第2話 沈黙の独房
聖女殺害から、三日が経っていた。
リゼットが入れられているのは、王城の最下層にある特別牢だった。並みの魔法使いなら魔力封じの鎖一本で十分だが、彼女には違う。壁一面に幾重にも魔法陣が刻まれ、扉には見張りが二人、常に交代で立たされている。
「本当に、大丈夫なのか。あの人が本気を出したらこの魔法陣でも耐えられないだろ」
若い見張りが、隣の同僚に小声で尋ねる。
「馬鹿、聞こえるぞ。……だが、お前の気持ちも分かる」
牢の奥、冷たい床に座ったまま、リゼットは二人のやり取りを黙って聞いていた。反論する気も、安心させてやる気もない。
差し入れられる食事には、ほとんど手をつけず、尋問官が何度訪れても、リゼットは変わらず無言を貫いていた。
「なぜ黙っている。何か理由があるはずだ」
尋問官の声には苛立ちが滲んでいた。リゼットはただ、床の一点を見つめ続ける。
セラフィナの重みが、まだ腕に残っている気がした。あの温もりは、もう二度と戻らない。
しかし、悲しみに浸っている暇はない。今の自分にできることはなんなのか。ずっとリゼットは考えていた。
何を言われても動じず、何を聞かれても話さない。リゼットがその姿勢を崩さずにいると、尋問官も諦めて帰っていった。
小さな窓から差し込むわずかな光が、牢の床に細い線を描いている。リゼットはその光をただ見つめ、日が暮れるのを待ち続けていた。
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それでは、また別の作品でお会いできますように。




