第27話 決戦の予感
「――モーリス様?」
驚きに固まるリゼットの前で、モーリスは穏やかな笑みを浮かべたまま、ゆっくりと一礼した。
「こんな時間に、お二人でどうされました?」
「……ダレンという司祭に会いに来ました。ここで待っているはずだったので」
「ダレン? ああ、彼なら急な体調不良で昨日から療養に入りましたよ。連絡が行き違ったようですね」
そもそも体調不良なのだとしたら、ユリアンに連絡がいくはず。リゼットはその答えの不自然さに違和感を覚えていた。
隣でユリアンが、小さく息を吐く。
「そうでしたか。それは残念です。ですが――良い機会です。モーリス様と少し、お話しさせていただいても?」
「ええ、構いませんとも。さぁ。どうぞ、こちらへおかけください。私もお伺いしたいことがあったのですよ」
モーリスはそう言うと、祭壇の前に置かれた長椅子を手で示した。
リゼットは何か得体のしれない不安をモーリスに感じたが、断れる空気でもなかった。
体の奥に留めている魔法を、意識の端でそっと確かめる。
――何かあれば、すぐに動ける。
「さて、こちらからお聞きする前に、まずモーリス様が私たちに聞きたいこととはなんでしょうか?」
「えぇ、聖女様の事件について、いくつか伺いたいことがあるのですよ」
モーリスの声は、あくまで穏やかだった。だが、その視線は、リゼットの首筋のあたりに固定されているように見えた。
錯覚かもしれない。だが、モーリスへの不信感がリゼットの中で大きく膨らんでいった。
「あの夜、何があったのか。話していただけませんか。我々は真実を知りたいのです」
「……何も、お話しすることはありません」
「そうですか。残念です」
そう言うと、モーリスは笑みを消した。
代わりに浮かんだのは、これまで一度も見たことのない、酷薄な表情だった。
「――もう、猿芝居は終わりにしましょうか」
低い声で告げると同時に、モーリスの手のひらに、紫色の光が渦を巻くように集まった。
反応する間もなく、放たれた光が、リゼットの肩をかすめた。
とっさに身をひねって避けたものの、衝撃で体勢が崩れる。着ていた服の襟元が、鋭い衝撃で裂けた。
露わになった鎖骨の下――そこに浮かぶ紋様を見て、モーリスの表情が変わった。
「……やはり」
愉悦を隠しきれない声だった。
「やはり、あなたが持っていましたか」
リゼットは咄嗟に襟元を押さえたが、もう遅かった。見られてしまった。
「それは、我々が回収させていただきます」
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それでは、また別の作品でお会いできますように。




