第22話 セラフィナの記憶
釈放されたときに渡された荷物を片付けていると、包みの奥から、色褪せたリボンが出てきた。
手に取った瞬間、記憶が一気に巻き戻った。
訓練場でまた一人、腰を抜かして逃げていく生徒がいた。誰もが、リゼットの魔力の圧を目にすると、そそくさと距離を取る。
慣れたはずのその光景に、あの日はなぜか、無性に苛立った。
「気にすることないよ」
隣に座ってきたセラフィナが、包みを差し出してきた。
「はい、これ」
「……何、急に」
「リゼットの魔力、綺麗な色でしょ。だから、同じ色のリボンを探したの。落ち込んでる時ほど、可愛いものを身につけるといいんだって、本で読んだから」
くだらない理屈だと思った。だが、差し出されたリボンを見ていると、自然と肩の力が抜けた。
「変なの」
「変じゃないもん。似合うと思うよ」
その日から、リゼットは訓練の日、必ずそのリボンを身につけるようになった。
「わたしね、いつか聖女の役目が終わったら、リゼットと一緒に旅がしたいな」
ある日、セラフィナがふとそんなことを言い出した。
「大袈裟。役目って終わらせてくれるの?」
「終わらせるよ。約束する」
軽い調子で交わした約束だった。あの頃は、それが果たされないまま終わるなんて、想像もしていなかった。
リゼットは、色褪せたリボンをそっと握りしめた。
――ごめんね、セラフィナ。
小さく呟いた声は、誰にも届かない。
あなたが果たせなかった役目を自分が果たす。そのために立ち止まるわけにはいかなかった。
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それでは、また別の作品でお会いできますように。




