第19話 魔王の焦り
モーリスは、つい先刻まで、ある人物と会っていた。
穏やかな声で交わされた言葉が、今もまだ耳の奥に残っている。
「枢機卿会議も、そろそろ本腰を入れるべきでは? このままでは、王家にまで話が広がってしまいますよ」
物腰は柔らかかった。だが、その言葉の意味を、モーリスは正確に理解している。これは提案ではない。命令だ。
――剣は、あの女が持っているはずだった。
聖剣の存在自体知る者が限られている中で、その噂が広く街中に広まったことが、その前提を揺るがしていた。
もしリゼットとは別の者が聖剣を持っているのならば、すぐに対処しなければならない。ただし、この噂を誰かが、意図的に流したものであるならば、それを突き止める必要があった。
モーリスは机の呼び鈴を鳴らし、書記官を呼んだ。
「枢機卿会議を、明日にでも招集しろ。噂の出所を洗い直す。教会関係者を総動員する準備をしておけ」
「明日ですか。急な話ですね」
「これは、急を要する案件なのだ」
書記官が下がると、モーリスは椅子に深く沈み込んだ。
今のモーリスにできるのは、命じられたことを、命じられた通りにこなすことだけだった。
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それでは、また別の作品でお会いできますように。




