第18話 幼馴染の記憶
椅子に腰を下ろすなり、ユリアンは懐かしそうに目を細めた。
「そういえば、明日は収穫祭だな。子供の頃、よく二人で抜け出しては叱られてたっけ」
「……ああ、屋台のリンゴ飴を盗み食いして」
「盗んだのはお前だろ。俺は見張り役だった」
「逆でしょ。あなたが盗んで、私が怒られた」
軽い調子で言い返すと、ユリアンは声を上げて笑った。
「そうだったか? まあ、どっちでもいいさ。あの頃は毎日楽しかったな」
その笑い方は、記憶の中のユリアンと変わらないはずだった。だが、なんだかいつものユリアンではない気がした。調子でも悪いのかと思う程度の、幼馴染だからこそようやく気づける、ごく小さな違和感だった。
気のせいだろう。リゼットはそう思い直し、話を続けた。
「あの丘の木、まだあるのかな」
「さあ、どうだろうな。今度、様子を見に行ってみるか」
「うん」
短いやり取りの中に、昔と変わらない彼の姿に少し安心をした。だからこそ、リゼットは、さっきの小さな引っかかりを、あえて考えないことにした。
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