことができる。だからこそ、隠すべきはこの紋様だけだった。誰かに見られれば、すべてが終わる。
指先で紋様をなぞりながら、リゼットは目を閉じた。
――リゼット、私を殺してください。
セラフィナの声が、耳の奥で蘇る。
あの夜、涙を流しながら懇願してきた顔。そして、消え入るような声で告げられた、最後の言葉。
全部を思い出そうとすると、頭の奥が鈍く痛んだ。まだ、すべてを受け止めるだけの気持ちの整理ができていないのだ。
袖を戻し、リゼットは再び壁にもたれかかり、体を少しでも休ませることに専念した。
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