第39話 取り戻した日常
季節が変わり、王都の空気にも柔らかな陽射しが増えてきた頃。
リゼットは、王都の外れにある小さな丘の上に立っていた。
目の前には、真新しい墓標がある。
セラフィナの墓だった。
「ありがとう。あなたのおかげで、私はまだこうして生きてるよ」
そっと花を供え、リゼットは静かに目を閉じた。
風が、優しく髪を揺らしていく。
「モーリス様、結局どうなったんだっけ?」
隣に立つユリアンに尋ねてみた。
「爵位も地位も剥奪されて、辺境の修道院送りになったって聞いた。一生かけて償えって」
「厳しいね」
「操られてたとはいえ、何年もかけてセラフィナ様を追い詰めてたわけだからね」
ユリアンの言葉に、リゼットは小さく頷いた。今はもう、怒りよりも、ただ淡々とした事実として受け止められる自分がいた。
「これから、どうする?」
ユリアンの問いに、リゼットは空を見上げた。
「しばらくは、普通に暮らしたい。魔法使いとして、平凡に」
「平凡、ね。お前には似合わないと思うけど」
「うるさい」
軽口を叩き合いながら、二人は丘を下り始める。
投獄され、疑われ、戦い、そしてようやく取り戻した、何気ない日常。
これから先も、何が起こるか分からない。
それでも、隣にユリアンがいる。
それだけで、リゼットは前を向いて歩いていけると思った。
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それでは、また別の作品でお会いできますように。




