第4話 異端審問
「静粛に。これより、異端審問を開廷する」
低く響く声とともに、大聖堂の大広間に沈黙が落ちた。
正面の高座には、白いローブをまとった三人の判事が並んでいる。その両脇には、教会の重鎮たちが険しい顔で座っていた。
リゼットは、両手を鎖で拘束されたまま、広間の中央に引き出される。周囲を埋め尽くす傍聴人の視線が、一斉に彼女へ突き刺さった。
「証人、前へ」
呼ばれて進み出たのは、あの夜リゼットを取り押さえた騎士だった。
「私が現場に到着した時、被告人はすでに聖女様を手にかけた後でした。抵抗する様子は一切なく、ただ黙って座っていました」
証言が読み上げられるあいだ、リゼットは目を伏せたまま、ぴくりとも動かなかった。
ふと、傍聴席の一角に視線が留まる。
そこには、幼い頃からの付き合いである青年――ユリアンの姿があった。彼はこちらをまっすぐ見つめていたが、リゼットはすぐに目を逸らした。今は、誰の顔も見たくない。
「被告人、何か申し開きはあるか」
判事の一人が問う。答えは、返ってこない。
「答えよ。黙秘は罪を重くするだけだぞ」
それでも、リゼットは口を開かなかった。
判事たちは顔を見合わせ、苛立たしげにため息をついた。聖職者の一人が、隣の同僚に小声で漏らす。
「これでは、裁きようがない」
沈黙だけが、広間に重く漂っていた。
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