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第29話 反転
「魔王様ではありませんよ、私は」
モーリスは笑いを収めぬまま、首を振った。
「魔王様は――」
言いかけた言葉が、不自然に途切れた。
モーリスの視線が、リゼットの背後へと動く。
嫌な予感に、リゼットは咄嗟に振り向こうとした。
その瞬間――念のためにと思って自分にかけておいた魔法が発動したのがわかった。
この魔法は至近距離で自分を攻撃しようとした者を捕らえるための拘束魔法だった。
振り返ったリゼットの目に映ったのは、魔法によって見えない力に縛られ、身動きを封じられたユリアンの姿だった。
「……ユリアン?」
名前を呼んでも、返事はなかった。
ただ、こちらを見据えるその目は、これまで一度も向けられたことのない、冷え切った色をしていた。
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