第17話 揺れる教会
「妙な噂が流れているんだ」
面会に来るなり、ユリアンはそう切り出した。
「噂?」
「魔王を倒せる剣がどこかにある、という話だ。最初は誰も本気にしていなかったんだが……教会の反応が、明らかにおかしい」
リゼットは表情を変えないまま、先を促した。
「おかしいって、どんな風に」
「枢機卿会議が急遽開かれたらしい。普段は月に一度あるかないかなのに、この数日で三度もだ。それに、大聖堂の警備も急に増えた」
ユリアンは首を捻った。
「ただの噂一つに、そこまで反応するか? まるで、本当にそんな武器が存在するのを知っているみたいだ」
ユリアンは少し身を乗り出すと、悪戯っぽく笑った。
「なあ、リゼットはどう思う? 本当にそんな剣、あると思うか?」
「あればいいなって思うよ」
リゼットはそう答えた。
「もしあるとしたら、どこに隠すと思う? お前ならどこに隠す?」
「……さあ、見当もつかない」
リゼットは肩をすくめてみせた。何気ない質問のはずなのに、うまく声が出なかった。
「ふうん。案外、灯台下暗し、なんてこともあるかもな」
ユリアンはそう言って笑うと、話を続けた。
「貴族の間でも話題になっているらしい。誰が流したのか、探っている者もいるとか」
「……気をつけてね、ユリアン」
「ああ、分かってる」
そう答えたユリアンの声は、いつもと変わらず落ち着いていた。だが、リゼットは彼が去ったあとも、その言葉を何度も思い返していた。
自分が流した噂に、自分で気をつけろと忠告する――そのねじれた状況に、小さく笑いそうになる。
だが、これは始まりに過ぎない。教会が本当に隠しているものへ、あと少しで手が届く。
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それでは、また別の作品でお会いできますように。




