第3話 崩れた信仰
「聖女殺し」――その呼び名は、あっという間に王都中に広まっていた。
独房の外では、日に日に人の声が増えていく。リゼットには直接聞こえないはずのそれが、看守たちの噂話を通じて、切れ切れに耳へ届いた。
「大聖堂前の広場、すごい人だかりらしいぞ」
「そりゃそうだろう。聖女様が亡くなったんだ、しかも殺されたんだからな」
「みんな怒ってる。あの女を今すぐ処刑しろ、ってな」
看守二人の会話に、リゼットは表情を変えなかったが、握った拳にはわずかに力がこもっていた。
聖女セラフィナは、この国にとって希望そのものだった。彼女がいるというだけで、人々は明日を信じられた。その希望を、自分が奪ったことになっている。
本当のことは、誰も知らない。
聖女教会の前には、白い花が山のように積まれているという。祈りを捧げる者、泣き崩れる者、そしてリゼットの名を呪う者。
「あんな化け物、生かしておく必要があるのか」
そんな声さえ聞こえてくる。
リゼットは、ただ静かに息を吐いた。
罵られることには慣れている。今さら、何を言われても構わない。
ただ一つだけ、胸の奥がちくりと痛んだ。セラフィナが愛したこの国の人々が、彼女の死を悼みながら、真実を何一つ知らずにいることに。
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それでは、また別の作品でお会いできますように。




